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104《epilogue 見送りラウンジ》

本編54

 成田空港の見送りラウンジ。

「行ったな。

 ……私との結婚すっぽかして」

 マジで溜息をつく西中郷素衣。

「行っちゃったね。

 ……まだそんなこと言っているの」

 呆れ気味の高萩直。

「……」

 じっと機影を見送る成沢遥香。


 見送りに来たのはこの三人、

 妹の相賀媛貴は来なかった。

 伊立では卒業と旅立ちを祝って、

 全員で『焼肉どんぶり』に舌鼓。

 媛貴は別れ際に晴貴から、

 ギュっと抱きしめられても、

 気丈にも涙を見せなかった。

 その後はずっと、結貴が手を握っていた。

 おお兄ちゃんを笑顔で見送ると、

 姿が見えなくなってから、

 結貴にすがりついて号泣。



 出発前の空港ロビーで4人が記念撮影。

 遥香と晴貴のツーショットは、

 二人とも満面の笑顔だった。


「……今でも信じられない、

 晴貴が『銀河系軍団』の一員だなんて」

 感嘆する遥香。

「シュルツェンのおっさんは、超やり手らしい」

「ええ、まさかの展開だよね」

 西中郷と高萩は取材でシュルツェンとは何度も会っていた。

「でも凄いよね、すぐにレンタルに出されるとはいえ」

「遥香、知っている?

 イタリアの『ティレーニア』ってチーム」

「幾つかのクラブが合併したセリエBのチームだって、

 晴貴から聞かされたけど、詳しくは……」

「サッカーはセリエBだよね」

「サッカーは、って……?」

 キョトンとする遥香に対し、

 西中郷と高萩はにやにや。


「本当にシュルツェンのおっさんは、超やり手だ」

「移籍にビックチームを絡めるなんてね」

「サッカーのセリエBじゃないの?」

「いや、サッカーはセリエBだよ」

「まさか二刀流……」

 遥香は目を見開く。

「そう、バレーボールはセリエA2」

「そこの会長が古い知り合いでね……」

「アトランタオリンピックで出会ったんだよね~」

 西中郷が意味ありげに高萩の肩を小突く。

「止めてよ、遥香の前で余計な話は」

 高萩は苦笑い。

「昔のカレシなの?」

 遥香は興味津津。


「……一人分の資金で、良い買物だって」

「直も一緒に行っちゃえばよかったのに」

 西中郷が茶化す。

「そのこと、晴貴は知っているの?」

 遥香は晴貴から聞かされていない。

「そのことって、直の恋物語?」

「じゃなくって、二刀流よ!」

「どうかな?」

「どうかなって……、

 1月から何度も渡欧していたけれど、

 バレーボールのバの字も聞いてない」

「じゃあ、知らないんだよ。

 遥美も、成沢監督も、相賀監督も口が堅いから」

「大丈夫、晴貴を信じなさい」

「シュルツェンのおっさん、やりやがったな、

 ン? お姉ちゃんたちも一枚噛んでいるでしょう!」

 言いながらも遥香は楽しそう。


「当たり前よ、貴美から託された責任がある」

「おかげで私たちの番組が独占スクープいただき」

「面白い!

 どうして晴貴はいつも簡単に騙されるのかな」

 遥香が手を叩いて喜ぶ。

「遥香、日曜日の放送、見学しに来なさい」

「勿論!」

 遥香は二つ返事。

 三人は悪い顔で肩を寄せる。

 こうして遥香は、

 西中郷と高萩の番組におびき寄せられた。

 そこで待ち受ける二人の罠に気付くこともなく。


「それじゃあ、晴貴の明るい未来を祈りましょう!」

 三人は喜々としてハイタッチを交わした。



========== HIGH FIVE お わ り ==========


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