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074《ネクストジェネレーションマッチ》

本編44

 修学旅行、帰りの機中では、

 旅行中の学年トーナメントを勝ち抜いた、

 ロッキークイーンの成沢遥香と、

 ロッキーキングの相賀晴貴が死闘を繰り広げた、

 使うのはお土産用の、

 30センチもあるジャンボ・ロッキー。

 マンゴー味の遥香が、

 ゴーヤー味の晴貴を僅差で破って、

 初代ロッキー皇帝に即位。

 またつまらぬ勲章を、取ってしまった。


 一体何しに行ったのか、

 晴貴が覚えているのは、

 やたらと距離が近い小木津亜弥。

 遥香に教えられた「本来の」ロッキーゲームで、

 勝負の付け方も知らず対戦した、

 多賀冬海とのアクシデントKISS。

 輪を掛けてべたべたと距離が近くなる亜弥。

 それから帰りの空港で出会った、

 純朴で真面目そうな琉球県の青年。

 このスニーカーは伊師林檎とお揃いだから、

 売ってと言われても断るしかなかった。

 名刺をもらったが、

 小さな離島、油縄子島、唯一の雑貨屋さんで、

 新聞や郵便・宅配便の配達も請け負っているそうだ。

 名前は知念萬郷。

 マンゴーって、変わった名前もあったものだ。


 1月28日、29日の土、日は、

 一般生徒にとっては休養日だったが、

 晴貴はサッカー女子の県高校新人戦一回戦で、

 ユース限定二級審判員の最終実技研修に突入。

 遥香は気象部の仲間たちと、

 気象予報士の資格試験。

 まったく高校生活は、気を緩めている暇もない。



 晴貴の元には審判部を経由して、

 日本サッカー協会の二種委員会から、

 合宿参加の要請が来ていた。

「高校選抜選考合宿での審判員をお願いします」


 2月初旬の週末に、

 第95回全国高等学校サッカー選手権大会の、

 優秀選手34名が集められ、合宿が行われる。

 そこから選ばれる21名が、

 日本高校サッカー選抜メンバーとなる。


 Jリーグシーズン開幕の前週に、

 Jリーグチャンピオンと天皇杯優勝クラブが対戦する。

 スーパーカップの前座試合として、

 ネクストジェネレーションマッチ、

 U18Jリーグ選抜対日本高校サッカー選抜戦が行われる。

 そして日本高校サッカー選抜チームは4月にドイツで行われる、

 シュバルツバルト国際ユース大会に参加する事になる。


 選考合宿は、高校の指導者が監督・コーチを務める。

 選手数人が怪我で不参加だったが、

 実戦を重視し、練習試合が中心のカリキュラム。

 晴貴は審判員として参加したが、

 タフに試合をこなす姿が、コーチ陣の目に留まった。

 監督の意向として、トレーニングパートナー役も担う。

 正式な帯同審判員としてスタッフに加えられた。


 Jリーグ開幕直前には、バラキサッカーフェスティバル。

  4日、J1神島vsJ2伊立

 11日、J1神島vsJ2氷戸

 18日、J2氷戸vsJ2伊立

 県内の3チームによるバラキダービーが行われる。

 18日はJ1神島の出場するスーパーカップ。


 晴貴は11日のバラキダービーで副審2。

 18日のスーパーカップでは前座ながら、

 ネクストジェネレーションマッチの、

 主審として起用された。

 着々と経験を積み重ねる。


 試合後の、マッチコミッサリーと、

 審判アセッサーとの懇談を終えると、

 スーパーカップは始まっていた。

 審判控室から廊下に出ると、

 西中郷素衣と高萩直が数人と談笑中。

 晴貴に気付いた高萩が手を挙げると、

 一同が振り向いた。


「相賀君、久しぶり、御苦労さまでした」

 背広の紳士が晴貴に話しかける。

 どこかで会った事がある。

 連れの二人の男性にも、見覚えがあった。

 スポーツ関係者である事に間違いない。

 紳士は名刺を差し出す。

「黒蹴会の金直です」

「VFC大江戸の松下です」

「ブルーコヴェルデの内田です」


 そうだ、一高サッカーの部OB会、

 黒蹴会の金直先輩は、

 VFC大江戸の代表取締役社長。

 昨年、伊立市のホテル天宙閣で、

 黒蹴会の開いた就任を祝う会で、

 受付等の手伝いに駆り出された。

 連れはサッカーJ1、VFC大江戸の監督と、

 Vプレミアリーグ男子のVFC大江戸、

 愛称ブルーコヴェルデの監督。

 三人揃っているという事は……。


「金直さん、お久しぶりです。

 お二人とは、初めてですね、相賀晴貴です」

 VFC大江戸は複数のスポーツ競技を擁する、

 国内最大級のクラブチームだ。

 バレーボールとサッカーの歴史が古く、

 陸上競技や駅伝等でも、

 強豪として知られている。


「私達は、紹介するだけだから」

 西中郷が複雑な表情。

「今の晴貴には、悪い話ではないと思うよ」

 高萩はあくまで前向き。

「落ち着いて、ラウンジでお茶でも飲みませんか?」

 金直が笑顔で誘う。

 となると……。

 用件は容易に予想できた。


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