父の言葉。2人の息子。
風邪ひきてて更新が遅れました。
今回は父ヴァルド視点です。
▶︎ヴァルド・リヴァイアス
### 第十四話
---
龍泉の滝は、まだ見えない。
だが、水の音ははっきりと聞こえていた。低く、重く、絶え間なく続く音だ。地面の下から響いてくるような感覚がある。
岩場の手前で、ヴァルドは足を止めた。
「……ここから先は、静かにしろ」
「うん」
リオンはすぐに頷いた。いつもより声が小さい。
レオンは何も言わず、父の背中を見ている。
ヴァルドは一度、滝の方角へ視線を向け、それからリオンを見下ろした。
「ここはな、龍言を学ぶ場所だ」
「りゅう……ごん?」
「竜の言葉だ」
短く、噛み砕くように言う。
「力を出す呪文じゃない。魔法でもない」
リオンは首を傾げた。
「しゃべるだけ?」
「正しく喋れれば、世界が応える」
それ以上は説明しない。ヴァルドは説明が得意ではなかった。
少し間を置いてから、続ける。
「龍族は、成人すると一つだけ龍言を持つ」
「ひとつだけ?」
「ああ。身体にかかる負荷が大きい」
ヴァルドは自分の胸に、拳を軽く当てた。
「耐えられるのは一つだ。それ以上は壊れる」
リオンは少し怖そうに眉を寄せた。
「じゃあ、お兄ちゃんは……」
「レオンは、これから習得をする」
ふと、ヴァルドはずっと無言でいる息子レオンの方にチラリと視線を落とす。
緊張しているからか、終始無言でいる。
レオンは私に似て口下手なところがあるから、時々何を考えているのかわからない時がある。
妻は口下手な私やレオンの気持ちを察するのがとてもうまい。
そのことに感謝の気持ちが湧きつつ一生頭が上がらないと苦笑した。
滝の音が、わずかに強くなった気がした。
「ねえ、お父さん。龍言はどうやったら使える様になるの?お父さんとお兄ちゃんはこれから何するの?」
なおもリオンの質問攻めは続く
「私は何もしない。ただひたすら見守るだけだ。」
「龍言を習得するには、滝壺に入り、打たれながら瞑想する」
「ずっと?それだけ?」
「終わるまでだ」
「どのくらい?」
「分からん」
ヴァルドは即答した。
「数日で終わる者もいる。数十年かかる者もいる」
「えっ……」
「才能次第だ」
相変わらずレオンは黙って聞いている。表情は変わらない。
リオンは、少し考えてから聞いた。
「……お父さんは、どのくらい?」
ヴァルドは一瞬だけ視線を逸らし、それから答えた。
「4年だ」
「ながっ」
率直な感想だった。
「その間、ここを離れない」
「え?」
「本人と守護者は、龍泉の近くで過ごす」
ヴァルドは地面を軽く踏みしめた。
「離れれば、リンクが薄れる。やり直しになることもある」
「ごはんは?」
「木の実、魚、水」
「おうちには?」
「戻らん」
リオンは思わずレオンを見る。
レオンは小さく頷いた。
「それまでお母さんはどうするの?」
「一切会わん」
ヴァルドの声は低かった。
「龍泉は龍族だけの場所だ。他の種族は入れん。理由はない。ただの決まりだ」
「……じゃあ」
リオンは言いかけて、口を閉じた。
ヴァルドはそれを見逃さない。
「お前は、まだ成人していない」
「うん」
「本来なら、ここにいること自体が例外だ」
リオンは、少しだけ背筋を伸ばした。
「でも、見ておけ」
ヴァルドはそう言った。
「レオンが、何を背負って、どんな言葉を選ぶのか」
滝の音が、さらに近づいている。
「龍言は、教わるものじゃない」
「じゃあ、どうするの?」
「自分の中にいる竜と向き合う」
ヴァルドは滝の方角を見据えた。
「竜が言葉を授けた時、それが龍言だ」
リオンは、何も言わなかった。
ただ、滝の音を聞いている。
レオンは一歩、前に出た。
「……父さん」
「何だ」
「準亜神の話をしたな」
「ああ」
「それが、許可だな」
ヴァルドは一度だけ頷いた。
「止める理由は、もうない」
その言葉を聞いて、リオンは初めて理解した。
兄は、もう引き返さない。
滝は、まだ見えない。
だが、三人とも分かっていた。
ここから先は、戻る道ではない。
---
いいねとお気に入りって機能はあるのかな?
あれば多分それが評価基準になるので是非お願いします!
ちなみに尊敬しいて大好きななろう系小説は無職転生です。3期が待ち遠しすぎます。




