何日も。繰り返す。
3〜4話くらいは同じ感じの文章が続きます。流し読みで見てください!
修行パートが終わるといよいよ物語が動きます。ここから駆け足で家族が死にますを
▶︎ レオン・リヴァイアス
### 第十八話
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最初に消えたのは、時間だった。
滝は落ち続けている。昨日も、今も、同じ速度で。
だが「続いている」という感覚だけが、いつの間にか削がれていく。始まりも終わりもない。今という切片すら、どこにも引っかからない。
次に薄れたのは、身体だった。
水が肩を叩く。背を押す。頭を打つ。
それを「外から受けている」と思っているうちは、まだ境界がある。境界がある限り、痛みや快は評価として立ち上がる。
それが、なくなった。
水が当たっているのか。
自分が水の中にあるのか。
その問いは浮かびかけて、形になる前に沈む。
答えはいらない。
滝壺の大岩の上で、坐禅を組む。目を閉じる。
息はしている。だが、呼吸しているという認識は消えていた。胸の上下も、肺が満ちる感覚も、遠い。水龍の身体にとって呼吸は特別である。
水は敵ではない。
母なる大地があるなら、父なる海がある。
俺にとって水は後者に近い。厳格で、冷たく、嘘をつかない。甘やかさはないが、拒まない。
水が俺を叩く。
毎秒どれほどの水量かは分からない。
それでも、姿勢は崩れない。
踏ん張っているわけじゃない。
耐えているわけでもない。
倒れないのが自然な姿勢として、身体がそこに置かれている。
そういうものだ。
そういうものとして、ここにいる。
どれほど経ったのかは分からない。
一分かもしれない。
何年かもしれない。
だが確かめたいとは思わない。確かめるという行為は、戻るという行為だ。戻る場所を意識した瞬間、境界が生まれる。
俺は、境界を作りたくない。
欲しがらない。
竜を。
声を。
印を。
何かを得たと証明できる出来事を。
欲しがらない。
滝はただ流れている。
流れているという事実だけが、ここにある。
だから俺も、ただそこに在る。
暗闇の奥で、微かな揺らぎが生まれる。
光ではない。形でもない。ただ、記憶の縁が擦れる感触。
弟の名前を呼んだ日のこと。
声が乾き、喉がひび割れ、何度呼んでも返事は戻らなかった。
——大丈夫だ。
——俺がいる。
あの言葉が、沈殿したまま浮かび上がる。
後悔していないわけではない。
だが、取り消したいとも思わない。
呼べば守れた命があった。
それでも、あの時の判断が、今の俺を形作っている。
水が頭を打つ。
音が、音でなくなる。
境目が溶ける。
自分と水の区別が、さらに薄れる。
竜は現れない。
声も聞こえない。
拒絶も、肯定もない。
それでいい。
滝は流れ続ける。
そして俺も、ただ――そこに在る。
OVL大賞11




