096《エキシビションマッチの概要》
番外編45
全国大会出場を逃した吉備師恩学園と伊立第一のエキシビションマッチ。
概要を発表するための準備が慌ただしく進められている。
麻生プロデューサーが口火を切った。
「期日は一回戦前日の27日。会場は西が丘を押さえました。
キックオフは14:30を予定。
地上波で流す大会展望特番に試合時間を合わせました。
エキシビションマッチ自体もCSで放送枠が取れそうです」
「VTRは第一部が、吉備師恩学園で大津マネージャーのチーム作り。
第二部は、伊立第一で相賀選手の二刀流ストーリー。
第三部で、両チームの交流と県大会の決勝戦の顛末を軸に、
高鈴父娘、『双子』の成沢遥香、BKBを絡めて作成しています」
「技術スタッフのための予行演習と言うお題目もありますので、
実況は新人アナウンサーを抜擢します。
解説は摂津ドーナッツの竹内選手が二つ返事で引き受けてくれました」
「ハーフタイムにはBKB国分寺が歌う大会主題歌『ハイファイブ』を。
非公式に打診している『友情応援』はどこの高校も快諾です」
「前週には各都道府県予選の模様を伝えますが、
それから毎日、スポーツニュースを通して、
『優勝しても全国大会に出られない2チーム』の刷り込みを行います」
「女子選手枠で出場するのは、吉備師恩が30分ずつ出場の予定で、
マネージャーの三年生大津、二年生松平、一年生高鈴の三人です」
「伊立第一は結局、こちらの要望も全て受け入れ、
女子選手枠は15分ずつの6人を登録予定です。
成沢遥香の引っ張り出しには成功しました、
マネージャーは三年生が慰労のために、
それにブラジル出身の女子生徒が出場します。
助っ人として、伊立第二と伊立女子高から三年生の元キャプテンが、
BKBからもシークレット扱いで一名参加ということになりそうです」
「相賀には専用カメラを用意して、
入団Xデー用のプレー映像をストックします。
並行して、関係者のインタビューもさり気なく集めておきます」
「全国大会出場校の多くが直前に、
バラキ県の神島・鹿栖近辺で合宿を行いますので、
吉備師恩学園と伊立第一も呼びます。
勿論そこにも取材班を派遣して映像等を収めます」
「シュバルツバルト国際ユース大会に参加したスタッフや、
そこで相賀と一緒にプレーしたメンバーのいる、
いくつかの強豪校とのマッチメイクを進めています」
「エキシビションマッチ前夜の26日は、
吉備師恩学園と伊立第一は同じ宿舎に泊まらせます。
近くの体育館を押さえましたので、
バレーボールのオリジナル映像はその時に頂きます」
「体育館には西中郷と高萩も呼ぶつもりです。
放送には使えませんが、素材としてはアリでしょう」
「相賀は準々決勝3日、準決勝5日、決勝7日の、
高校女子選手権大会への参加も打診されているようです。
日程は被らないとはいえ、かうべ市との往復はキツイでしょう」
「我々としては一回戦の28日、二回戦の30日、三回戦の2日、
準々決勝4日、準決勝6日、決勝8日は優先権を主張しております」
「元旦の天皇杯にも出場が予想されますが、
割り当てはサッカー協会審判部の意向次第です」
民間放送連盟の責任者、宗高が締めた。
「エキシビションマッチを大会審判団の研修用に提供した。
サッカー協会の審判部では、天皇杯と男子女子の決勝戦には、
相賀を起用する方向で移動手段の検討に入ったようだ。
トータルで13日間だが、副審ならいける、という読みらしい。
浜松辺りに宿泊させて、毎日新幹線を使うという案もあるそうだ。
高校女子選手権にも出るなら、奴らにも宣伝の片棒を担がせよう……」
江本ディレクターは口にこそ出さないが懸念を抱いていた。
『一応は受験生である事を忘れてやいませんか』
規模を拡大しながら動き出したエキシビションマッチは、
もう誰も止める事はできない。




