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087《それはさておき》

番外編40

 8月7日(月)、杜の都総文祭から戻った気象部一同。

 部長の成沢遥香、副部長の森山博美。

 二年生の大久保、会瀬、金沢、川尻、国分。

 一年生の城丘、千石、滑川、水木、宮田。

 関校長らと、マイクロバスで各方面にあいさつ回り。


 伊立市役所を皮切りに、氷戸市のバラキ県庁を表敬訪問。

 ついでにバラキ新聞に、ラジオのバラキ放送。

 日本公共放送(NKH)氷戸放送局へ結果報告。

 内閣総理大臣賞受賞を触れ回った。

 夕方からはNPO法人サイエンス倶楽部が主催して、

 ホテル天宙閣で祝賀会が開催された。

 誰が呼んだか、市長や市議会議員、

 県知事に県議会議員、国会議員まで顔を出した。


 遥香は独りやつれ顔。

 副部長の森山が万全のサポート。

 下級生も甲斐甲斐しく振る舞う。

「遥香、面倒なことは全部私が引き受けるわ」

「成沢先輩、どんな些細なことでも、私たちに任せて下さい」

 だって私たちは、七夕伝説の立会人。

 奇跡を目の当たりにした、運命の恋物語の伝道者。

『聖ハルカ様』の信奉者よ。

 先輩は『あの方』のことだけを考えていて下さい。


 夕方のNKHバラキ県域放送で報じられたために、

 気象部員のスマホには呼び出し音が引っ切り無し。

 遥香はとっくに電源オフ。

 森山はこまめに対応。

「……うん、そうなのよ、ありがとう。

 それはさておき、実はね……」

 その都度、遥香の席から離れる。


 二年生の大久保。

「……総理大臣賞なんて信じられない。

 それはさておき……部長の成沢先輩が……」

 二年生の会瀬。

「……苦労した甲斐があったわ。

 それはさておき……例の噂の彼氏と……」

 二年生の金沢。

「……みんなで頑張ったから。

 それはさておき……そう、バレーボール部の葡萄先輩!……」

 二年生の川尻。

「……抱き合って喜んだんだよ。

 それはさておき……離れ離れの二人が運命の再会!……」

 二年生の国分。

「……土曜日に帰って来たんだ。

 それはさておき……七夕の奇跡にみんな号泣……」


 一年生の城丘。

「……私なんて何もしていないわよ。

 それはさておき……そう、高速バスを追いかけたという……」

 一年生の千石。

「……全部先輩たちのおかげ。

 それはさておき……伝説の彼氏は超~イケてた!……」

 一年生の滑川。

「……今日まであっという間だったわ。

 それはさておき……私たちの目の前でばったり出会ったの!……」

 一年生の水木。

「……しばらくはゆっくり休みたい。

 それはさておき……何と彼氏の胸に飛び込んだのよ!……」

 一年生の宮田。

「……ご褒美に美味しい物食べさせてもらっちゃった。

 それはさておき……お、思い出しただけで、うえ~ん、うえ~ん……」


 数日後、小木津亜弥が多賀冬海に電話。

「……という事だから、

 油縄子島遠征のうちにネームを考えておいてね」

「でも、本当にそうだったのかしら?

 遥香と葡萄先輩って……」

「この際、真実なんてどうだっていいの。

 肝心なのは、みんながその物語を求めているという事実よ」

「何か遥香に悪いような気が……」

「いいって、実名は出さないんだから、

 プロットとして頂いちゃいましょう。」

「……分かったわ。

 それはさておき、亜弥は一緒に行かないの?」

「う~ん、ちょっとヤボ用があってね、

 一日だけ遅れて行くから……」


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