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世界樹の森、守ります。  作者: 杉本 雨
第2章 帝都編

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25 森の異変

 

 密生した針葉の木々が防御柵となって森の内部を隠している。ここが蒼牙の森と呼ばれ、エリスが森の管理人になっているのはあらゆる獣や魔物が多く住むからだ。生態系をうまく維持しているのはエリスの能力のおかげだろう。


 エリスを先頭に蒼牙の森の入口をくぐると

 風の音と共に重い空気が呼吸を圧迫してきた。

 エリスが立ち止まる。

 さっきまでのオドオドした様子から雰囲気が変わったのがわかり私たちも辺りを見渡す。


「エリス、瘴気が湧いたのはどの辺りなの?」

「それが、森の入口付近なんです。」

 私とフッラ、フリーンが首を傾げる。

 瘴気なんて森の奥や水場などに湧くものという先入観があったからだ。


「トワ、あの辺なんか変じゃない?」

 フッラが鼻をクンクンさせて入口から少し入った辺りを指差す。よく見るとそこだけ下草が生えていない一帯があった。


 黒ずんだ土をエリスが少し掘り起こした途端、地面の隙間から冷たく濡れた空気が立ちのぼる。

「今なにか、変な...」

 私が問いかけるより早く背後で微かな咳が聞こえた。振り返るとクラウス様たち3人が胸元を押さえて俯き肩を震わせていた。

 膝ががくりと落ち、私は慌てて駆け寄る。

 顔色はみるみる薄くなりのどの奥から漏れる息は掠れている。


 なんで突然?

 救急車?...は、ないからえっと誰か呼んでくる?

 どうしよう、どうしたらいいんだろう。

「トワ!土の下に瘴気が湧いてたのよ!早く聖水!」

 フリーンも駆け寄りクラウス様を支えてくれる。

「聖水全部、村に置いて来ちゃったよ。」

「トワが作った聖水で充分よ、早く!」

「あっ!はい!」



 慌てて聖水を作って3人に飲ませるとすぐに顔色が戻ってきた。


「大丈夫ですか?クラウス様。」

「ありがとうございます、助かりました。油断していたようでお恥ずかしいです。でも皆さんは平気なんですね……」


 たしかに...

 私とフッラとフリーンはともかく、

 エリスはついさっきまで森の瘴気にやられて瀕死の状態だったのではないのだろうか?


「ねぇエリス...」

 本人に訪ねようとした時、

 突然エリスが森の奥に向かって走り出した。


「えっ、エリスどうしたの?どこ行くの?」

 呼び止めたが止まる様子はない。


 えー、今度はなにー?


「フッラ!お願い!

 フリーンはクラウス様たちと森の外で待っててー!」

「「わかった!」」


 ポフッ!と超大型犬のモフモフに戻ったフッラに私は跨りエリスを追い掛ける。

 すぐに追い付き並走状態になった。

「エリス、どうしたの?」

「動物たちの様子がおかしいんです!争ってる気配はするのに声が聞こえない……」

「声が聞こえない?よくわからないけど、このまま真っ直ぐ行けば良いのね?先に行くよ!」


 さすがにフッラに2人は乗れないのでエリスを追い越して森の奥に進むと動物や魔物が入り乱れて乱闘になってるのが見えてきた。力関係がめちゃくちゃに見える。


「フッラ、あれ、どういう状況?」

「わかるわけないよ、でもどうする?全部殺っちゃう?」

「いやいや。大ざっぱ過ぎてたぶんダメだと思うよ。」

 やっぱりフリーンも連れてくれば良かったか…


 よく観察してみると中央付近で瑠璃色(ラピスラズリ)の毛並みが美しいでっかい狼が一人で何かしている。


「あれはフェンリルだね、なんで殺さないんだろう?フェンリルならコイツらなんてまとめてかかって来られても相手にならないはずだよ。」

「あれがフェンリルなの?

 っていうことは、フェンリルに事情を聞けばいいってこと?私、フェンリルに食べられたりとかしない?」


 遠目に見てもフッラの倍の大きさはあるし、威嚇しているのか牙がすごい……


「フェンリルが人間食べるとか聞いたことないし、そもそもトワの方が本気出せば強いから大丈夫だよ。」

 本気出せば...ね。


「あのー!フェンリルさん!お取り込み中すみません。なにかお手伝い出来ることありますかー?」


 フッラから下りて乱闘の外側から叫ぶと、チラリとこちらに目を向けたかと思うとフワッと魔物たちの上を飛び越えて私たちの目の前に着地した。

「「おぉー」」

 さすがフェンリルである。


「この状態見てわからぬか!」

「「全然わかりません」」

「チッ!役立たずめが!なんでもいい!コイツらは我を忘れておる、鎮ろ!お前!できるだろう!?」


 え、私?...できますかね?

「とりあえずやるだけやってみますね…」

 鎮魂、という言葉が頭に浮かんだが、こういう時は出来るかどうか怪しいことをするより得意種目の組み合わせで対応した方が安全にちがいない。

 乱闘を包み込むように結界を張って...

 その中を浄化!みんな冷静になぁーれ!

 これでどうだ!

 結界の中に水色の光がキラキラと舞って獣や魔物がパタリと動きを止める。

 次の瞬間不思議そうに各々森の奥に散っていった。

 後にはかなりの数の死体が残っていたがそれも結界の中で浄化されて消えていく。


 ほっ……とりあえずなんとかなったな。

 と満足していると。

「なぜ結界なんて張ったんだ!未熟者が!」


 なんかフェンリルが怒ってらっしゃる...

「と、いいますと?」

「結界などで閉じ込めずに森全体にこの浄化魔法を放てば一度で全て解決したであろうに、まったく、つかえん!」

 ひどい言いようである。

「そういうこと先に言って貰えます?それにそんなことしたら私の魔力がなくなると思うんですけど?」

「バカを言うな、誰だか知らぬがお前もその犬も神力を持っているであろう!魔力切れなんてするわけなかろう。」


 そんなこと言われてもね。


「とりあえず、状況説明をお願いしても?」


「あ、あ、あの、フェンリル様、私の代わりにありがとうございました。」

 いつの間にか到着してまだ息を切らせたエリスが私とフェンリルの間に割って入ってきた。どうやらエリスは状況を理解しているようだ。


「エリス、悪いんだけど最初から全て説明してもらえる?」


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