059《いがっべまつり》
番外編28
JR常磐線、賀多駅から国道6号線に至る「いがっべ通り」。
9月10日、土曜日、全面が歩行者天国になり、
『第43回いがっべまつり』が開催される。
いがっべ通りから北に約200メートル。
国道6号線に面したステーキ・ガッツ伊立賀多店。
かまびすしく食事している五人娘。
土・日・祝日は10時開店なので早目に集合、
ハンバーグを食べ終えてから、
ドリンクバーで正午まで粘る。
揃いのユニフォームでパンポンのマイラケット持参。
BKBの真似をして、ラケットカバーの装飾に凝った。
「ルールとはいえラケットはカワイイ方が絶対いいよね」
「うん、そう思う」
「せっかくTVで取り上げたんだからさ、
固いこと言わずにね~」
「片面くらいは良いと思うんだよね」
「……」
「私たちはバックハンドなんてできないし~」
「絶対女子ウケするよね」
「カワイくショーアップしてさ」
「スーパーパンポンって新競技にしちゃえばいいんだよ」
「……」
リオこと野村寿里の様子がおかしい。
「どうしたの、リオ?」
「……エ、エウイストーシェイオ……」
「食べ過ぎだよ!」
「カレーばかり食べているじゃない!」
「……だ、だってぇ……」
「いくらサラダバーが食べ放題だからって」
「ドリンクバーも頼んだのに手もつけていない」
「……フ、フルーツも食べなくちゃ……」
「おなか壊したらどうするの」
「食べ放題は初めてだからって、
自分の腹具合くらい分かるでしょう」
「……デ、デザートも食べなくちゃ……」
「しょうがないな」
「……しょ、生姜はいらない……」
「ちょっと飛び跳ねてみたら」
「腹ごなしよ、腹ごなし!」
「……ハラゴナショーハラゴナショー?……」
呪文を唱えながら、言われるままフラフラと立ち上がると、
その場でピョン、ピョン、ピョン。
気のせいか楽になった。
楽になったら、だんだん楽しくなってきた。
続けてその場でピョン! ピョン! ピョン!
長島依子がつられて跳ねた。
西津悠が囃し立てる。
沼尾柚亜がテーブルを叩く。
店員に怒られる前に根岸桜芽が止めた。
お昼近くになり店も混み始めてきた。
「そろそろ行こうか」
「高尾先輩に電話してみよう」
西津悠がスマホを取り出す。
今日はパンポン部の高尾直妃部長に誘われた。
『今度のいがっべまつりで、
6時間耐久パンポン大会があるから、
あなたたちも出場してね』
西津は五人の中では一番上手だ、
小久保中でパンポンを日常的にやっていた。
パンポン部には入らなかったが、
高尾部長は気軽に声を掛けてくれる。
「私たちの出番は3時頃からだって」
「それまで練習しよう!」
「会場は真ん中辺りだよね」
「あちこちに練習場所があるようね」
「BKBもお忍びで来ているらしいよ」
「みんな、ちゃんと必殺技考えてきた?」
「ピョンピョン跳ねながら打つのはどう?」
「ぐるぐる回って遠心力でバーン!」
「二刀流ラケット」
「もっと真面目に考えてよ!」
「蹴る~~~」
第43回いがっべまつりのテーマは『パンポン!新世代!』だ。




