パートナー
彼女達と出会ったのは、有給を使ってドライブに行った日のことだった。
普通なら、そんな出会いをすると…大抵は怖がるのだけど。別に彼女は『幽霊』でもなければ『お化け』でもないので、私は怖いなんて思っていない。だって、大切な………だから。
その日は、雲一つない快晴の日だった。
いつも私が『有給』を取ると、その日に限って1日中くもりか雨…あだ名が『アメフラシ』…勘弁して。
でも、今日はそんな事を言わせない!、絶好のドライブ日より。1ヶ月前に買ったばかりの車でドライブへと出発するんだぁ。
今日こそは、天井を開けて運転するぞぉ。
私が買った車は、黄色の『ビー君』。軽のオープンカー。中古だったけど、すっごく高かったんだよぉ。
ちなみに、対抗馬として『カプ君』の名前もあったんだけど…こっちは僅かだけど高い上に、天井の開け閉めに時間がかかる。5秒対5分では、『ビー君』の勝ち!。
あ、べつにカプ君が悪いってわけじゃないよ。ビー君だって、後ろが見難いって欠点があるから。
…でも、納車されてからの休みの日は、毎回雨ばっかり………梅雨にはまだまだ早いこの時期、私って、やっぱりお天道様にうらみでもかったんだろうか。オープンカーに乗る夢が先延ばしされていく。
え?、なんでオープンカーが欲しいのなら、ロードスターみたいに今販売している車を買わなかったのかって?
ええっと、ですねぇ。私にとっての使いやすさは『軽自動車』サイズなのです。おまけに貯金が100万弱…軽しか選択出来ないでしょう?。おまけに、軽のオープンカーって今ではもう作られていないから…泣く泣く中古車で。
(もっとも、今作られていたとしても手は出せなかったかも。だって、どれも100万越えてたもの)
あ、スマートですか?。あれって、完全なオープンにはなりませんから、除外しました。
でも…本当のところは。中古車販売所を何件目にたずねたところで…私の目に飛び込んできたのですよ。この子が。
くすんだ黄色だったけど…訴えかけてくるような目で私を見て…一目で好きになりました。
車検料などの諸経費・税金等諸々を含めて、90万…ごく普通の軽自動車なら新車が買える金額ですが…一目ぼれした私は、すぐにサインをして契約。これであの子は私のものに。(心の中でVサイン)
そして、お色直し(?)と車検を受けて、私の家へときてくれた。
と言うわけで今日、初めてのオープンでのドライブ。今までは通勤の足として働いてくれていたけど、今日は違う。思いっきりはめをはずせる。
もちろん、毎日乗ってるけど…通勤なんて高々5分、出発してすぐに到着…面白くない。
え?、たかだかそんな距離なら自転車で通勤すればいいんじゃないかって?…そこはそれ、毎日エンジンに火を入れてやらないと、いつ拗ねちゃうかわかんないでしょ。
車って、女の子と同じだよ。機嫌がいいときはとことん機嫌がいいんだけど、いったん拗ねられちゃうとちょっとやそっとでは元に戻ってくれないんだから。とくに、ちょっと古めの車は…ね。
とにかく、幌を開けて、風をいっぱいに受けながら出発ぅ。
高速道路は使わずに一般道から山道へと向かう。
なぜ高速を使わないかって? あのねぇ…平日の今の時間帯だと、高速道路ってトラックの宝庫なのよ。そんな中にオープンで飛び込んでいったら…窒息死しちゃうって。
それよりも、春の新緑が芽吹きだした山の中を走るほうが、どれだけ気分爽快になることか。…あ、もし私が花粉症だったら、そんなことも言ってられないか…よかったぁ、花粉症じゃなくて。
30分もすると、周りはすでに新緑がいっぱいの山の中。名前だけは国道だけど、車がすれ違うのがやっとのほどの細い山坂道を私は走っていた。
ただひたすらに曲がりくねった道…対向車がまったくといっていいほど来ないから、気兼ねなく走ることが出来る。
たまーにすれ違うけど、お互いにスピードを出しているわけじゃないので、ぶつけるなんて事にはまずならないだろう。
2時間ほど走っただろうか。
『一応』の目的地…○○ダムへと到着する。別にここへ来たかったわけじゃないけど…目安としてどこへ走っていこうって考えていただけ。
何か面白いものがあるわけじゃない、ごく普通のダムがそこにあった。辺りには…だーれもいない。平日のお昼前だから当たり前といえば当たり前だけど。デートスポットって言うわけでもないし。
でも、眺望は想像していたよりもすごくいい。
どう説明したらいいのかなぁ…こう『真っ青の湖面と山肌の緑が、心を洗ってくれる』とでもいったらいいのかな…
なんとなく…ボーっと眺めちゃう。いつもはこの時間だと、会社であくせく仕事しているから…こんな時間の使い方もたまには…いいよね。
どれぐらい眺望に見入っていたんだろうか。
腕時計を見ると針が1本に重なっていた…あ、ちょうど正午だ。
お昼…どうしよう。
別に、これといって決めてきたわけじゃない。ただ単にビー君と走りたかっただけだから…その辺にあった食堂で食べればいいと思っていた。でも…
辺りに、それらしいようなお店は…ない。というよりも、30分ぐらい前から民家さえも見てないような気がする。
戻ろうか…とも一瞬考えたけど、ここから戻ると、午後からさらに山の中をドライブして帰ろうと画策している私のささやかな野望が潰えてしまいそうで…
地図を取り出して、現在の場所と近くの町を確認する………あ、ここから少し山の中に入ったところに小さな村があるみたい。町は…やっぱり、30分以上戻らないと無いみたい。
村とはいえ、食堂…はなくても、食料ぐらいは何とかなるでしょう。
よし、決定。ということで、その村へと車を走らせることにする。
曲がりくねった山道をさらに奥へと向かう。ほどなくして………ここが、そうだろうか?
かやぶき屋根の民家が数件………村というより、集落といったほうが合ってるかもしんない…
お店は………無い気がするなぁ…
うーん。さて、これからどうするか。
そう思いながら、ゆっくりゆっくり徐行のような速度で車を進める。
と、とある1軒の家の車庫が目に入る。その瞬間、私の車は止まった。
あれって………あれって、もしかしなくても…
「あれって、エスハチ!? 本物!!??」
その車庫に収まっているのは…間違いない、あの…あの『S800』!!
………すいません…車好きで。わかる人にしかわかんないよねぇ。
『S800』っていうのは、今私が乗っている『ビート』の兄貴分みたいな存在。昭和40年代にホンダから発売されたオープンカー。私の生まれるよりも前のお話…
もう残っている台数なんて数えるほどしかないはず。
私も乗ったこともあるらしい…記憶にはないんだけどね。父さんの愛車がこれだったの。私が車好きになったのも父さんの影響かな?
でも…私が物心つくときには動かなくなっていて、庭の片隅で錆び付いているのが痛々しかったっけ。いまじゃあ………これ以上は、ごめんね…
でもすごい………
思わず車を止めて、私は人の家なのにも関わらず…すぐそばによって、見入っちゃいました。
だって、こんな古い車が、まるっきり新車同然で私の目に前にあるんだから。羨望の眼差しですよー。
「あの…」
すごいすごいすごーい…
「あのぉ」
………え?
「どちらさま…ですか?」
私の隣に…30歳後半ぐらいの物腰の落ち着いた女性が………ひえぇぇっ。気付かなかった!
「ご、ごめんなさい。つ、つい、めずらしいくて…勝手に家に入っちゃってすみません」
「あぁ、そうでしたか。気にしなくてもいいですよ。めずらしいのは事実ですから」
「本当にごめんなさい。すぐに帰ります」
そういって…気恥ずかしさからその場を後にしようとする…と、
「よかったらお茶でもどうですか?」
どう見ても私の方が悪いのに、彼女はそうやって私を止めた。
「でも………」
「わたくしも、ゆっくりしようとしてた所ですから。お話も合いそうですしね」
「しかし………」
その瞬間、
『ぐぅーっ』
ひょぇーっ。は、恥ずかしいよぉ。鏡を見なくても判る、私の顔が真っ赤になるのが。
そんな私を見て、彼女は笑顔で…
「簡単な食事でしたら、ご用意いたしますよ」
………結局、お昼をご馳走になっちゃいました。
私の車と彼女の車が並んで止まっているところを見ると…感無量。
「そうでしたか。こんなにお若いのに、わたくしの車をご存じだとは」
今日出会ったばかりなのに、私達は縁側で2人仲良く食後のお茶を飲んでいた。
「まさか、こんな所で見られるとは夢にも思いませんでした。
それにしてもすごいですね。手入れが行き届いて…まるで、新車のようです」
「私の手足ですからね。お手入れは怠っていませんよ。
でも、あなたの車も手入れはしっかりしてありますよね」
「ええ。私もこの子の事、大好きですから」
「愛されているのですね」
愛している………そう…なんだろうなぁ。
「そうかもしれません。
小さい頃から車が大好きだったんです。女の子なのにまるで男の子みたいにミニカーなんかを集めたり。
今だってこの子に夢中なんです。おかしいと思われるかも知れませんが」
「おかしくなんてないです。何事にも一途になれることは、いいことだとわたくしは思いますよ」
「そう言ってもらえると…お世辞でもうれしいです」
「お世辞なんかじゃありませんよ。近頃のお若い方は何でもすぐにあきてしまいますから。貴女の言っていることは正しいことですよ」
と、私たちの車の停めてある駐車場のほうから…
「お姉ちゃーん、おばさまーっ」
可愛らしい女の子の声が聞こえてきた。
そっちへと目を向けると………か、かあいい………
私って、今までいたってノーマルだと思ってたのに…女の子を見て、純粋に可愛いと思ってしまった。女の子は…とてとてっと走ってくると、私と彼女の間にちょこんと座った。
「おばさま、私の分はありませんか?」
「はいはい、すぐに用意しますよ」
そういいながら女の子は、屈託の無い笑みをもらす…だめだぁ、かあいすぎるよぉ。
でも…彼女とこの女の子、どことなく似ているような印象を受けるのは…気のせい?
「あの…この女の子…『おばさま』って呼んでるって事は、近くの家の子供さんですか?」
私のそんな質問に…2人はきょとんとした表情になる。
「えっと…まさかとは思いますが…娘さんですか?」
その瞬間、彼女は「くす」っと・女の子は「ぷっ」ってふきだすようにして笑みをこらえた。
…私、何か変なことを言ったのだろうか?
「お姉ちゃん、何を変なこと言ってるの?。まだ1ヶ月だけど一緒に暮らしてきたじゃないの」
は…一緒?
「まだ、気づいていらっしゃらなかったのですか?」
はい?
「な…なにを…でしょうか?」
「私たちは、普通の人間ではないことに…」
「はいぃ?」
人間じゃあ…ない?
「私たちは…いわゆる『物の怪』という存在なのです」
「『もののけ』? あの、お姫様?」
「それは映画でしょう。あたしたちは、本物の、物の怪」
「説明…しましょうか?」
「…是非」
「物の怪というものは、命を持たない存在に、命が宿ったものの事を総称して呼んでいます。
よく昔話にも出てきますよね。人形に魂が宿ったりとか、大切にしてきた鏡だったりとか。
まぁ、人間に愛情を持って使われたものには生命が宿るのが普通です。それに、愛情を注いだ人たちが気づくかどうかなのです」
「でも…それじゃあまるで、子供が出来るみたいですね…」
「その言い方のほうが合ってるかもしれません。
人が互いに愛し合い、生まれてくる生命が子孫だとすると…私達は、人の愛情を受けて、愛されたものに命が宿り、生命になる。
私達は、愛された人の愛情が結晶化した、親の体から生まれてこなかった子供・みたいなものです」
「でーす」
「では…貴女は…」
「はい、貴女がご覧になっていたあの車です。
わたくしを手に入れたここのご主人は、わたくしの事を愛情を持って扱ってくださいました。そして、ここへ来てからしばらくしてわたくしが生まれたのです。
最初は…確かに、今のあなたのようにいぶかしんでおられましたが、時がたつにつれ…車に愛情を注がれるにつれ…わたくしとご主人は、切っても切れない仲になっていきました」
………人と物の怪の恋…かぁ。
「おかしいですか?、車が人に恋をすることが」
「え? いいえ、そうは思いません。でも…」
「結婚できないんじゃないか・ですか?」
「え…あ…はい」
私の心の中をすべて見透かされているようなんですが…
「わたくしが生まれた時点で、今のこの体を持ちました。もちろん本体である車がなくなってしまえば、わたくしと言う存在そのものがこの世からいなくなりますが。
ですから、別に不可能ではないのです」
「そ…そうなんですか。あ、では、戸籍なんかはどうしたのですか?」
「それも、今となっては難しいことではありません。わたくしが生まれたころは手間がかかりましたが、
今ならばコンピューターが発達していますので、コンピューターから派生した物の怪さんに依頼すれば、あっという間に作ってくださいます」
そ…そんなものなのか。
「じゃ…じゃあ、この子は…」
「いつも、ちゃんと呼んでくれてたじゃないですかぁ」
「ビー…君?」
「今まで話すことが出来ずに言えなかったけど…これでも女性なんだから『君』はやめてほしいよぉ」
「ビーちゃん?」
「はーい、そうでーす」
ええっと………
「信じて…ないですね。その目は」
「だって…今の話だと、そんなすぐには生まれないみたいだし」
「確かにそうです。1ヶ月ぐらいでは生まれることはありません。しかし、あなたがその車を購入する以前から、その子が生まれていたとしたら…」
「そうなの?」
「そうですよ」
「あの…この車を買うときに感じた、訴えかけるような感じは…」
「あたしでーす」
「でも…どうして私?」
「あたしの、初めてのご主人と同じ感じがしたからです。
知ってました?。あたしのご主人って、お姉さんで3人目なんですよ。
1人目はすごく優しい女性の方でした。お姉さんよりちょっと年が上だったかな?。私のことをほんとに可愛がってくれました。
7年間、ずっと一緒でした。もちろん、あたしがいることも知っていましたよ。
でも、その人に好きな人が出来て…結婚して…子供が出来たときに、あたしでは役不足だって事がはっきりとわかっちゃったんです。だって…あたしに…3人は乗れませんから。
その人は『走らなくてもいいから、一緒に過ごそう』って言ってくれたんです。心からうれしかったですよぉ、そんなことを言ってもらえるなんて思っても見なかったから。
でも…あたしの心は決まってました。走れなくなった車なんて存在価値がありませんから…そのままその人と一緒にいても、消える運命だと…だから、
あたしは、自分の口から、新しいパートナーを探したいって言ったんです。
あの人も、最初は別れるのはつらいって言ってたんですが…あたしの決意を感じ取ると、喜んで見送ってくれました。
あの人は…あたしにとっては、母親も同然でしたから………子離れってこういうものなんでしょう。
2人目は思い出したくもありません!!。だって、あたしをただの『足』としか見ようとしませんでしたから。
オープンカーなのに、ハードトップなんてつけて! 雨の日だけなら許しますけど、いつでもそれなんですから。信じられます!?
おまけに、運転は『超』がつくほどヘタッピで、あたしの体に傷がついても全然お構いなし! 本当に信じられません!!
まぁ…前と後ろのバンパーだけで、ボディーに傷がつかなかったのは不幸中の幸いでしたけど。
あたしはすぐにその人を見限っちゃいました。
え?、どうやって見限ったかですか?。それはもちろん、
交通事故・ですよ。あ、あたしの体には一切傷がつかないようにうまくやりましたよ。
その人が急ハンドルを切った時に、必要以上に回転させてやったんです。それで、おもむろに運転席側のドアを開けて。
シートベルトをつけてませんでしたので、そのまま外へと飛び出していきました。すっごく気持ちよかったですよ。
やっと、開放されたんだぁって安心感から…」
「その人…どうなったの?」
「対向車にはねられて、意識不明の重体になったところまでは知っていますけど、それ以上は興味ありませんから」
この子…ある意味すっごく怖いかも…
「大丈夫ですよぉ。お姉さんにそんな事はぜぇーーーったいにしませんから。
お姉さんは、あたしを大事にしてくれているじゃないですか。最初のご主人よりもずっとずっと大切にしてくれていますよぉ」
「だって…大好きな『私の車』だもの。当たり前のことだとおもうけど」
「それが、いまではそうでもないんですよ」
「え? それってどういう…」
「近頃の車たちは消耗品のように扱われていて、物の怪になること自体、めったなことではありえないのです。
使われるときもそうですが…作られるときも、工場がオートメーション化されてきて、作り手の愛情が無くなって来ていますし。
もっとも、車に限らず、ほとんどの品物がそうだともいえますが…」
彼女にそういわれて…心に痛みが走ったような気がした。彼女の言っていることは…真実だから。
私だってそう。車に関しては自信を持って『大好きです』『大切にしています』っていえるけど…それ以外、身の回りのものに関しては…言う自信、まったく無い。
家電製品…壊れちゃったら新しいのにすぐ変えちゃう。古いのを直して使おうなんて思わない。新しい方が性能もいいし、値段も修理するのと同じぐらいの値段で買えちゃうから。
調理道具…おんなじ。切れ味が悪くなったり、焦げ付いちゃうとすぐに捨てて、新しいのを買ってきちゃう。でも、高級品は買わない。安かろう悪かろうだけど、少し持てばいいやって考えで安物ばっかり買ってる。
生活用品…基本的にめんどくさがりやなんだ、自分って。だから『使えればそれでいい』って思ってるから、壊れたら直そうなんて…思わない。
…子供のころは『捨てる』なんて考えも及ばなかったのに。
「私も…その中の1人なんだね」
ポツリと…誰に答えるわけでもなくつぶやく。
「そんなことはないですよ。あなたはこの子を大切にしているじゃありませんか」
「そうだよ、お姉ちゃんはあたしを大事にしてくれているじゃない」
「車だけはね…でも、それ以外は…ビーちゃんの2人目の相手と変わりない…よ」
『………』
「お金さえ出せばなんでもそろっちゃうから…それも、すっごく安いお金で手に入っちゃうから…大切に使おうっていう考えをいつの間にかどこかに置いてきちゃったんだ。
私って…ビーちゃんに好かれる資格…無いよ」
「そんなこと無い!」
ビーちゃんは、おもむろに私の腕に抱きついてきた。
「お姉さんは、私にいっぱいいっぱい、愛情を注いでくれたじゃない。1日に1回は必ずあたしに乗ってくれたじゃない。
まだ、お姉さんのところへきて1ヶ月しかたってないけど、お姉さんがあたしにくれた想いは時間以上のものだよ。
まさかそれまで…ウソ…なんていわないよね?」
「ウソなんかじゃないよ。ビーちゃんのこと、大好きだもの。
でも、それ以外の私を助けてくれている『もの』には、こんなにも愛情を注いでない…だから」
「いまからでも、遅くはありませんよ」
「そうだよ。今までは今まで、これからはこれからなんだから」
「そのような考えを持ってくれたことのほうが、わたくし達には大事なのです。考えを持ってくれて、日々接してもらえればいいんです。
わたくし達は、人に愛されて生まれてくるのです。愛されなければ生まれてきません。そして生んでくれた方を愛して育ってゆくのですから」
「………うん………」
「いままでしてこなかったから手遅れなんて事はまったくありません。時間ではなく、注がれた愛情によるのですから」
「本当に…私なんかでいいの?」
ついつい…そう聞いちゃう。
「あたしも、お姉さんのこと大好きですから。あたしって…そんなに信用無いですかぁ?」
「そうじゃなくって…こんな可愛い子が、私のパートナーだと思うと…うれしくって」
「あたしも、こんな優しいお姉さんがご主人になってくれて、本当にうれしいですぅ」
「これからも………ずーっと、よろしく…ね、ビーちゃん」
「もちろんですぅ」
そう言うと、ビーちゃんは私の胸に飛び込んできた。
その感覚は…この子に頼られているこの感覚は、絶対に忘れない。
彼女は私の…大事なパートナー…なんだから。
このお話は、自身がHPを持っていたときにアップしていたお話です。HP自体は一部を除いて消滅しています。
タイムスタンプを見ると……約10年前(汗 ので、コペン等々は登場せず・MR-Sの表記を削除。
好きな作者様が短編で車のお話をアップしていたので、自分も恥をさらしてみようかなぁ…と、投稿してみました。
ちなみに自分はカプチーノ乗りでした。オープンにするのに5分と書いてたけど、慣れると1分少々で出来ます。
オープンカーはやっぱり晴れていれば春夏秋冬オープンで走らないと楽しみが半減どころか1/10以下なんじゃないかと。
桜の散る季節にオープンで走ったら、車内が桜の花びらで…なんてのも良い思い出です。