34 白銀の花
気が付くと3匹のモフモフの顔があった。幸せ……
「大丈夫? シルヴァヌス様が洞窟から出してくれたよ」
小さな猫のフリーンが心配そうに肉球をペタペタしてくれる。幸せ……
私の管理小屋まで運んでくれたのか。
服がヨレっとしている気がするのは、フェンリルあたりが雑に咥えたのだろう。まぁ運んでくれただけでも感謝しておくとする。
「私、死んだわけじゃなかったのねー」
「だから言ったであろう」
いや……無傷とは言えないと思うんですけど?
肉体は無事だが、直接死者の残留思念に触れてさすがに精神的疲労感がすごい。
「フェンリルさん一緒に寝ましょう」
「なぜだっ!」
「ペットをモフると血圧も安定して心が落ち着くんですって」
「だれがペットだっ!」
ふんっ! とわざと鼻を鳴らしてベッドの下に丸くなった。
まったく素直じゃない。
魔法陣が呪いになっていた。
帰ることも出来ず、消えることも出来ず、ただあの場所にとどまり続けた思念が強すぎて呪いに転じたのかもしれない。
意識したわけではないが、私の力が彼女の残留思念を通して記憶を視せたのだろう。
ただ、あまりにも現実味のない話に、ふわふわと夢を見ていた感覚だ。あれは本当なのだろうか。
私が視たものが本当なら、帝国には確かに聖女が居た。だが、クラウス様はいないと言った。私に嘘をつく理由はなんだろう。
それに結局聖女イーリスが前の世界樹の森の管理人ならば、聖女チカコの子孫ということになるのだろうか。
だから代わりに帝国に復讐をしている? なぜ今更。
シルバが彼女をこの森の管理人に据えたのも聖女の子孫だからか?
シルバは洞窟の呪いをイーリスに解かせようとしたのか!?
返って謎が増えてしまった気がするがどうにも頭が回らない。
ベッドの下に手を伸ばし、絹のモフモフを撫でながら目を閉じた。
明日考えよう……
****
「その花こないだもらったやつ?」
「そうだよ、増やせないかと思ってね」
夕べは早くからぐっすり眠ってしまったせいで、朝早く目が覚めた。
気分転換に、先日クラウス様からもらった白銀の花の鉢植えを管理小屋の庭に地植えしてみようと思う。
役にも立たないのにモフモフが3匹一緒に庭に出て走り回っている。フッラとフリーンは人型をとれるのに、手伝いたくないという無言の主張だろうか。
「寒い所に植えた方が育つと思う?」
ノルディアにしか咲かない花なら寒い所を好む植物だろうとは思うが、目の届く所に植えた方が安心できるんだよなー。
「フリーン、このお花どこかで見たことあるね?」
「そうなの? フッラは知ってるの? ノルディアの皇宮じゃなくて?」
「うーん。珍しい形だからなんとなく覚えてるだけ」
「へぇー、フリーンも見覚えあるの?」
「うーん。たしかにどっかで見た気がする」
「じゃあノルディアじゃなくても咲いてるところがあるのかもね、探せばこの森にもあったりしてね」
「あっ! わかった。古竜様の居た山じゃない?」
「おお。そういえば古竜の爺さんとは随分会ってないな。別に会いたくもないがな」
あー、フェンリルさんがこの森に住んでた頃は知り合いだったんだっけ。約200年近く振りというわけか。時間感覚イカれてるな。
「どうせ古竜様のところに、差し入れ持っていくし、お花探してみようか」
特に意味はないが、最近頭を悩ませる事が多く昨日も、殺伐とした気分になってしまったので、お花を探すなんて平和なことをしてみてもいいかもしれない。
「じゃあ、お弁当作ってみんなで南のお山までお花を探しにいこーう!」
「「おー!」」
「いや、我に乗れば一瞬で着くぞ?」
うるさいなー。




