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世界樹の森、守ります。  作者: 杉本 雨
第3章 それぞれの想い

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42 救済

 

 世界樹の森の北側に店がある。

【雪ノ花】森に面したノルディア帝国から冷たい風が入り込む。

 森の恵を加工した様々な商品は高級志向の商人だけでなく、近頃では貴族も多く訪れるようになっていた。



 色々とすったもんだがあってしばらくの時が経過した。

 やっと私も平穏な生活に戻る……と思っていたのだが、後始末が多くてとんでもなく仕事が増えてしまった。


 まずは、前管理人イーリスの残した遺産、無駄に作られた城の中身の整理と処分だ。そしてイーリスが贈収賄を繰り返していた西の国々。これが実に面倒くさい。

 それから滅びの呪いが解け本来の力を戻しつつある世界樹じじさまのメンテナンスと、この森の霊脈となるウンディーネ様の川と森の境界を整えて…………、


 って、あー! もぅ! 仕事が多すぎる!


 さらにモフモフフェンリルが

「我の巣を作れ!」

 などと謎なことを言いにやって来た。

「ご自分でどうぞ」

「そなたは我に恩があるだろう?快適な巣の提供くらいは当然ではないか? 古竜のじじいにも差し入れとやらをしているではないか。我もこの森の神獣ぞ」


 恩など受けた覚えはないし、現在、忙しすぎて対応出来ないので無視していたら私の管理小屋に住み着くようになってしまった。



 お店の方もフリーンに任せきりともいうわけにもいかないということで、今日は久々に店で働いていると、蒼牙の森の管理人であるエリスが来てくれた。




「イーリスちゃんは私が預かることにしました」

「え、どういうこと?」

「クラウス殿下から頼まれまして。本来彼女の罪は死罪に値しますが、彼女は過去の聖女様と皇帝の子の血を引いているということで生かされることになったのです」


 なるほど、考えたな。さすがクラウス様だ。


 生かすと言ってもさすがに王侯貴族の一員にしてしまうと争いの火種になりかねないから苦肉の策だろうが、監視をつけて森から出られないように隠してしまうのは一番穏便な措置だろう。



 でも、エリスは近くの村の方々とも交流しているし、いずれ彼女の罪が許される日が来たら恋をすることも出来るかもしれない。



「呪いの血などではなく、この国を救った聖女様の清き血を繋いで欲しいと私は思っています」


 エリスは良い子だ。めんどくさいから処刑しろと言った私に声がかからなかったわけだ。


「でもイーリスはもうなんの力もないただの女の子よ? 大丈夫?」

「はい、わかっています。でもなんの力もなくても出来ることはいくらでもありますので、沢山働いて貰おうと思います」


「そう……エリスは優しいね。大変だろうけどよろしくね。彼女のわがままに困ったらクラウス様に返しちゃえばいいんじゃない?」

「そうですね。クラウス殿下には頼らせて頂こうと思ってます」

 エリスのイタズラな笑顔の奥に何かを感じた。


 え、ま、まさか。

「えっと、エリスってその……クラウス様のこと?」


 ポっ! とエリスの頬に熱が灯る。

「と、とんでもない! 分不相応にもほどがあります」


 あらあらまあまあ……

「そんな事ないんじゃない? エリスだって神に選ばれし森の管理人でしょう」

 若いっていいわねーと笑って応援…………


 …………あ! ちょっと待って! フッラもクラウス様のこと好きじゃなかったっけ?



 まぁいいかー。恋するのは自由だしね。



 イーリスもいつか目立たなくても平凡でも、誰かに恋して相手からも愛してもらえる日が来るといいねぇ。


 皇女和宮と将軍家茂のように……





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