表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/11

マスター権限の発見



 翌日、大学には行かず、再び一人部屋でアプリと向き合っていた。


 昨日、マスター権限の一部を試してみて、その威力に驚いた。


 でも、まだ全ての機能を理解できていない。


 もっと深く、このアプリを知る必要がある。


 スマホを手に取り、マスター権限メニューを開く。


 そこには、まだ試していない機能がいくつもあった。


「時間操作」


 これは一体何だ?


 タップしてみると、詳細が表示された。


『時間を限定的に巻き戻す、または停止することができます。ただし、使用には大量のポイントが必要です』


 ポイント?


 画面の右上を見ると、「所持ポイント:1000」と表示されていた。


 これは何のポイントだ?


 ヘルプを確認してみる。


『ポイントは、アプリの各種機能を使用するために必要です。毎日自動的に回復します。また、特定の条件を満たすことで追加ポイントを獲得できます』


 なるほど。


 つまり、使いすぎるとポイントが足りなくなるということか。


 無限に使えるわけではないんだ。


 時間操作の必要ポイントを確認すると、「1分巻き戻し:500ポイント」「1分停止:800ポイント」と表示されていた。


 高い。


 これは、本当に必要な時にしか使えないな。


*  *  *


 次に、「スキル付与」をもっと詳しく見てみる。


 昨日は料理スキルを試したが、他にも様々なスキルがある。


 格闘術、交渉術、言語、楽器、運動……。


 そして、その中に「特殊スキル」というカテゴリがあった。


 タップしてみると。


「カリスマ」「直感」「危機察知」「魅了」……。


 普通のスキルとは違う、超常的なスキルが並んでいる。


 これは……すごい。


 試しに「直感 Lv5」を自分に付与してみる。


 決定ボタンを押すと、いつものように頭の中に情報が流れ込んでくる。


 でも、今回は知識というよりも、感覚が研ぎ澄まされていく感じだ。


 目を閉じてみる。


 すると、周囲の気配が分かる。


 隣の部屋で誰かが動いている。下の階でテレビがついている。外で車が通り過ぎていく。


 全てが、まるで見えているかのように分かる。


「これは……」


 驚異的な能力だ。


 このスキルがあれば、危険を事前に察知できるかもしれない。


*  *  *


 さらに、「ログ閲覧」という機能も試してみた。


 これは、過去の出来事を記録として見ることができる機能らしい。


 試しに、昨日の自分の行動を見てみる。


 すると、画面に昨日の俺の行動が、まるで動画のように再生された。


 朝起きて、アプリを試して、料理を作って……。


 全てが記録されている。


「すごい……」


 これは便利だ。


 忘れてしまったことも、これで確認できる。


 試しに、一週間前の出来事を見てみる。


 あの日、俺は何をしていたっけ?


 画面に映し出されたのは、大学の講義室にいる俺だった。


 講義を受けて、ノートを取って。


 ああ、そうだった。この日は情報工学の試験があったんだ。


 記憶が蘇ってくる。


 この機能、思い出を振り返るのにも使えるな。


*  *  *


 一通り機能を確認し終えて、俺は改めて思った。


 このアプリは、本当に何でもできる。


 ステータスを変えられる。


 スキルを付与できる。


 イベントを発生させられる。


 アイテムを生成できる。


 時間を操作できる。


 他人の情報を見られる。


 過去を振り返れる。


 これはもう、神の力と言っても過言ではない。


 でも、なぜこんなアプリが存在するのか。


 そして、なぜ俺のところに来たのか。


 アプリの説明文を改めて読んでみる。


『Reality Editor - 現実を編集するアプリ』


『本アプリは、異次元技術を用いて開発された実験的プロジェクトです』


 異次元技術?


 何だそれ。


 さらに下を読むと。


『マスター権限:時間操作、大規模イベント発生、無制限のアイテム生成、現実改変などの高度な機能を使用可能』


 マスター権限は、一般ユーザー版にはない強力な機能が使える特別な権限なんだ。


 でも、なぜ自分にマスター権限があるのか。


 説明文には、その理由は書かれていない。


「これって……大丈夫なのか?」


 不安が湧いてくる。


 もしかして、この権限が取り消されたりしないだろうか。


 あるいは、製作者側から連絡が来て、アカウント停止とか。


 でも、今のところそういう兆候はない。


 むしろ、アプリは正常に動いている。


 だったら、使えるうちに使った方がいいんじゃないか。


 そう思った。


*  *  *


 夕方になり、コンビニでバイトのシフトがあった。


 アパートを出て、バイト先に向かう。


 道中、試しにアプリで通行人のステータスを見てみる。


 すれ違うサラリーマン。


```

【山田 太郎】

年齢:35歳

職業:会社員

身体能力:48 / 100

知能:71 / 100

状態:疲労・ストレス

```


 疲れてそうだな。


 次に、ジョギングしている女性。


```

【鈴木 美咲】

年齢:28歳

職業:OL

身体能力:76 / 100

魅力:82 / 100

状態:健康

```


 身体能力高い。運動してるからか。


 こうやって見ていると、人それぞれ色々な数値があるんだなと分かる。


 面白い。


 でも、やっぱりこれってプライバシーの侵害だよな。


 罪悪感を感じながらも、好奇心が勝ってしまう。


*  *  *


 バイト先に到着し、制服に着替える。


 今日も普通にバイトをこなす。


 でも、ふと思った。


 このアプリの力を使えば、バイトももっと楽にできるんじゃないか?


 試しに、自分に「接客スキル Lv7」を付与してみる。


 ポイントを消費して、スキルを付与。


 すると、接客に関する知識と技術が、頭の中に流れ込んできた。


 お客様への声かけのタイミング、商品の陳列の仕方、クレーム対応の方法……。


 全てが自然と分かる。


 実際に接客してみると、驚くほどスムーズだった。


 お客様が何を求めているのか、直感的に分かる。


 適切なタイミングで声をかけ、的確に案内する。


「ありがとう、助かったよ」


 お客様から感謝された。


 嬉しい。


 こんなに接客が楽しいと思ったのは初めてだ。


 バイトが終わり、店長に声をかけられた。


「橘くん、今日すごく良かったよ。お客さんからの評判も良かった」


「ありがとうございます」


「このまま頑張ってね。もしかしたら、時給上げられるかもしれないから」


「本当ですか!」


 時給アップ。


 それは嬉しい。


 アプリのおかげだ。


 本当に、このアプリは俺の人生を変えてくれている。


*  *  *


 家に帰り、ベッドに横になる。


 今日も色々と試してみて、マスター権限の凄さを実感した。


 でも、同時に思った。


 この力を、どう使うべきか。


 ただ自分のために使うのか。


 それとも、他人のためにも使うのか。


 俺は、基本的には善人だと思っている。


 困っている人がいたら、助けたいと思う。


 でも、それと同時に、自分の利益も大事だ。


 バランスが難しい。


 まあ、今はまだ考える必要はないか。


 まずは自分を変えることに集中しよう。


 そして、もっとこのアプリを使いこなせるようになろう。


 それから、どう使うかを考えればいい。


 そう決めて、俺は目を閉じた。


 明日は、もっと大胆なことをしてみよう。


 自分自身を、劇的に変えてみよう。


 マスター権限の力を使って。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ