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084《若気の至り》

番外編38

「シングルデビューするんだ」

「私たちの番組で告知してあげようか」

 中華料理店『大来軒』二階の座敷席。

 西中郷素衣と、高萩直は特盛『焼肉どんぶり』を完食。

「たかりん、まだ言っちゃダメよ」

「あ、そうでした。メンゴ、メンゴ!」

 国分寺美香がたしなめるが、

 会話の流れで秘密をばらした高崎鈴は反省する様子も無い。

「皆さん、まだ内緒でお願いします。

 トップクラスのシークレットだとご理解下さい」

 国分寺のマネージャーが、有無を言わさぬ口調で宣言した。

「分かったわ。冬海もお願いね」

「ラジャー」

 小木津亜弥も多賀冬海も特盛『焼肉どんぶり』に苦戦中。

 味は文句なしだが、いかんせん量が多過ぎる。

 二人のアイドルはもうすぐ完食。

 トップアイドルの胃袋はアスリート級だ。


 そろそろお代わりの声が掛かりそう。と、

 大来軒の女将さんが座敷席に顔を出す。

「女将さん、この娘シングルデビューするらしいよ」

「そろそろ卒業も考えているのかもね」

「ちょっと、待って下さいよ!」

 マネージャーの顔色が変わる。

「ああ、メンゴ、メンゴ!」

 西中郷が高崎の口調をまねた。

「女将さん、今のは聞かなかった事にね……」

 高萩がフォローする。


「ところでさ、二人とも私たちの番組にゲスト出演しない?」

 高萩がBKBを誘った。

 第38回伊立市パンポン大会当日も前年と同じく、

 夜のスポーツニュースは氷戸放送局から送る手筈。

「ちょろっと出るだけで良いから、

 パンポンのトップ4が揃うと壮観よ」

「どうせ帰る方向は一緒でしょう……あんた達はどうする?」

 西中郷は亜弥と冬海にも振る。

「私たちは学校がありますから帰ります」

「オンエアは家族と見ます」

「くれぐれもアノ件はご内密に……」

 マネージャーが念を押す。

「国分寺の出演はOKです。

 高崎さんの事務所にもOKをもらいました。

 マネージャーが氷戸放送局に迎えに来てくれます。

 それから、例の件は本当にトップシークレットですので、

 万が一の時は対抗措置を取らせていただきます」


「私、知っていますよ」

 国分寺がマネージャーから何かを受け取った。

「……お二人のデビューレコード『青春ダブルアタック』。

 結構売れたらしいじゃないですか」

『止めて!』

 二人の顔色が変わる、若気の至り。これは本当に駄目なやつだ。

「これを聞いて歌手を目指しました。って言っちゃおうかしら」

 トップアイドルの影響力は計り知れない、脅しの効果は絶大だ。

「あら懐かしい。

 レコードプレーヤーなら押し入れにあったはず……」

 大来軒の女将さんは探し始める。

「ドーナツ盤って言うんですよね」

「レコードの実物は初めて見ました」

 小木津亜弥と多賀冬海も興味津津。

「針は大丈夫かしら」

 女将さんがプレーヤーを抱え出した。

「ダメ! 貸しなさい!」

 西中郷が国分寺に迫る。

 美香は亜弥にパス。

 高萩が小木津に向かう。

 亜弥は冬海にパス。

 西中郷が多賀を襲う。

「!」

 騒ぎに乗り遅れた高崎は何か閃いた。

「冬海ちゃん、こっち」

 呼ばれてレコードを鈴に渡す。

 ニヤリ、ここは二人に恩を売っておこう。

「……お姉さま方、奪いました!」

「裏切ったわね、たかりん!」

 国分寺ゴブリン復活。もう容赦しないわ!

 ギャーギャー、ドタバタ。

 レコードをめぐる奇妙な3on3が始まった。


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