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5話

百合です!

「また明日ー」

「またね」

校門の前、みずきの元気な声に私は笑顔を作り静かに返すして、みずき達に背を向けて自分の家に向かって歩き出す。



「ただいま」

私は扉を開けながら廊下へと視線を向ける。

すると黒い服を身に着けた母さんが、廊下と二階を行き来して何かの用意をしていた。

「おかえり、リビングにご飯あるから食べなさい。1時半には出発するわよ」

母さんはバックに何かを入れ、私と顔を合わせずに説明する。

「わかった」

私は2階に行くお母さんに向けて返事をして、リビングへと向かう。

母さんの言うとうり薄橙色の机の上に、お皿に入ったパスタが一皿置かれていた。

私はリュックを扉の左にあるソファーの上に放り投げ、そのまま椅子に座っり箸を握り言う。

「いただきます」



「今日学校どうだった?」

母さんの優しく明るい声が助手席から聞こえた。

私は窓越しに見える直ぐに変わる景色を眺めながら答える。

「楽しかったよ」

「そお、よかったわね」

そこで私達の会話は途切れた。



車に乗ってから50分くらいの時間が経った頃、車の扉が開かれた。

「着いたぞ」

父さんの感情の感じない声の合図で私は開かれた扉から降りる。

私は地に足をつける周辺を見渡す。

周辺には住宅はなく、道路を囲むように木々が生い茂っている。

私が周辺を眺めていると父さんの声が後ろの方から聞こえた。

「行くぞー」

「はーい」

私はいつもより少し声量を上げ返事をして、父さんの声の方に駆け寄る。

その間に見えたのは2つの建物だった。

一つは白い壁に煙突がついており、その建物につながる渡り廊下の先に、木造でできた建物が並んでいた。

私達は木造の建物の方にある両開きのドアから入って行った。



中に入り、少しの廊下を進む一つの立て札を見つけた。

(遠江さま)

父さんが閉じられている横開きのドアをゆっくりと開くと、既にお坊さんが木魚を叩き、何かを唱えている。

私は父さんについて行き、ドア近くの椅子に座る。

周りを見ていると子供連れの人がチラホラいた。



暫く何も考えずに座っていたら、尿意が私を襲ってきた。

私は隣に座るお母さんに小声で聞く。

「お母さん、トイレ言ってきていい?」

「良いわよ。場所は─」


お母さんに場所を聞き私はトイレの場所へ行く。

トイレは葬式所とは別々になっており、駐車場の前に少し濁った白い壁に、赤と青のシルエットが見える。

私は赤のシルエットが描かれた左の扉に入り、済ました。



トイレを終わらせ手を洗い、ハンカチで手を拭きながら外に出ると、駐車場を覆っている白い塀から自転車のタイヤが見えた。

瞬間、自転車に乗った人の顔が見えて私はびっくりした。

「澄香!?」

私の声で気付いたのか、澄香はこちらを見て一瞬固まった後、自転車から降りてこちらにダッシュで寄ってきた。

「ゆずちゃん!なんでここに?」

「あんたこそ…、ここ車で50分は掛かるのよ」

私は行き先に知ってる人がいる事に嬉しさを感じがそれを悟られないように呆れた感じの声で話す。

「私はね、この先の山の上で夜空を撮るために」

澄香そう言いながら自転車に走りだす。

澄香は少しの間白い塀に姿を隠し、直ぐに何かを持って私の元に戻ってきた。

「こ、これで夜景を撮るために」

澄香は息を立て直しながら、ドヤ顔で掲げてきたのはゴツゴツしたカメラだった。

(ボールを持ってきた犬みたい)

飼ってもいない犬と澄香を似せて見てしまい、くすりと笑ってしまう。

途端、澄香は突き出していたカメラを引っ込め胸元に両手で押さえ込み、顔をうつむかせながら言ってくる。

「えっと、変、だよ、ね」

「え?」

私は言われると思っていなかった言葉に戸惑う。

(自転車で、何時間もここに来るのは…変だね)

私は少し考えた後、私の目の前でうつむいている澄香に冷たくい放つ。

「うん。変だね」

「そ、そうだよね。ははは」

澄香は顔を伏せたまま、両手を遊ばせながら明るい声で言っていている。

そんな澄香を見て私の頭の中は不快感と心配で埋め尽くされた。

「なにそれ」

「え?」

私の言葉に澄香は顔を上げ私の顔を凝視してくる。

「趣味をバカにされて笑ってんの気持ち悪い」

私は澄香の肩を両手で掴み戸惑う澄香に続けて言う。

「私の変に言い返して!」

「あ…いや、でも」

澄香は目を泳がせ言い返して来ない。

「さあ!早く!」

そんな私の大きな声に澄香は涙を浮かべながらも口を開いた。

「た、旅は変じゃないし…、いい景色を見たり、撮ったりするのは楽しいし!」

徐々に大きくなっていく澄香の声を聞き、私はなぜか凄く嬉しくなり、澄香の腰を右手で私に寄せそのまま抱きしめてしまう。

「ひょえっ」

思ったよりもすんなりと抱かれる澄香の左手の頭をワシャワシャと撫でて呟く。

「言えたじゃん」



撫でるのをやめた私は澄香が離れるのを待っていた。

「澄香〜」

私は澄香の肩をポンポンと叩き、離れないかと提案するように名前を呼ぶ。

だが澄香は片手で私の服を握りしめ私の体から離れようとしない。

私の頭に後悔がよぎってきたそんな時、後の方から母さんの声が聞こえた。

「母さん達こっちに行くけどー」

私は慌てて澄香の肩に両手を乗せて、押し返す。

すると直ぐに澄香は私の体から離れた。

そのまま私は上半身だけで振り返り母さんに返事をする。

「わかったー」

お母さんは渡り廊下を進み、煙突のある建物に入って行く。

私が澄香に向き直ると、澄香は直ぐに私に背を向けた。

澄香は背を向けたまま裏返った声で言う。

「私、もう行かないと」

「そう、バイバイ」

私はそう言って手を振る。

澄香は振り返らずに自転車に走って行く。

私は澄香の後ろ姿を眺め、ふと胸元に手を置くと湿った感触があった。

「うぇっ!?」

私は反射的に胸元から手を離す。

黒色の服には、大きなシミができており、抱きついた事に少し後悔をしてしまう。

澄香が自転車に乗るのを見て、私はお母さんが入って行った煙突のある建物に憂鬱な足取りで向かう。

(これどう説明しよう…)





読んでくださりありがとうございます。

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