リオンは守る。龍言。
修行パートは個人的に好きなので丁寧に描きます。2〜3話程度お付き合いください。
終わり次第巻きでいきたいな〜って考えてます!
▶︎ レオン・リヴァイアス
### 第二十話
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滝は、変わらず落ちている。
昨日も、今日も。
速さも、音も、何ひとつ違わない。
違うのは、俺だけだ。
滝壺の大岩の上で、俺は目を閉じて坐している。
水が肩を叩き、背を押し、頭を打つ。
だが、もう「耐えている」という感覚はない。
そこに在るだけだ。
水は流れる。
俺も流れる。
その区別がほとんどなくなっている。
呼吸はしている。
だが、息を吸っているとか、吐いているとか、
そういう認識はどこかへ行った。
水龍の身体は、水の中で完成している。
時間は、意味を失っていた。
一分かもしれない。
何時間かもしれない。
何日かもしれない。
確かめたいとは思わない。
確かめるという行為は、意識を戻すということだ。
戻る場所を作った瞬間、境界が生まれる。
俺は、境界を作りたくない。
だが――
胸の奥に、ひとつだけ残っているものがある。
名前だ。
リオン。
それは思考ではない。
感情でもない。
重さだ。
リオンを守る、と決めたときに生まれた、
引き返せない重さ。
弟を失った日の記憶が、沈殿したまま動かない。
声が枯れるまで名前を呼び、
それでも返事が返らなかった、あの日。
――大丈夫だ。
――俺がいる。
あの言葉は、願いじゃない。
誓いでもない。
選択だ。
そして選択には、必ず代償がある。
俺は、その代償から目を逸らさない。
唇が、わずかに動く。
大きく息を吸わない。
声を張らない。
水に溶ける量だけ、音を出す。
舌の位置を確かめ、
喉の奥で音を立て、
最後の一音を、言い切る。
《我が命、我が力を以て
指定した存在を守らんとせよ
――ヴァル=ガルディア》
声は、水に吸われた。
滝の音が消えたわけじゃない。
水量が変わったわけでもない。
だが、一瞬だけ、
水音が“ずれた”。
それだけだ。
光は走らない。
衝撃もない。
身体に力が満ちる感覚もない。
何も起きていないように見える。
だが――
胸の内側で何かが「定まった」。
それは力ではない。
能力でもない。
在り方だ。
守る代わりに引き受ける。
傷も、因果も、負荷も。
その覚悟を言葉が否定しなかった。
水が頭を打つ。
だが今までよりも深く沈む。
ひとつの方向に集められていく。
それを「加護」と呼ぶのかはわからない。
外から見れば確かに祝福だ。
だが俺は知っている。
これは逃げ道を塞ぐ力だ。
守ると決めた瞬間もう戻れなくなる。
それでも構わない。
俺は、立ち上がらない。
滝の中心で、ただ坐し続ける。
水の中で。
水として。
そして、確かに理解した。
この龍言は、
俺がリオンを守ると決めたから、生まれた。
誰かのために使うための言葉じゃない。
世界を救うための力でもない。
ただひとり。
ただ一つ。
守る対象を、間違えないための言葉だ。
滝は、今日も落ち続けている。
だが、俺はもう知っている。
この流れの中で、
俺は止まらない。
守ると決めた限り、
最後まで、流れ切る。
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