母。家族。
▶︎レオン・リヴァイアス
### 第十二話
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家に着く頃には、空はすでに夕方の色に変わっていた。低い雲が流れ、森の影が長く伸びている。石造りの家の前に立つと、中から火の気配が伝わってきた。
「母さん、帰った」
そう声をかけるより早く、
「ただいまーー!」
リオンが勢いよく家へ飛び込んでいく。今日は俺の三叉槍の手入れを手伝えると決まっていて、それが嬉しくて仕方ないのだろう。後ろ姿を見送りながら、レオンは小さく息を吐いた。
少し遅れて扉が開く。
「おかえりなさい」
エリシア・リヴァイアスが微笑んだ。翠の髪はまとめられ、袖をまくった腕には水を扱ったあとの名残がある。
「ただいま!」
「ちゃんと靴、揃えて」
「はーい」
いつものやり取りだった。
家の中は外よりも少し暖かく、石壁に反射する火の揺らぎがゆっくりと視界に残る。エリシアは一度レオンを見てから、何気ない調子で尋ねた。
「街はどうだった?」
「いつも通りだ」
「そう」
それ以上は聞かず、視線をレオンの手元へ落とす。
「……槍、もう戻ってきたのね」
「ああ。レンキンのじいさんが暇してた。今日中に調整が終わった」
「重くなってない?」
「問題ない」
エリシアはそれだけ聞くと、軽く頷いた。
「ならいいわ」
食事の準備を続けながら、ぽつりと言う。
「今日はね、泉の水が少し濁ってたの」
「そうなのか?」
「ええ。リオンがいない日は、よくそうなるのよ」
リオンはよく分からないまま、こくりと頷く。
「僕、すごい?」
「すごいわよ」
即答だった。
「でもね」
エリシアは屈んで、リオンの目線に合わせる。
「すごいからって、急ぐ必要はないの」
「うん?」
「リオンはリオンでいい。それだけ覚えていればいいわ」
「……うん!わかったー」
その様子を、レオンは黙って見ていた。エリシアが立ち上がり、今度はレオンを見る。
「レオン」
「なんだ」
「無理はしていない?」
一瞬、間が空いた。
「……していない」
嘘ではなかった。エリシアはそれ以上踏み込まず、静かに言う。
「リオンは、あなたの背中を見て育つのよ」
「分かっている」
少し間を置いて、レオンは続けた。
「……リオンは、絶対に守る」
エリシアは一瞬だけ目を瞬かせ、それから穏やかに微笑んだ。
「ええ。知ってるわ。頼りにしてるわ、お兄ちゃん」
その後、ヴァルドも戻り、家の中に人の気配が増える。居間は自然と賑やかになり、食卓の準備が進んでいった。
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ちなみに尊敬しいて大好きななろう系小説は無職転生です。3期が待ち遠しすぎます。




