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世界樹の森、守ります。  作者: 杉本 雨
第2章 帝都編

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27 うちのフェンリル

 

 状況を聞けば聞くほど疑問がわいてくる。


 エリスとフェンリルの話をまとめると、ある日突然、滅紫色(けしむらさき)の靄が森の入口付近で発生し、恐らくエリスはそれを吸い込んで倒れた。それと時期を同じくして森の獣たちが異常行動を繰り返すようになった。


「エリスは瘴気に耐性はないの?」

 先ほどクラウス様たちが倒れた時、エリスはなんの影響も受けていない...


「いえ……この森で自然発生する瘴気には耐性がある...はずなんですけど。何しろ今まで瘴気に出くわしたことがないので確かでは...」


 ハッキリしない言い様にフリーンがまたイライラしている。


「それはそうですよね、いくら森の中でも本来瘴気なんてそうあちこちで湧くものでもないでしょうから」


 クラウス様が柔らかくフォローしてくれたが。


 でも、そうなのか……瘴気ってそんなにホイホイ湧いてくるものじゃないなら、――世界樹の森では強烈なのが湧いてて滅びそうでした――なんて言わない方が良さそうだ。


「確かじゃないとはいえ、実際さっきは平気だったよね? エリスもおかしいと思ってるんじゃないの?」

「あ、あの、はい……確信とかあるわけじゃないんですけど、私や村の方々が倒れた原因は森の瘴気ではないと……思います。」

「村の人間たちを危険に晒したのはあなたのせいでもあるわよ」


 うわぁー、フリーン怖いって!


「いやいや、エリスさんのせいではなく、他の誰かが仕組んだことだとしたら防ぎようはなかったのではないですか」


 クラウス様ありがとう〜。

 私はまたキッ! とフリーンを睨んで黙らせたが、エリスが完全にフリーンにビビってしまった。


「色々なことが矛盾してると思う。だからエリスは気にしなくて良いから、これからの事を考えよう。あの入口付近の土壌の瘴気ってなんとかできる?」


 フリーンのせいで妙な空気になったので話の方向性を変える。

 原因より目の前の対策が先だ。


「はい。あれは問題ありません。私でも浄化できますし、他にもあのような土がないか森の中を全て調べて獣たちにも話を聞きに行ってみます」

「ですが、クラウス様、他の森でも土の下に瘴気が残っている可能性がありますね」


 この森の瘴気は聖女が浄化したはずだが、残っていたか、また新たに湧いてきたのか。人々の為に作った聖水も効果はなかったようだし、浄化の力が弱い聖女なのかもしれないし、本当に偽物なのかもしれない。


「私もそれを考えていました。管理人のいる森はともかく、他の森はもう一度調べ直しましょう」



「他の森はクラウス様に任せるとして、エリスは困ったことがあったらそこのフェンリルさんに相談するといいよ!」


「ん?なぜ我なのだ?」

 おなかいっぱいになって床でうとうとしていたフェンリルが重々しく顎だけあげた。

「だって、エリスが居ない間この森まもってくれてたんですよね? この森の守り神みたいなものでしょう?」

「何を言っておる。我はたまたま最近この森に居着いただけだ。我の巣は世界樹の森にある」


 え...

 私とフッラとフリーンが固まる。


「昔はいたけど、今世界樹の森にフェンリルはいないと聞きましたよ。」

「誰に聞いたか知らんが、昔使っていた巣が使えなくなってな、せっかくだからほかの大陸も見てみようと旅にでていたのだ」


 こんなところで世界樹(うち)の森のフェンリルに出会えるとは。


「古竜様にききました。私は新しい管理人ですので」

「ほぅ、なるほど。お前たちの力はあの森の力か。ならば納得だな」

「フェンリルさんの巣はどうして使えなくなったのですか?場所を教えて頂ければ見てきましょうか?」

「あぁ、100年か200年くらい前に人間が追っ手に追われて我の洞窟に逃げ込んだようでな、そこで滅びの魔法陣を起動させたのだ。その時我は狩りに出ていたのだが神に呼ばれて洞窟に戻り、巣ごと封印した。全く迷惑な話しよ」


 私は俯き、沈黙してフェンリルの話を頭の中で反芻した。

 ……これだ。なにかが繋がる。

 ずっと霧の中に沈んで忘れかけていたなにかの輪郭が形を成しはじめた気がした。


「フェンリルさん、100年ですか、200年ですか?」

「ふむ……そんな細かいことまでは覚えてないぞ」


 いや、100年単位は細かくないが、古竜といい世界樹のじじさまといい、長命種の感覚とはそうなのだろう。私だって、10年くらい前の話なんて10年前だったか11年前だったかなどという細かい事は覚えていないことも多い。

 だが、世界樹の森が崩壊する原因は200年くらい前?、正確な年月は誰もわからなそうだが、とにかく随分昔に何かがあったことだけは確かだろう。ただ、このフェンリルの話が謎の核心に近いのか遠いのか……


「もしかして、巣にしていた洞窟って森の北側の入口よりの場所にありますか?」

「おぅ、そうだぞ。あの森の中では冬が長い場所で、水場も近くて気に入っていたのだがな、我の力ではあの滅びの魔法は消すことができなかったから仕方がなく封印したのだ。あのままでは森が危なかったからな」


 前に私が瘴気が濃すぎて近寄れずに、めんどくさいから離れたところから結界で塞いだ洞窟ではないだろうか。

 でもそれなら...


「思い当たる洞窟があるのですけど、封印なんてされていませんでしたよ、森を滅ぼす濃い瘴気が立ち込めて近寄れませんでしたから。ちなみに近くの湖も瘴気垂れ流し状態でしたが? どういうことですか?」

「そんなもん、知らん! だが、そんなはずはない、我は確実に封印したからな。その証拠にまだこの世界は存在しているだろう」


 なるほど……役に立たん!


「では、知ってることを詳しく教えてください」





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