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085《五人娘のアルバイト》

番外編39

 とある土曜日。

 シビックセンター1階のカフェ「パンドゥトロア」。

 長島依子がエプロン姿のホール係。

 西津悠・沼尾柚亜・根岸桜芽・野村寿里は常連客。

 毎日、順番で放課後のアルバイト。

 学校が休みの時は早い時間から勤務。


「お金が貯まらない」

「アルバイトしているのにおかしいね」

「5日に1回なら月6回。だからなのかな」

「きっと残りの4日で、お給料使っちゃうからだよ」

『なるほど』

 リオの解釈に皆が同意する。


「アッ、ワンちゃんだ!」

 窓の外を主人に連れられた飼い犬が散歩中。

 動物好きの長島が目聡く見つける。

 急にそわそわ。

「駄目だよ、依子、今はバイト中」

「だって、可愛いんだもの……」

 仕事中でなければ間違いなくワンちゃんに挨拶に行く。

 十中八九、ワンちゃんを撫でまわす事になる。

 動物好きが伝わるのか、

 どんなワンちゃんでも手懐ける特技を持っている。


「図書館に本返してくるね」

 沼尾が呼んでいた本を閉じると立ち上がった。

「柚亜は本の虫だね」

「ありがとう」

 からかわれても褒め言葉として受け取る。

 自他共に認める本好きだった。


 続いて西津が慌てて席を立つ。

「14時半からの上演始まっちゃう」

「今日も同じプログラムなのに行くの?」

 不思議そうなリオ。

「天球劇場はね、毎日生解説があるのよ。

 プログラムは同じでも、中身は違うの、

 それに解説員にも個性があって……」

「悠、私も一緒に見に行くよ」

 根岸も立ち上がった。

「リオはどうする?」

「桜芽も年間パスポート持っているんだよね。

 私、持ってないから行かない。

 それに柚亜がすぐに戻ってくるから」

「それじゃあ、また後で」

「行~って、らっしゃ~い」


 しばらくリオが一人になったが、

 手空きの長島はエプロンを外して休憩時間。

「ねえ、リオ~、ワンちゃんどこかに行っちゃったから、

 今週習った所教えてよ」

 数学の教科書を持ちだした。

「うん、良いよ~」

 しばらくは数学の復習タイム。


 何やらエントランスが騒々しくなった。

 総合案内で、見るからに陽気なアミーゴが長弁舌。

 リオが小首を傾げながら様子を窺う。

「リオ~、どこ行くの!」

 依子に呼ばれるも、トコトコトコと歩み寄る。


「アミーゴ、ウークェコンテッセオ?」

 アミーゴは大袈裟に驚いて、リオに向かってまくしたてる。

 リオがゆっくりとしたポルトガル語で対応。

 アミーゴも何かを理解したのか、

 途中からゆっくりとしたスペイン語で語りかける。

「の、野村さん、分かるの?」

 総合案内のお姉さんたちとは顔見知りだ。

「スペイン語はポルトガル語と似ているので分かります」

「お客様は何とおっしゃっているの?」

「え~と、メキシコから仕事で来ました。

 日本は近代的で清潔で美しい。

 奥さんと、三人のお子さんがいます。

 サムライやゲイシャはどこにいるのか?

 日本人はとても礼儀正しい。

 食べ物もとてもおいしいけれど物価は高い。

 え~と、え~と……」

 新たに借りた本を抱えながら、沼尾が笑顔で見守っている。


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