表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
女神様の落し人  作者: 湊美耶子
本編
2/6

第2話 女神、告げる


 現代日本から異世界トリップしてしまった斉藤歩美(サイトウフミ)


なんと第1話で(6つ目はまだフミ本人が気づいていないのだが)6つの異世界トリップセオリーを成し遂げることができた!


とは言っても大したことコトではない。


異世界トリップセオリー其の一:「言語はなぜか日本語」


異世界トリップセオリー其の弐:「即、国のトップに出逢える」


異世界トリップセオリー其の参:「即、美形に出逢える」


異世界トリップセオリー其の四:「日本人はどうしても若く見られる」


異世界トリップセオリー其の五:「すぐには帰れない」


異世界トリップセオリー其の六:「無駄にモテる」


の6つである。


 そしてフミはハキハキと自己紹介後、この国や国王の紹介などをされている間に興奮と緊張のためか倒れ…寝てしまったのであった。


そもそもあの祈りの祭事に召喚の原因が居たのであるが彼女は知るはずもなく、現在は夢の中。




 そう、フミがドチャッと「ゥギャッ」と異世界トリップしてしまった訳は至極簡単である。


フミにとっては名も知れぬ異世界の神、女神ペクテーヌ様の気まぐれで、


とある男の願い事を叶えるためだけに召喚されてしまったようなのだ。




 では、その元凶達の会話を覗き見てみよう。




 まだ空は暗い。

だが確実に朝が近づいている、地球で言えば午前3時頃、異世界時間:牛寅刻(うしとらのこく)


 若き宮廷魔術師イシュライラ・キールンの夢の中でイシュライラ自身と一人の女が対峙している。

否、イシュライラは圧倒されている。

夢の中で偉そうに女が仁王立ちしているのだ。

いや、この国は女神ペクテーヌを信仰する国なのだ、仏教用語たる仁王立ちなんて表現はない。

この国の言葉で言うと足を肩幅に広げて地にしっかりと立つ、腕組みをした女の人が立っている、だ。

女は尊大な態度で自分は神であると告げた。


「えっと……どなたでしょうか?」


「うむ、わらわは女神じゃ。お前たちの大好きな、ペクテーヌ様じゃ!」


「普通自分から女神とか言わないと思います、ので信用できません。僕の夢からさっさとお引取りください」


夢の中の青年はコレが夢だと気づいた。

気づいたというより何となくこれは夢だと理解した。

そして目の前にいる女が神であることはぼんやりと理解(わか)ってはいた。

しかし、理解したくはなかった。


「ムキーッ!何じゃその言い草は!わらわがせっかくお前の、『人より早めに可愛い奥さんと結婚して、可愛い子供が欲しいです!』と願うから召喚してやったというのに!信じないならフミは元の世界に還すぞ!大体召喚されたフミを見て『いや、でもまさか27歳……いや、でも独身って言ったし……女神様が叶えてくれたんだよね……フミさんか……ご趣味は?とか聞かなきゃ駄目だよね?いや、まず自己紹介からか……いや年下ありですか?のほうがまず先だな……いやいやいや直球すぎるか……』と呟いておっただろうが!いいのか!?フミを還すぞ!還しちゃうぞ!」


青年ににべもなく信用できないと言われ、自称女神は怒り出した。

まぁ、この際なのではっきり言うと(というか言わないとこの話が続かないのだ)神であることは事実なのでソレを否定されれば神だってモチロン怒るのだ。

怒り出した神はフミが落ちてきた祭事である女神祈念祭の時に青年が駄目モトでしたお願い事及びフミ召喚後の独り言をを一言一句間違えずに復唱した。


「う……その願い事を何故知って……!」


恥ずかしさで顔を真っ赤にさせる青年の容姿は、さらっさらの青い髪と灰青色の瞳。

後ろ髪は襟足部分が腰まで届くほど長く、前髪から両サイドと後ろ髪の上部は耳下から顎くらいまでに揃えられ、そんなもん似合う人間はアニメキャラだけだろっというような髪形をしている。

目鼻立ちも良く、日本にいれば母親が勝手にジャ◎ーズに書類を送ってしまいそうなお顔立ちであった。

一言で言うと美青年、まさしく現在進行形で紅顔の美青年なのである。

(まぁ第1話でフミがイケメンと認めた国王の若かりし頃ほどではないんだけど。)


「だからわらわがペクテーヌだからじゃぁぁ!!!もうお前なんぞ知らんぞ!フミは還すしっ!おお、そうじゃった!次はフミの護衛に決まったウィリアムの願い事を叶えてやるとしよう!そうだ、そうしよう!フミの護衛になると願い事が叶うらしいからな!おお、願い事は何々~?『フミちゃんみたいなかわいこちゃんが彼女になってくれますように……できれば夜積極的で俺のピーをピーしてくれたり、俺のピーをピーピーピー、ピーピーしても怒らないでピーピーピーって言っちゃったり、ピーピーをピーピー……以下神規制……』ウィリアム怖っ!こいつ爽やかな顔して考えてること変態まっしぐらじゃっ!」


「規制音多すぎ!って、ウィリアム氏の性癖とかどうでもいいです。いや、確かにホント変態まっしぐらですけどねっ、じゃ・な・く・てっ!ペクテーヌ様!!!フミさんはホントに俺がお願いしちゃいました可愛いお嫁さん候補なのでしょうかっ?!」


女神の言う護衛はフミ専属の者である。

国王がフミ自身の安全と念のため監視用のために、とフミに護衛をつけることにしたのであるが、その護衛役を引き受けると女神ペクテーヌ様に願いを叶えてもらえるという噂が何処からともなく流れた。

そのため、志願者が多く、なかなか護衛が決まらなかった。

夜中になっても決まらず、若干飽きたのとそもそも寝ようとしていたため眠いらしいフミが異世界流非暴力勝負方法【ジャンケン】を紹介したのだ。

この平和的な勝負方法は国王と護衛を出す精鋭騎士団長同意の下に採用され、その勝負に見事勝ち残ったのがウィリアムとその他2人(出番無いので紹介なし!)なのである。


 そして、美青年魔術師は自分の願い事が叶うため、いささか興奮している。

でも美青年なので暑苦しくない。

眼の保養なだけである。

まぁ、斯様なくだらない会話の所為で女神様を本物だと信じたらしい。

そんな理解のされ方でいいのか、どうなってんだ、異世界の神……。


「候補というか確定じゃ、お前の可愛いお嫁さんはフミじゃ。フミは27じゃからな、遠慮せずに年がら年中イチャイチャするがいいわ」


女神は最初、腕を組んでいたが、それを両腰に当て変えて話を続ける。

そして今更だが、この神様、フミの人権なんぞ完全無視である。

神様の前に人権とは無意味なのだろうか、うん、そうなのだろう。


「ま、まさかフミさんは『お仕事がんばってきてね、イシュ!』とか『はい、イシュ。アーンして♪』とか『イシュ~ゥ、いってらっしゃいのときはココにちゅっ♪でしょぉ?』とか、最終的に『あぁん、いっぱい子作りしましょぉ♪』とか言ってくれたり、やってくれちゃうんですか!?」


だから人権と言う概念は……うん、異世界なのでないんだろう……うん、ソレでいいのか異世界……?


「異世界ナメんなよ。そんなもん異世界ではお嫁さんにゃ標準装備だ!……と言いたいが、お前の妄想もちと痛いな、最後のヤツとかマジ引くわ…………」


女神の言う異世界とは現代日本のことではあるらしいのだが、お嫁さんの基準をその位置にしないで欲しい。

もっと低いはずだ。

おそらくこの神様の知識元はマンガとかアニメだ。

しかも男性向け寄りの。


「口調違いますよ、ペクテーヌ様!ってかフミさんはお願いすればやってくれそう……どうしよう、明日はどこで押し倒せばいいかな……?」


とりあえず押し倒すことしか考えていない。

美青年でも考えることは同じなのかぁぁぁ!


「神様っぽい口調で話してもお前はわらわを嘘つき扱いぞ。っつかいきなり押し倒しちゃ駄目だろーが。一応、護衛としてウィリアム達がついてるからのっ!」


神様がまともなことを言い出したが、そもそもの元凶はこのお方なのである。

神様から好きにして良いと言われたら大抵の人間は自分の思うがままにするはずなのだ。


「いや、口調…いえ、すみませんでした。信じます、信じます。でも俺とフミさん年齢差10歳もあるけど気にしないかな……?」


「いや、聞けよ神様のありがたい話。いきなり押し倒すなよ。あと、ココとフミの世界じゃ年齢の数え方が違う。フミもまだ気づいてないが、こちらだとフミは28歳だから9歳差。お前はフミの世界に直すと16歳。まぁ、フミの世界では男16歳と女27歳の子作りは女側が犯罪者扱い。お前に対してフミからは残念ながら何もしてこないぞ、その辺の感覚は不祥事とやらの所為で格別強いからの」


要は年齢は、この異世界では数え年で現代日本は満年齢で数えるという違いであり、

フミは(元)公務員のようだから未成年のイシュライラとイチャイチャなんてしないぞということらしい。


「じゃぁやっぱり明日押し倒してこなきゃ!」


「うん、だから話聞けよ、イシュライラ。今からアンドレア王にもフミはイシュライラの嫁でーすって言ってくっから。明日素直に王に呼び出されてろ」


「おおぅ、そんなフミ!まだ夜には早いよ!え?我慢できないだなんて!僕もだよっ!」


妄想時間突入である。

若いって良いな。


「うん、脳内妄想乙。完全に自分の世界入りやがった。ウィリアムと大差ないな、この色ボケ宮廷魔術師め。もう国王のとこ行ってこよう……」


そう言うや否や、女神様はイシュライラの夢から離れ、アンドレア王の意識下に向かった。

現代日本でもマイナー部類な挨拶【乙】を使いこなせるあたり、この神様は異世界【日本】についての知識が偏りすぎているようであった。



「アンディ~、ペクテーヌ様じゃぞ~ぃ」


 青年魔術師から国王の夢に移動してきた女神はアンドレアの愛称を用い、気安く声をかける。


「お久しぶりです、ペクテーヌ様。戴冠式以来ですね。もしかしてフミの件ですか?」


慌てもせずアンドレア国王はにこやかに女神を迎えた。

夢の中でも落ち着いていて流石は国王である。

どうやら国王は女神様と旧知らしい。


「うむ。話が解かるので助かるのぅ。フミはわらわが召喚したのじゃ」


「ふむ、何のためにでしょう?本人は還りたいと申しておりましたが、還せるものなのでしょうか?」


「ん~還す気はないぞ~。フミはイシュライラと幸せに暮らすのじゃ!」


「イシュライラと?」


若き青年魔術師の名を聞き、国王は首をかしげる。

国王が知識として持ち合わせているイシュライラは【年若いが最高の魔動力を誇る聡明な天才魔術師、だがたまに魔動力構築理論を暴走させるちょい困ったちゃん】であった。

【魔動力】とは個々人の体内及び自然に存在する【力】のことであり、現代日本で言えば電気のような代物である。

その【力】を自由に利用できる、または自由に利用しようと研究する者たちを総じて【魔術師】と呼ぶ。

【魔動力構築理論】とは魔動力をどのように発現するかを法則的にまとめた知識である。


「うむ、イシュの嫁にするのじゃ。今年の祈念祭でイシュの願い事が聞こえたモンじゃからな。なに、要約すると『可愛いお嫁さんと可愛い子供が欲しいです!』だったのじゃが、アレは潜在魔動力が強すぎて世界中探しては見たのだが、この世界の女ではどうも耐えられんようでな。アレの子を成すには女が魔動力干渉度が同じ程度かあるいは無かだったもんじゃから。魔法がない世界から魔動力の無い娘子(むすめご)を連れてくるしかなかったのじゃ……うん、面倒じゃから干渉度の説明は省くぞ、お前なら解かるであろう?」


そんな話イシュライラ自身とは全然していなかったが、どうやらあの青年宮廷魔術師殿は本当にかなりのお力を持っているようである。


「なるほど。異世界人いえ、フミには魔動力が無いのですか、そのような人間も居るのですね。まぁ膳は急げと言いますし、イシュライラとフミの結婚式を明日にでもしてしまいますか」


「いやはやお前と喋ると台詞が少なくてすむのう~まぁフミにはヨロシク言いくるめておくれ」


「それにしても少し年齢が離れているような気もしますが?」


「以外に下世話じゃな、アンディ。平気じゃ、イシュはフミに見事一目惚れしおったぞ、押し倒すのも時間の問題じゃな!というか明日結婚式じゃからもう明日の夜には押し倒されとるな!わらわから結婚祝いに赤ちゃんをくれてやるわ!フハハハハ!」


「押し倒……いえ、そうですか……フミは……」


「うむ、若くて賢くてそれなりに顔もイイ、ちょいと自分の世界に入り込みやすい夫を持って、フミは幸せ者じゃ~♪」


(あれ?幸せか、それ……?)とは流石に国王であるアンドレアも神様には言えなかった。 


 こうして下世話ながらも(というか下品)フミの異世界トリップは本人が寝ている間にいろいろ進展した。



   ~~~ 本日の攻略セオリー ~~~


異世界トリップセオリー其の七:「異世界人と結婚する羽目になる」見事クリア。


異世界トリップセオリー其の八:「本人の知らない間に謀略の当事者になる」見事クリア。






 下品なお話になってごめんなさい、フミさん(主人公に謝るんかい)


ということで第2話女神サマ大暴走するの巻。

思いのほか女神様にはハッチャケていただきました。

こんな神様居たら信仰するしかない……。

とりあえずウィリアム氏のピー音規制トークはもっと入れたかったんだけど

想像力が貧弱なので思いつきませんでした。

起承転結の全4話終了を目指してがんばります。


年齢の間違いなおしたぞっ。と。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ