表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/109

030《バナ~ナス》

番外編14

 南米ブラジル・リオデジャネイロから帰国した、

 リオこと野村寿里は満面の笑みを浮かべる。

「バナナ美味し~い! バナナ大好き~!」

 相賀晴貴が日本語に訳した。

 今日は朝からこの調子、

 ポルトガル語しか話そうとしないリオの専属通訳だ。

 トイレ以外は連れ回される。

 授業の受け答えも晴貴が仲介、

 英語の授業中は3ヶ国語が入り乱れた。

 昼休みになっても拘束は続く、

 机を寄せてランチを楽しむ女子の中に巻き込まれた。


 時々、通訳せずに二人だけで話し込む。

 まるで恋人同士のようなリオと晴貴に、伊師林檎はずっと苦笑い。

『今日だけは仕方ないのかな』

 晴れ晴れと屈託のないリオの笑顔に文句は言えない。


 晴貴の弁当のデザート、バナナをリオが所望した。

「日本のバナナナニッカって美味しいね!」

「バナナナニッカ?」

「日本ではプラッタや、マッサン、オウロ、テロは見かけないね」

「ブラジルのバナナは食べた事が無い」

「ナニッカも、プラッタも、マッサンも、オウロも、テロも、

 全部バナナの品種だよ!」

 リオは林檎を見て微笑む。

「晴貴はきっと、バナナマッサンが大好きなはずだよ!」

 マッサンはリンゴという意味だ。


「ブラジルでもバナナはできるのか?」

「勿論だよ、朝市でいっぱい買うの!」

「料理用のバナナがあるって聞いたけど?」

「そうだよ、日本にはないの?」

「う~ん、日本では果物、デザートという感覚かな」

「そもそも、日本でバナナはできるの?」

「できると思うけれど、フィリピン産とか、

 エクアドル産とか輸入物が多いかな」

「エクアドル! 知っているよ、南米だよ!」


 長島依子がからかう。

「さっきから『バナ~ナ』『バナ~ナ』って、

 リオはバナナ女子だね」

 西津悠は感心顔。

「バナナの話だけでこんなに盛り上がるなんて、

 相賀君のポルトガル語も本物なのね」

 沼尾柚亜が満足気に。

「何言っているのか全然分からないけれど、

 リオ、とっても楽しそう」

 根岸桜芽は大きく頷く。

「相賀君に任せて、大正解だったね」


「もっとバナナ食べた~い!」

 リオの心からの叫びに晴貴が意訳する。

「誰か、バナナを持っていないか?」


 多賀冬海が小首を傾げる。

「相賀君のお弁当のデザートだったんだよね……」

 小木津亜弥が手を打った。

「あなたのお姉さんも持ってきているんじゃないの?」

 林檎が澄ました顔で言った。

「もう食べちゃったかもね」


「バナ~ナス!」

 叫びながらリオが晴貴を引っ張って駆け出した、

 目指すは1組、成沢遥香のデザート。

「バナ~ナス! バナ~ナス! バナ~ナ~ス!」

 あっという間に、二人の姿が消えた。


 遥香と晴貴が交渉の末、

 リオはめでたくバナナをゲット。

 上機嫌のリオは晴貴の手を引きながら廊下をスキップ。

「おい、ちょっと待ってくれ、さすがに恥ずかしい」

「恥ずかしいの?」

「日本人は慎み深いのだ」

「そうなんだ~」

 リオは不思議そうな顔をして晴貴を見つめる。

「これは、どうかな?」

 リオは、隙だらけの晴貴の頬にキスをした。

 不意を打たれて固まる晴貴。

 幸いなことに誰にも見られていなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ