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076《シュバルツバルト国際ユース大会》

本編46

 3月19日(日)の、魚洗春祭り魚楽フェスタには、

 小木津亜弥と多賀冬海が連れだって出掛けた。

 前年秋の魚洗アンコウ祭りは、

 劇場版『パンツァーメートヒェン』大ヒットのお陰か、

 約13万人が訪れ、氷戸駅が大混乱したらしい。

 海東駅前で待ち合わせをして、

 冬海の父に車で送ってもらった。

 早朝から会場周辺は大渋滞。

 物販の列に並ぶのも大変だった。

 それでも二人はフェスタを満喫した。

「次回はお父さんの漁船で送迎してもらおうかしら」


 当日は冬海の家にお泊り。

 そこに吉報が届いた。

 WEBサイトの新人賞に投稿した4コマ漫画、

『ハイテンションFIVE』が、

 努力賞に引っかかり、二人で抱き合って喜ぶ。

 貰えたのは賞状一枚だったが、

 作品の1本が選考結果のページに、

 期間限定で掲載された。

 シン・ロッキーゲームの件だった。



 春季休業が始まる3月23日から、

 26日まで伊立カップ高校サッカー大会開催。

 昨年夏の伊立サッカーフェスティバルに続き、

 吉備師恩学園高等部も正式参加。

 今回も滞在は十日間。

 バラキ師恩学園を拠点に強化遠征。

 高等部に進学した高鈴めぐみがやってきた。

「ポーン、サッ! サッ!」

「ブ~ン、トン、トン、サッ!」

 めぐみは自主練習を続けてきた。

 まだまだ成功率は半分以下、

 ぎこちない動きだが、はまると効果絶大。


 3年生の大津優季、2年生の松平知と一緒に、

 なでしこリーグ・摂津ドーナッツの練習にも参加している。

 吉備師恩学園高等部チームのマネージャー業優先。

 と言う約束で、摂津ドーナッツ・ユースチームで選手登録。

 大津は即戦力、松平もレギュラー争いできるレベルだった。

 めぐみはまだまだ体幹が弱い。

「じっくり育てましょう」

 摂津ドーナッツのスタッフは、

 焦らず数年先を見据えている。



 弟の結貴も今年、伊立一高に入学。

 サッカー部に入部した。

 妹の媛貴は中学生になった。

 賀多中の制服は、遥香のお下がりを自ら望んだ。

 女子バレーボール部に入る予定。


 4月9日、日曜日は第17回伊立さくらロードレース。

 成沢遥香と相賀晴貴は10キロコースに出場。

 結貴は5キロコースへ強制エントリー。

 媛貴は中学生の部2.2キロにわくわく参加。

 亜弥と冬海に五人娘も、

「のんびりお花見の部」にコスプレで参加。

 1.8キロの前半、桜吹雪の舞う中を、

 のんびり、きゃぴきゃぴと歩くが、

 後半、桜のトンネルが途切れると、

 いつの間にか競走になっていた。



 4月13日から10日間、ドイツで行われる、

 シュバルツバルト国際ユース大会に参加するのは、

 2月に行われたネクストジェネレーションマッチの、

 日本高校サッカー選抜チームの21名。

 ユース限定一級審判員の強化指定を受けた晴貴は、

 帯同審判員兼トレーニングパートナーとしてチームに加わった。


 メイン会場となるデュッセルドルフに着くと、

 歓迎のレセプションが行われる。

 そこにはJ2伊立ゾンネンプリンツの前監督、

 アイゼン・シュルツェンの姿もあった。

 監督の座は息子に譲り、チームは快進撃を続けている。

 自身はFIFA公認の代理人も引退し、悠々自適。

 現役時代の精悍さは影を潜め、

 にこやかに大会顧問としてホスト役を務める。


 日本チームは予選リーグ3戦全敗。

 晴貴は、アイゼン・シュルツェンの推薦もあり、

 特例で他の組で主審を務めた。

「ユース限定二級審判員」で、

「ユース限定一級審判員の強化指定」が、

 そのまま現地で受け入れられた。


『ヤーパンユンゲシーツリヒター』は、

 片言だが、英語・ドイツ語・ポルトガル語を話す。

 発音は怪しいものの、

 フランス語、イタリア語、ロシア語も解するらしい。

 出場選手にも負けない運動量、

 公正・公平な笛に高評価を得る。


 日本チームは順位トーナメントに進む。

 言ってみれば13~16位決定戦。

 しかし攻撃陣に怪我人が続出していた。

 アイゼン・シュルツェンの進言もあり、

 帰国したメンバーの代わりに急遽、

 晴貴が追加で選手登録される。

 日本から追加招集はしない。

 トレーニングパートナーとしての働きは問題なし。

 団長も監督もコーチ陣もチームメートも否はなかった。


 試合前半はじっくり相手チームを観察。

 後半から背番号22をつけての出場で、いきなり結果を出す。

 FWで2得点2アシスト、日本チームは初勝利。

 次の試合では監督が晴貴の意向を容れて、

 MFで先発から起用した。

 対戦相手の試合は予選リーグで見ていた。

 特徴も完全に掴んでいる。

 晴貴は中盤を完全に支配して勝利に貢献。

 プレースタイルは完全に生まれ変わっている。

『日本の若い審判員』の評価は、

 たった二試合で激変した。

 アイゼン・シュルツェンはしたり顔。

 数人の連れが、何やら熱心にメモを取っていた。



 帰国した晴貴を待ち受けていたのは、

 ユース限定一級審判員への強化プログラム。

 8月の高校総体までに、まず二級審判員への限定解除。

 社会人を含めたすべてのカテゴリーで通用する、

 二級審判員の資格を取得する事が求められた。

 管轄するのは関東サッカー協会。

 7月の甲斐サッカーフェスティバルで昇格試験を受ける。

 それまでは、関東大会の県予選・本大会、

 高校総体の県予選、

 高円宮杯U18サッカーリーグ2017バラキFAリーグ1部。

 バラキ県社会人リーグ1部、2部と、

 休みなく審判割当を受ける。


 こうしてまた、晴貴は伊立一高サッカー部所属のままで、

 関東大会・高校総体への選手としての出場はなくなった。

 伊立コンクレントでの練習に身を入れる事で、

 トレーニングとしては充分な負荷。

 サッカーボールに触れる事も忘れない。

「ポーン、サッ! サッ!」

「ブ~ン、トン、トン、サッ!」

 めぐみの自主練習を、逆に晴貴も取り入れる。

 亜弥との交際は足踏み状態に。



 6月、第38回伊立市パンポン大会。

 伊立一高を卒業した元パンポン部長の高尾直妃は、

 悦嘉大学パンポン部の一員として参加。

 BKBの国分寺美香も、総選挙4連覇を達成し、

 忙しい中、亜弥の所へ前泊して参加。

 今回は親友同士でダブルスを組む。

 夜遅くまで、気が置けないガールズトークで盛り上がる。

 亜弥の彼氏は何かと話題の二刀流。


「どうなの、どうなの?

 ちゅー、したの!」

「でも最近忙しそうで……。

 学校でしか会えないし……。

 下級生にも人気みたい……。

 二高や女子高の娘が見に来るし……」

「はい、はい、どうもご馳走様」

「ちゃんと聞いてよ、もう」

「双子のお姉さんがいるんでしょう?」

「その事なんだけどさ……」


 冬海が始発で潟平駅まで来た。

 スケッチブック片手に、亜弥たちと合流。

 パンポン大会の会場になる伊立さくらアリーナまで、

 観光バスに同乗してBKBを取材。

 会場では高尾直妃先輩に密着。

 次の漫画の題材は、熱血パンポン物語。

 小ネタは『ハイテンションFIVE』に流用。

 実はWEBサイトからストックを求められている。

 掲載の約束はできませんが、

 このテイストで書き続けて下さい、と。


 五人娘は相変わらず高校生活を満喫。

 きゃぴきゃぴ、どたばた、笑いが絶えない。


 気象部には今年も新入生が5人。

 副部長の森山博美が、多忙な部長・遥香を立てる。

 伊立シェーンハイトでは練習生から、晴れて選手登録。

 正真正銘の高校生Vリーガーに。

 公式戦試合出場はまだまだだが、

 妙な人気で、人寄せパンダ状態。

 放課後は晴貴を強引にいたちなか市まで連行し、

 伊立コンクレントに引き渡す。

 VFC大江戸からの二刀流オファーは、正式に断ったらしい。

 コンクレントでも選手登録の方向で、ほぼ決定。


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