「友」
【スキルシステム】スキルは選択不可能の天性的な自然発生スキルと選択可能の意図的付属スキルのふたつがあり、意図的付属スキルは所得するチャンスを複数回得ることが出来る。どちらのスキルも二十一歳を超えると一部を除き、所得出来ない。
「おーい、鉄人」
私をそのように呼んだ彼は私の返事も許そうとせず、私の休憩の時間に土足……いや、裸足で踏み込んできた。
……おかしい、扉の鍵はかけたはずだ。
「よお! お前また仕事してたのか! 流石鉄人」
彼は私の癇に障りながら、個人情報が書かれまくった資料の山を見た。
「おい、薩井」
「ん? なんだ鉄……いや、二木」
彼は私の顔を見て名前で呼んだ。
「鉄人呼びはやめろ。好きじゃない。というか、扉開いてたのか? 」
鉄人呼びを辞めるように言いながら、嫌な予感しかしないことを私は聞いた。
「扉? 扉ならちゃんとこじ開けて来たぞ。安心しろ、ちゃんと直したから。てか、この呼び方してんの俺だけじゃないし、お前がちゃんと休みを取ればこんな呼び方はしない」
嫌な予感は、寸分の狂いなく的中していた。
私以外に薩井がこんな事を後にしないように願いつつ、私はため息をついて
「お前らが私を鉄人って呼ぶから来年から仕事量が世界平均の1.5倍から2.0倍に増えるんだ。ちゃんと働け給料泥棒」
と続け、薩井以外の同業者にも文句を言いながら不可能に近い平穏を嘆いた。
「そうか。また、進化するんだなおめでとう」
彼はそう言って笑い、
「仕事増やされたくないなら、お前も休め。たとえ、お前が100%120%の努力をしても他の奴らはわからないから仕事が増え続けるんだ。黙ってても分からないんだよ。しっかり休め。俺みたいに」
そう続けて私を見た。
「そうかい」
と言いながら私は
「お前は休み過ぎで昇格出来ないけどな」
と彼への嫌味を付け加えた。
「お前は仕事が多すぎで職員全然増やせてないけどな」
薩井はため息をついてそう言うと、続けて私を誘惑した。
「まぁ仕事の話はもういいだろ。なぁ二木、酒飲もうぜ? ヴィンテージもんだ」
「いいな! どこ産だ、それ! 」
私は容易く誘惑に負け、中断した仕事の残りを明日に回す事を決定した。
他人の金で飲む酒は最高にうまい。
「お前身長……まぁ、いいか。実はこの酒はお前さんの師匠の旅行土産の酒でな。うちで保存してたんだ。」
「なに? 師匠から!? 」
私は予想もしていなかった人からのプレゼントだと聞かされ驚いた。
彼は頷き、こう言った。
「あの人……今頃どうなってんだろうな。数十年経ったって言うのに生死も分からない」
私は俯き、こう言った。
──過ぎた事なのに、目は見れなかった。
「あの人は、雑務はサボりまくったが、見極めに関しては速度、正確性そして指導力何をとっても超一流だった。私はあの人に追いく事なんて無理だ。もっと色々聞いておくべきだった……」
──突如として、私達は息が詰まった。
──いや、息を詰めさせられた。
見えない第三者が、まるで私達の首を締めるかのような強力な抑止力をかけ、この話を続けさせないようにしていた。
「師匠の話はいい…やめよう…どこ産だ。それ? 」
私は耐え切れずに話を戻した。
「ああ、ごめん。そうだな……」
彼は謝り、続けて私の質問に答えた。
「フランス……と書いてあるな」
私は答えた。
「そうか……これがあのフランスの酒なのか」
彼は言った──言葉に疑問を含ませて。
「分かるのか? もしや、これもお前が前に調べた地球とかいう所の土産なのか? 」
私は言った──言葉に自信を含ませて。
「その通り。あの人は地球に何回も旅行してるのに連れて行ってくれないから気になって調べたんだ。フランスもその時に調べたのさ。まぁいいや、それじゃあ」
そして、二人はその場に音を生み出した。
──乾杯──。
読んでいただきありがとうございました。毎回少しずつですいません。前書きは本文内にいれるとグダグダ感が増すと思いこんな感じにした次第です。さて、私の作中に関して地球がどういう存在なのか少しでも理解して頂けたでしょうか。して頂けていると嬉しいです。
では、次話も短いと思いますけど、読んで頂ければ幸いです。