077《のんびりお花見の部》
番外編31
「ねえ、ねえ、日曜日のさくらロードレースだけれど……」
長島依子が尋ねる。
「みんなジャージで走るの?」
「そのつもりだけれど、どうして?」
西津悠が小首を掲げる。
「のんびりお花見の部は、自由な格好で歩いているよ」
沼尾柚亜は前年の写真をダウンロードして示す。
「それじゃあ、久しぶりに……」
根岸桜芽が楽しそうに提案する。
「コスプレイエスタオッチモ!」
相変わらずのリオこと野村寿里。
「じゃあ、ナガトコスで決まり?」
長島依子が小木津亜弥と多賀冬海に問いかける。
「私はあの制服を持っていないわ」
「亜弥はそうだよね。冬海姉さんはどうするの?」
多賀冬海は困惑気味に答える。
「あの制服はもう着られないかも……」
入学当初から比べれば健康的に痩せた。
「私はどちらかというとアヤナミ派なのだけれど」
西津悠の独り言に沼尾柚亜が反応。
「私は、エンマアイちゃん派」
根岸桜芽が不思議そう。
「無口キャラばかりじゃない。
……って言うか、全員一緒じゃなくても良くない?」
「テーマがあった方がまとまるよ」
「タンキメニーナス」
「リオ、何って?」
「タンクガールズ」
「ああ、パンツァーメートヒェン」
「それいいかも!」
小木津亜弥が諸手を挙げて賛成した。
「じゃあ、誰にしようか?」
「大勢いるからね」
「チームで揃える?」
「7人チームってあったかな?」
「3人、4人で分ければ」
「学園艦それぞれ揃えようよ!」
「むしろ隊長限定とか」
「制服とジャケットどちらにするの?」
「ちょっと待って、自作するんだよね」
「買ったら高いよ!」
「ねえ、ねえ、当日まで秘密にして、
スタート前に発表ってどう?」
「誰かと被ったらどうしよう?」
「それはそれで良いじゃん」
「それじゃあ、みんな勝負よ!」
「一番人気はコスプレクイ~~~ン!」
7人のコスチュームは多くの耳目を集めた。
それぞれの人気は甲乙つけがたい。
気軽に写真撮影に応じながら歩いたので、
桜のトンネルを抜けるのに30分以上かかった。
沼尾柚亜がスマホ片手に大会のつぶやきを報告する。
「大変だ、今回からは完走後のあんパン無しだって!」
「嘘~~~っ!」
「どうしよう!」
「楽しみにしていたのに!」
「バナナは? バナナはどうなの?」
「さっき、配布所はあったような……」
「品切れなんてしないよね……」
「大丈夫だと思うけど……」
「けど、何?」
「なんか『バナナ欲しかった』ってつぶやきが……」
『……』
不確かな情報により、7人は疑心暗鬼に陥る。
徐々に早歩きになり、遂には競争が始まった。
「バナナなくなっちゃう!」
「待ってよ!」
「早く、早く!」
「一緒に行こうよ!」
「早い者勝ちだよ!」
「写真はゴール後にね~!」
「ケルコメールバナ~ナス!」




