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007《晴貴のリボン》

番外編04

 バレーボール関東地域リーグ、

 伊立北部シュトゥルム(Sturm)の独身寮。

 成沢遥香と相賀晴貴の中学卒業を祝って、

 元全日本代表の西中郷素衣、高萩直を筆頭に、ママ軍団が集結した。

 食堂では特製「焼肉どんぶり」がふるまわれる。


 遥香と晴貴が挨拶。

 二人とも伊立第一高等学校へ合格していた。

 ママ軍団からは入学祝いにブレザー一式がプレゼントされる。

 先日、遥美ママに連れられて、あつらえてきた紺の上着にはそれぞれ、

 Vプレミアリーグ女子・伊立シェーンハイトのエンブレム、

 Vチャレンジリーグ男子Ⅰ・伊立コンクレントのエンブレムが付いている。

 ピンクとブルー、ライン入り白のニットベスト。

 グレーを基調にしたチェックのプリーツスカートとスラックス。

 そして、エンジのリボン。

 早速着替えてお披露目するように促される。


 遥香と晴貴は特に気にする事もなく、同じ部屋で着替えた。

 自然に競い合いになるが、遥香は晴貴の邪魔をする。

 置いてあるスラックスのベルトをポイッと遠くに放り投げる。

「やめろよ!」

 晴貴が戻ってくると、ブルーラインの入ったベストをまた放り投げる。

「やめろよ!」

 晴貴が戻ってくると今度はリボンを放り投げる。

「……」

「『やめろよ』って言えよ!」

「俺もリボンなのか?」

「当たり前じゃない!」

 首を傾げながら拾い上げる晴貴。

 その間に遥香がブレザーを羽織る。

「私の勝ちだ!」

「へいへい」


「ほら、後ろ向け、付けてやる」

「俺もリボンなのか?」

「ブレザーなら当然だろう!」

「そうかな~」

 納得がいかない晴貴からリボンを取り上げ、

 遥香が後ろに回り込む。

 二人の背の高さはほとんど変わらない。


 まるで結婚式のお色直し、

 食堂に戻ると歓声が沸き起こる。

 集合写真から、全員と一通りの個別撮影。

 晴貴にはみんなのニヤニヤ笑いが気になる。

「晴貴可愛いな~」

 西中郷が晴貴にべったり。

「そろそろ良いんじゃない?」

 高萩が種明かしを提案。

「ごめんね、晴貴」

 遥美ママが晴貴のブレザーのポケットから、

 エンジのネクタイを取り出す。

「やっぱりか!」

 ママ軍団は笑い転げる。


「結んでやるよ!」

 遥香が殊勝に言い出す。

 しかし、滅茶苦茶、蝶結び。

 それを見てママ軍団はまた爆笑。

「媛貴も、媛貴も!」

 妹もネクタイを結びたがったができるはずがない。

 西中郷と高萩もチャレンジするが上手く結べない。

 晴貴はもうされるがまま、諦めの境地。

「二人ともダメね~」 

 笑顔で遥美ママが結び直す。

 ホッとする晴貴。


「それじゃ、集合写真からやり直しね」

「またやるのか……」

「嫌ならいいけど。

 晴貴のリボン姿だけが記録に残って、

 みんなのブログで拡散されるわよ」

「そ、それは困る」

 ママ軍団も仕切り直しが楽しそう。


 弟の結貴が貴美ママの遺影とアルバムを持ってきた。

 アルバムの中には学生時代、制服リボン姿の貴美ママ。

 遺影を中心に全員が集まる。

 貴美ママと同じように、みんなが笑っている。


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