第一話
【 まえがき 】
■この作品は現代ファンタジー(?)であり『残酷な描写あり』で書いています。
2013/10/27
「じゃあね、上村くん」
「うえ!? あ、は、はいっ!」
「あははっ。声上擦ってるよ! 上村くん緊張してるんだ?」
「緊張してねーよっ」
「ふふ、ウソウソ。じゃあ、明日ね」
教室を出ながらばいばいと手を振るクラスメイトの彼女・志原カノコに手を振り返した上村ユウゴは、ちらりと時計を見遣った。その時刻は午後5時10分を過ぎていた。
バスが来るまであと10分。バス停まで2分弱。
走れば余裕で間に合うなか、ユウゴはただ席に座り、頬杖を付きながら教室を眺めていた。
なにかを考えるかのように眉を寄せ――いまユウゴの頭には志原カノコが埋め尽くしている――小さく頷く。
ユウゴの眉は緩み、そうして決意するかのように掌を握りしめた。
志原カノコに告白をする。もちろん、玉砕覚悟で。決めなければ、きっとうだうだしてしまうから。
だからユウゴは決意したのだ。
――明日、彼女に告白をすると。
バス停まで来れば、ユウゴは列に並んだ。パスケースに入れた定期券をカバンの外ポケットに入れ直しながら。いつもならぎゅうぎゅうになる時間に乗っていたが、この時間はあまり人はいないようだ。これからは座ることができそうなこの時間にしようか。
ほどなくしてきたバスに乗り、座席に腰を下ろして窓の外を眺めた。
小波町2丁目は夕陽に染まり、色彩を変えている。
カノコは自転車通学であるから、小波町のどこかを走っていることだろう。スカートをはためかせながら。
ふと思い浮かべたカノコの姿に、ユウゴの顔は知らず知らず緩んでいた。
志原カノコという女の子は、ユウゴと同じクラスであり出席番号も近いことでクラス替え当時から話をするようになった。忘れ物をしたときには貸せるものは貸せるような仲になり、いつからかユウゴはカノコに「恋心」を持つようになってしまったのだ。
そうして「告白をする」と決めるまでは2ヶ月半かかった。
うだうだしてしまうと解っていたが、ここにくるまでもうだうだしていると気付いたのはいまである。
降りるバス停が近づいたところで降車ボタンを押し、ユウゴはバスから降りた。運転手に見せたパスをカバンに戻して歩き出す。ここからユウゴの家までは10分あった。
バス停近くにある横断歩道を渡り終われば、「にゃー」と猫の鳴き声が聞こえてきた。反射的に振り返ったユウゴは瞠目する。
チカチカと赤に替わろうとする信号機。横断歩道には灰色の毛の猫が行儀よく座っている。
――考えるより先に、躯が動いてしまった。猫を抱えあげ、向こう側に走る。走った、のだが。
ユウゴは車に跳ねられた。
腕のなかの猫はそこから離れ、宙を舞う。
仰向けに飛ばされたユウゴが見たのは、華麗に地面に着地する猫と、慌てたように運転手が運転席のドアを開けた姿である。
猫が一声「なー」と鳴き、その口角を上げていたのはもちろん、痛みに堪えるユウゴにはもう見えていなかった。
2013/10/27 第一話UP
2013/10/28 誤字や脱字を修正




