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手をとって走りだす

作者: Shimo

少年と少女は何かから逃げている


誰も助けることはできない


目を伏せ、祈ることしかできない


彼らはヒムに追われている


ヒムは獲物を逃さない


どこまでもついて来る


2人は教会へと逃げ込む


扉をノックする音


ひとつ、ふたつ、みっつ…だんだんとノックする音は増えていく


ステンドグラスは激しく揺れ、ローソクの炎が一斉に消える


夕日によって大きく伸びた少女の影はゆっくりと起き上がり、ヒムが現れる


2人はまた走り出す


2人は岩場に隠れて息を殺している


しかし、少女の吐息を聞きつけたヒムは、岩から染みでて2人の背後に現れる


2人はまた走り出す


少年は少女の手をとって緑の高野をひたすら走る


少年は息ひとつ切らさない


ヒムはすぐ後ろをぴったりとついて来る


ヒムが通り過ぎた場所は草が枯れ、動物は息絶えた


陽が落ち始めてくる


もうすぐ、ヒムの時間がやってくる


2人は足を止める


目の前には大きな崖が広がっている


ヒムはもうすぐ後ろに立っている


ひたひたと近づいてくる


少年は少女を守ろうと、ヒムの前に立ちふさがる


ヒムはニタリと笑う


耳まで裂けた口がとても不気味だった


ヒムは宙に浮き、ものすごい勢いで少年に突進して来くる


少年は身構える


しかし、ヒムは少年を通り抜けて、その先にいた少女の体にとけ込んでいき消えていく


すると、少女の目は見る見るうちに生気を失いその場に倒れ込み、息絶える


少年は少女の元に駆け寄り、強く揺する


しかし、少女はまったく動かない


少女を抱えた少年の手は少女の肌がとても冷たくなってしまったことがわからない


少年はロボットだった


少年は死ぬことも泣ければ涙を流すことも出来ない


しかし、少年は泣いている


悲しみが少年に涙を流させる


涙は頬を伝い落ち、不思議なことに涙は少年の錆びた体を見る見るうちに肌色の人間の皮膚へと変えていく


奇跡が起きた


少年はとうとう夢だった人間の子供になれた


しかし、少年は泣き続けている


嬉し涙ではない


少年には自分よりも大切な人がいた


何かの犠牲の上に成り立った幸せに意味などない


少年の腕の中の少女は少年にとって命より大切な人だ


しばらくして、突然、少女の体が黒く光だす


少女の体から黒い霧が吹き出し、それは見る見るうちに人の形へと変化する


そして、ヒムが生まれる


しかし、少年は逃げない腕の中の少女を強く抱きめしる


そして、少年は立ち上がり、ヒムの前に立ちふさがる


少年の目からもう涙は流れていない


少年は掛け声とともにヒムへと突進する




ヒムはニタリと笑った…

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― 新着の感想 ―
[一言] 初めまして。短いながらも、とても状況の解りやすい物語で印象深かったです。最後、まだ続きそうで気になりました。  ヒムの目的、少年と少女の関係、色々ありそうですね。それでは失礼致します。
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