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041《第37回伊立市パンポン大会》

番外編18

 第37回伊立市パンポン大会。

 前年のBKBの参戦で、パンポン人気が上向きに、

 今年は取材申し込みが激増した。

 バラエティー部門ではBKBの冠番組、

 報道部門では西中郷素衣・高萩直のニュース番組がメインとなる。


 試合会場をテニスコートやゲートボール・クロッケー場まで広げ、

 番組対抗トーナメントと芸能界パンポン女王決定戦も開催する事になった。

 これならメインを外れた取材陣にも充分な素材が提供できる。

 他番組のタレントでも、試合の模様ならスムーズに放送の許可が下りやすい。


 対抗トーナメントでは冠番組を持つアイドルグループがこぞって参加した。

 レベルに応じて楽しめる、パンポンのハードルの低さが幸いした。

 用具は安価で練習の場所も問わない。

 試合の尺も程良く、出場者は過剰な負荷も伴わない。

 練習すればするほど上達して楽しさも増す。

 一時期流行したフットサルよりも視聴者に分かりやすく、

 収録はハンディカメラ一台でも事足りる。

 何よりも出場者の動きは絵になりやすい。

 コストパフォーマンスに優れる優良コンテンツ。

 どうやら各番組の制作陣はそのように解釈したらしい。


 BKBでは「たかりん」こと高崎鈴がパンポンを猛練習していた。

 去年の伊立さくらアリーナ・オープンイベント。

 バレーボールDAYで出逢った相賀晴貴に一目惚れ。

 直後の第36回伊立市パンポン大会では再会が叶わず、

 憧れの王子様への気持ちは膨らむ一方。

 恋愛禁止の建前上、誰にも思いを打ち明ける訳にはいかず、

 パンポンが唯一の手づるとなると思い込み、

 空き時間には一人でもラケット片手にパンポン、パンポン。

 遂には国分寺美香とも互角に渡り合えるほどの腕前に。

 今日こそは「ハルキ様」にお会いできるかな。

 恋する乙女は、最近綺麗になったと評判も上々。


 西中郷と高萩も久し振りのパンポン参戦。

 女王決定戦があると聞いては捨て置けない。

 古いラケットを引っ張り出し準備万端。

 私たちは年季が違うのだよ、小娘どもにでかい顔はさせない!


 午前の番組対抗トーナメントはBKBの順当勝ち。

 午後は西中郷と高萩がエントリーした芸能界パンポン女王決定戦。

 準決勝は高萩直vs国分寺美香。西中郷素衣vs高崎鈴。

 親子ほどに年の差がある西中郷と高萩だったが、

 国分寺と高崎は午前中のトーナメントで疲労していた。

 シーソーゲームを制して、決勝戦進出したのは西中郷と高萩。


 表彰式後に西中郷が高崎たちの健闘を称え、夕食に誘うが、

 BKBのスケジュールは動かせない。

 高崎は頭をフル回転、去年の事を思い出す。

 このおばさんは王子様の事を知っているかも。

 ここはひとつ、ご機嫌をとって情報収集よ。

「あの、西中郷のお姉さん。アイガさんってご存知ですよね」

「相賀晴貴の事、何で?」

「いえ、今日は来ていないかなって……」

「ハハ~ン。どこで会ったか知らないが、晴貴は駄目だぞ」

 西中郷は高萩に目配せ。

「ど、どういう事ですか?」

 戸惑うたかりんに苦笑しながら高萩が教える。

「晴貴は私たちの息子みたいなものだから」

「ええっ、そうなんですか、お母様!」

 ジト目で見下す西中郷。

「何を言ってる。晴貴は私のフィアンセだ!」

「うえぇ~っ!」

 意外な展開に目を見開いて思考停止する高崎。

 吹き出す高萩、聞こえない振りのBKBメンバー。

 どうだと胸を張る初代パンポン女王の西中郷。


「バカね、からかわれたのよ」

 帰りの観光バスの中、国分寺が高崎に説教。

 好きになるのは構わないけどアイドルの立場は弁えなさい。

 占い上手な笠戸菜月が結果を告げる。

「女王の存在は幻だけれど、あなたの恋路は山あり谷あり」

 不貞腐れてカーテンの隙間から外を眺めるたかりん。

 バスは国道6号線の渋滞を避け、国道245号線へ。

 伊立電鉄線鮎沢駅と桜河駅の間にある白檀幼稚園の前。

 高萩と数人の女子、そして西中郷の腕が首に絡まる憧れの王子様の姿。

『キャン!!!』

 思いがけない幸運に声をのむ。

 幼稚園の隣は中華料理店大来軒。


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