弟の死。兄の決意。
第六話
眠れない理由
▶︎ レオン・リヴァイアス
夜だった。
村は眠っている。
風の音と、遠くで鳴く獣の声だけが聞こえた。
レオンは起きていた。
寝台に横になってはいたが、目は閉じていない。
天井を見つめたまま、呼吸だけを繰り返している。
眠れない理由は、分かっていた。
彼は起き上がり、壁に立てかけていた三叉槍を手に取った。
石突きが床に触れ、小さな音を立てる。
重い。
だが、嫌いではない。
水龍の系譜に伝わる武器。
力任せに振るものではなく、考えて使うための形。
レオンは槍を膝の上に置き、両手で握った。
——準亜神。
昼間、父が口にした言葉が、頭の中でよみがえる。
「龍族にはな、そこまで至ったという話がある」
伝承。
噂。
確かな証拠はない。
だが、父は否定しなかった。
「あると信じた者がいた」
それだけで、レオンには十分だった。
もし、本当にそこへ行けるのなら。
もし、力の限界があるのなら。
——もう、迷わなくて済む。
三叉槍を握る手に、力がこもる。
「……俺は」
小さく呟き、言葉を止めた。
その先を口に出すと、戻れなくなる気がした。
⸻
記憶が、勝手に引きずり出される。
あの日も、今日のような昼下がりだった。
空は晴れていて、風も穏やかだった…
▶︎ レオン・リヴァイアス(回想)
「兄ちゃん、行こう」
小さな声が、背中から聞こえた。
振り返ると、弟が立っていた。
リオンではない。
その前にいた弟。
まだ幼く、剣も槍も持てなかった。
「森の奥まで?」
「うん。ちょっとだけ」
レオンは迷った。
本当は、父を呼ぶべきだった。
だが、その時は思ったのだ。
——大丈夫だ。
——俺がいる。
「いいぞ。でも、離れるな」
弟は嬉しそうに頷いた。
森は、静かだった。
魔獣の気配もない。
危険は、何も感じなかった。
だから、油断した。
弟が足を滑らせた時、反応が遅れた。
崖ではない。
深い谷でもない。
ただ、運が悪かった。
弟は倒れ、頭を打った。
「……おい?」
呼びかけても、返事はない。
レオンは抱き上げた。
必死に呼び続けた。
——父を呼べ。
その考えが浮かんだ時には、もう遅かった。
⸻
レオンは、強く目を閉じた。
三叉槍を握る手が、わずかに震えている。
あの時。
力が足りなかったわけではない。
判断を、誤ったのだ。
「俺が……」
声が、掠れる。
自分なら何とかできると思った。
父に頼らなかった。
結果、弟は死んだ。
誰も責めなかった。
父も、母も。
それが、余計につらかった。
「二度と、繰り返さない」
レオンは槍を強く握り直す。
だから、強さが必要だ。
迷わないための力が。
弟のように、
リオンを失わないために。
「俺が、先に行く」
眠れない夜は、まだ続く。
だが、目指す場所だけは、
もう決まっていた。
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ちなみに尊敬しいて大好きななろう系小説は無職転生です。3期が待ち遠しすぎます。




