073《ロッキーゲーム》
番外編30
ロッキーゲーム、琉球大会。
二年男子の王位を賭けたトーナメント。
シードの相賀晴貴と各組の代表3名の、
31名で争われる。
晴貴は2回戦から登場。
簡単に8組の1位を秒殺。
準々決勝、相手は10組の2位。
初心者にしては手応えがあったが一蹴した。
晴貴には一日の長がある。
準決勝は10組の1位。
どうやら理系クラスが強いらしい。
確かにロッキーゲームは物理の応用だ。
ロッキー本体の強度に加え、
支点・力点・作用点、
自然に理解して、効果的に取り入れている。
しかも相手は二刀流の使い手。
自分の流派だとあくまで言い張るので、
認められた。
正面と斜めにロッキーをくわえる相手。
正直、見かけ倒しに過ぎない。
晴貴は斜めロッキーをあっさり弾き飛ばす。
こうなればもう敵ではない。
決勝戦の相手は9組の1位。
棍棒のようなアーモンドロッキーで勝ち抜いてきた。
レギュレーション違反ではない。
経済力も実力のうち。
世の中、生まれながらに全てが平等ではないのだ。
一高生の処世感を如実に表している。
おまけに成沢遥香がセコンドにつく。
負けられない戦いが始まった。
晴貴は持久戦に持ち込む。
相手は基本素人。
俺は高萩直師匠に鍛えられた、格が違うのだよ。
接近しては先端をコツンと跳ね上げて離脱する、
決して致命的な一撃は受けない。
相手も遥香の助言通り、
虎視眈眈とカウンターを狙いながら、
晴貴の攻撃を受け流す。
晴貴はくわえたプレッツェルが、
唾液で湿らないように細心の注意を払う。
相手は次第に重さが負担になり、
しきりに唇でくわえ直そうとする。
コン、コン、コン、と下からジャブを打つと、
晴貴のロッキーが一閃、
逆に上から叩きつけた。
相手は辛うじて持ちこたえる。
尚も晴貴は攻め続ける。
相手は強度に自信を持ち、余裕の表情。
ポリポリポリ。
晴貴がくわえたロッキーを食べた。
長さは3分の2に。
相手もギャラリーも呆気にとられる。
再び下からジャブを打って、上から叩きつける。
晴貴の短くなったロッキーは威力倍増、
相手のアーモンドロッキーを叩き落とした。
2年5組、相賀晴貴。
初代ロッキーキング、戴冠。




