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世界樹の森、守ります。  作者: 杉本 雨
第2章 帝都編

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28 崩壊の謎

 

 蒼牙の森に来た本題からは外れてしまったが、解けないと、見て見ぬふりをして胸の奥に隠していた、別の謎の欠片に偶然ぶつかってしまった。これを無視することはできない。


「フェンリルさんが知ってることを教えてください!」


「知ってることと言われてもなぁ。ずいぶん前のことで……」

 フェンリルがめんどくさそうに体を起こして話し出す。


 ――世界樹の森を守る存在だったフェンリルは、100年だか200年前のある夜、巣にしていた洞窟で森を滅ぼす魔法陣が起動されたと森の神シルバに呼ばれ、すぐに洞窟に戻った。だが、魔法陣を起動させたと思われる女は瘴気の中心ですでに事切れており、近くに赤子がいたそうだ。かろうじて息のあったその赤子を咥え、急いで洞窟を出て封印した。その女を追ってきたと思われる100人ほどの人間は洞窟を見付けられなかったようで通り過ぎて湖周辺で他の魔物たちと戦闘になっていたのを見付け、フェンリルが全て湖に沈めたらしい――



「全員殺しちゃったの?……」

 思わず私が口を挟むが

 黙ってきいていたクラウス様も眉間にしっかりと皺を刻んでいる。


「当然だろう、武装した騎士が無断で神聖な森に攻め込んできたのだぞ、生かしておくわけがないだろう」


「……そう、ですよね」

 まぁそれもそうか。禁忌を破ったのは人間の方だものな。


「ですが、騎士というのは間違いありませんか?」


 黙って聞いていたクラウス様が考え込みながら突然話に入ってきた。


「いえね、100人といえば、騎士団としてはさほど多い人数ではありませんが、ひとりの女性と赤子の追っ手としてはおかしくないでしょうか。それにたった100人とはいえ、それだけの騎士団が壊滅させられていれば何らかの記述が残されているはずですが私は知りません」

「失礼ですが、クラウス様がご存知ない可能性は……」

「絶対ないとは言いませんが私はこれでも皇室で育ちましたのでこの国に関する知識はそれなりにあります」


 フレンドリーに接してくれているので忘れがちだがこの国の皇弟だ、帝国の歴史書の類いは全て目を通しているだろう。


「それでは、他の国の方々という可能性が高いですかね?」

「そうですね、そう考えるのが妥当かと思われます。それにしても、世界樹の森に滅びの魔法陣なんて物騒ですね? かなり昔の話のようですし、トワさんが管理人となられているので帝国としては安心ですが」


 あ。フェンリルとの話に夢中になって、自らバラしてしまった……


「ハハハハハ……ここだけの話なのですが、世界樹(うち)の森は崩壊寸前だったんですよねー。あ、でもでも、もぅ大丈夫ですよ!もう帝国にご迷惑お掛けすることもありませんし、間違ってもこの世界を滅亡の淵に追い込むような事態にはしませんので」

 実際、良い方向に向かっているしバレてしまったものは仕方あるまい。


「やはりトワさんはさすがですね」


 大した事してませんけどね......


「ところでフェンリルさん、その助け出した赤ちゃんはどうしたんですか? まさか、一緒に湖に……」

「バカなことを言うな。湖に沈めるくらいなら最初から助け出したりはせんわ」


 ごもっともです。


「我が育てることも出来ないし、その辺に捨て置けばすぐに死にそうだったからな、その当時の管理人に預けたわ。その後のことは知らん」

「え。じゃあ、管理人さんが森で育てたのかしら?」

「いや、当時の管理人は雄でな、人間にしては歳も重ねた者だったから、他の人間に任せるとか言っておったぞ」


 良かった。どこの誰の子供か知らないがあんな森の中では人間らしく育つのは難しいだろう。しかも高齢の男性が育てるなら尚更だ。森の外で幸せに生きてくれたのならフェンリルが助け出した甲斐もある。


 フェンリルが知っているのはここまでだそうだ。繋がりそうで繋がらないもどかしさはあるが、この件はあとで考えよう。


「本来の目的から大きく外れてしまい申し訳ありませんでした。昔の話より、今のノルディアの事に話を戻しましょう」




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