特別な子。世界の脈動。
リオンのビジュアル画像を作ってみました
第四話
水の名を呼ぶ声
村に朝が訪れるとき、
最初に動き出すのは、森ではなく水だった。
岩を伝い、土を潜り、
人の気配を確かめるように流れを変えながら、
水は静かに集落を巡る。
その中心にある泉は、
龍族とエルフが共に暮らすこの地の要だった。
リオンが生まれてから、
泉の水位は、ほんのわずかに上がっていた。
誰も気づかないほど、数指分。
だが、それは確かに“変化”だった。
⸻
泉の縁に腰を下ろし、
ヴァルド・リヴァイアスは水面を見つめていた。
隻眼の視線は、水の揺らぎだけでなく、
その奥を流れる“気配”を追っている。
「……また、増えているな」
低く呟く。
隣に立つエリシアは、穏やかに微笑んだ。
「あなたの血よ。誇っていいわ」
「そういう問題じゃない」
ヴァルドは短く息を吐く。
彼は戦士だった。
だからこそ、知っている。
力は、祝福である前に、
必ず“何か”を引き寄せる。
⸻
「父さん!」
弾んだ声が、水音を切った。
レオン・リヴァイアスだった。
成人の儀を終えたばかりの青年。
だが、その立ち姿に未熟さはない。
均整の取れた体躯。
肩から背にかけて走る翠と蒼の鱗。
そして、異なる色を宿す両眼。
片方は母譲りの翠。
もう片方は、父と同じ深い海の色。
「鍛錬、終わったよ」
「早いな」
「もう、足りない」
レオンはそう言って、肩をすくめた。
慢心ではない。
自分の到達点を、正確に理解している者の声音だった。
この村で、レオンより強い者はいない。
それは誇張ではなく、事実だった。
⸻
エリシアは腕の中の赤子へ視線を落とした。
リオンは眠っている。
小さな胸が上下し、
淡い水色の髪が、呼吸に合わせて揺れていた。
「ねえ、レオン」
「なに?」
「この子を、どう思う?」
問いは静かだった。
レオンは泉からリオンへと視線を移し、
少しだけ、真剣な表情になる。
「……兄として?」
「戦士として」
その言葉に、レオンは迷わなかった。
「強くなる」
即答だった。
「父さんより?」
「違う」
「母さんより?」
「それも違う」
レオンは少し考え、
静かに続けた。
「たぶん……
俺とは、違う場所に行く」
ヴァルドの眉が、わずかに動く。
「どういう意味だ」
「わからない。
でも――」
レオンは、赤子を見つめたまま言った。
「俺が前に立ち続ける限り、
あいつは、選ばれなくていい」
それは誓いではなく、
願いに近い言葉だった。
⸻
その夜。
リオンは、はじめて目を開けた。
水色の瞳が、闇の中で瞬く。
同時に、
泉の水が、静かに波打った。
誰にも見えない場所で、
龍神の視線が、ほんの一瞬だけ下界に触れる。
――まだだ。
――まだ、始めるな。
そう告げるように。
赤子は何も知らず、
小さく欠伸をした。
兄の背中も、
父の覚悟も、
母の祈りも。
すべてを受け取るには、
まだ、あまりにも幼い。
だが、世界はすでに――
その名を、刻み始めていた。
リオン。
水に愛され、
竜に選ばれ、
森に見守られた名を。
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ちなみに尊敬しいて大好きななろう系小説は無職転生です。3期が待ち遠しすぎます。




