牛乳とチーズそして理解者
投稿がかなり遅れ気味ですいません。よければご覧ください。
実技試験が終了し、生徒達が帰路についてる頃、森の中では、試験官からまたしても合格点に届かないことに嫌味を言われ、能無しは所詮能無しかという言葉がアキトの頭に響いていた(大の大人の試験官がそういった言動をするのもどうかと思うが)。それを振り切るように剣術の修練をしていた。
「はああああああっ!」
虚空に向かって、素振りをし、試験で結果を残せなかった自身の不甲斐なさに顔を歪めながら、必死に現在の状況を覆したいと思いながら。
「クソックソッ」
ブンッ!ブンッ!
自身への怒りを剣に込めて素振りを続けるも、虚しい、剣速の音のみが周辺にに響いていた。
そうこうしている内に日も暮れ初め、アキトは自身の腕時計を見て、ギョッとする。短針は6の手前のあたりを指していた。
「ヤバイ!配達の時間だ!急いで行かねぇと!」
アキトは急いで、牛乳配達のアルバイトに向かうのであった。
バタンッ!
勢いよく、牛乳屋の入り口の扉が開いた。
「ごめん!マキアスさん!遅刻して・・・・」
「おっ?珍しいなお前が遅刻するなんて」
謝るアキトに珍しそうにそう告げるガタイの良い男性。彼の名はマキアス・マルス アルバーン王国で牛乳屋をやっている中年男性だ(ちなみに独身)。店は牛乳やチーズやその他乳製品などを主に販売しており、店の隣に小さな牧場があり、そこで牛を飼育し、そこから取れる牛乳やその牛乳で作ったチーズを販売しており、特にこのチーズが中々の味なので多くはないが常連客も存在する。性格は豪快で小さいことを気にしない、さっぱりとした兄貴肌の人物だ。また数少ないアキトの理解者でもあり、今よりさらに幼い頃のアキトの世話を焼いてくれた人物でもある。
「その顔を見ると試験はダメだったか・・・」
「・・・・・うん」
マキアスは店に入ってきたアキトの表情から試験の結果は察していたらしい。
「なんでだろうなぁ お前は他人より何倍も努力してるってのに」
「・・・・・」
アキトは必死に努力をしている、剣術の修練も一日も怠ったことなどなければ、魔法の適正に関しても図書館などで使えない原因や使えるようになる方法を探して日々、努力しているアキトを知っているマキアスは不思議で仕方なかった。
しかし、同時にアキトの能力の低さも知っているため中途半端な慰めもかけらない。
(戦闘以外のことは要領も悪くねえんだがな・・・)
「まあ!落ち込んでても仕方ねえ!配達行ってくるよ どこに届ければいい?」
「うん?ああ、へクターさんの所にチーズ3つと雑貨屋に牛乳8瓶持っていってくれ 商品はそこに置いといたから」
「おう!じゃあ行ってくる!」
複雑そうな表情するマキアスを見て、心配を掛けてはいけないと明るく振舞い、注文を聞き、用意された商品を持って配達に行ったアキトを心配そうに見つめるマキアス やはりその表情は複雑だった。
(好きで能無しってわけでもないのにあんなにバカにされ、見下されて、家に帰っても迎えてくれる家族もいない・・・ そんな境遇でもアイツは折れねえな・・・)
「たいしたやつだよお前は」
そう言ってアキトの出て行った扉をマキアスは見つめていた。
セフィについて書こうと思ってたのですが、少し早いかと思いアキトの日常を描きました。