街に行く。パン屋。
▶︎レオン・リヴァイアス
### 第九話
リヴァー=クロスへ
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朝の空気は、村とは少し違っていた。
森の湿り気が薄れ、代わりに人の気配が混じっている。
「……見えてきたぞ」
レオンが言うと、
隣を歩くリオンがぴたりと足を止めた。
「わあ……」
視線の先に広がるのは、街――
リヴァー=クロス。
二本の川が交差する場所に築かれた、小さな街だ。
人口は二百から三百ほど。
都市と呼ぶには小さいが、村よりはずっと賑やかだった。
石造りの建物。
木造の家。
赤レンガの壁に、鉄骨を組み込んだ工房。
「ごちゃごちゃだね!」
リオンが笑う。
「種族ごとに、作りが違うからな」
レオンは歩きながら答えた。
「人間は木が多い。
ドワーフは石と鉄。
龍族は……壊れないこと優先だ」
「なるほど!」
納得したように頷き
リオンは尾を揺らしながら周囲を見回している。
街に入ると、すぐに視線を感じた。
「お、レオンじゃないか」
「今日は弟と一緒か?」
「リオン、大きくなったな!」
声をかけてくるのは、顔なじみばかりだ。
「……相変わらず皆に愛されてるな」
レオンがぼそりと言うと、
「えへへ」
リオンは、少し誇らしげに笑った。
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最初に立ち寄ったのは、街の入口近くのパン屋だった。
「ブレッドさーん!」
リオンが叫ぶより早く、
「はいはい、聞こえてるよ」
店の奥から、恰幅のいい人間の男が顔を出す。
「また来たのか、水色坊主」
「今日はお兄ちゃんと一緒!」
「兄弟仲良しだ、そりゃあいい」
ブレッドはがははっと笑いながら、焼きたてのパンを一つ差し出した。
「ほら。まだ温かいぞ。おじさんからのプレゼントだ」
「ありがとう!」
リオンは目を輝かせる。
「……ちゃんと払う」
レオンが言うと、
「いいっていいって。
子供は元気なことが仕事だ」
そう言って、ブレッドは手を振った。
リオンが夢中でパンを頬張っている間、
レオンはそっと、代金をカウンターに置く。
それに気づいたブレッドは、何も言わずに苦笑した。
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次に向かったのは、鍛冶場だった。
石と鉄の匂いが、空気を満たしている。
「……レンキンさん」
レオンが声をかけると、
「(よく)……来た」
無口なドワーフ、レンキンが振り返る。
「三叉槍の調整を頼みたい」
「(見せろ)」
無言で武器を受け取る。
槍を一目見て、レンキンは短く言った。
「ほう……(丁寧に使い込んでるな)」
「この前、魔獣を倒した」
「刃は問題ない。
(だが柄の芯が少し削れてる)」
レンキンは淡々と説明し、
黙々と作業に入った。
その様子を、リオンは興味深そうに眺めている。
「ねえ、すごいね」
「ああ。
この人がいなきゃ、街は回らない」
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用事を終えた帰り道、
二人は街の外れにある訓練場へ立ち寄った。
「少しだけ、やるか」
「やった!やる!」
立てかけてあった木の棒を二本取り、向かい合う。
カンッカンッ、と乾いた音が響いた。
軽い稽古だ。
本気ではない。
それでも、リオンは楽しそうだった。
「兄ちゃん、強い!」
「まだまだだ」
「えー」
笑い声が、風に混じる。
その光景を、遠くから見ている者がいた。
「……あれが、リヴァイアスの兄弟か」
誰かが呟く。
レオンは気づいていなかった。
今はただ、弟と過ごす時間に集中していた。
この穏やかな日々が、
いつまでも続くと思っていたわけではない。
だが――
この時間を、確かに大切だと感じていた。
リヴァー=クロスは、今日も変わらず賑わっている。
その裏で、
世界が静かに、次の段階へ進みつつあることを、
まだ誰も知らなかった。
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ちなみに尊敬しいて大好きななろう系小説は無職転生です。3期が待ち遠しすぎます。




