23 上司に許可を
さらに一週間がたった。
さっそくクラウス、ルシウス、ローダーの前回と同じメンバー御一行が来店。
「やぁ、こんにちは。あなたが毎日は店に出ないのを知らずに昨日も来てしまいましたよ。」
おぅ...軽い嫌味を言われてしまった。
週末しかいないのを伝え忘れていたな。
「それは申し訳ございませんでした。二度も私を訪ねてくださるなんて、なにか御用でしょうか。」
とぼけてみる。
「トワさんもお人が悪いですね。私の相談役になってくださったではありませんか。」
とぼける作戦失敗。
「よろしければ奥でお茶でもいかがですか?」
「では是非カフェ・ラテを。」
「気に入ってくださったのですね。」
「はい、先日お土産に頂いたコーヒーを、ルシウスが淹れてくれたのですが、美味しくならなかったのですよ。えぐみのようなものを感じてしまって。」
ルシウス様は護衛騎士ではなかったのか。側仕え?的な方か。確かに護衛にしては愛想がいい。
にっこり笑ってルシウス様の方を見ると彼も人好きする笑顔でちょっと困った顔をしてみせた。
「コーヒーは淹れ方にコツがあるのですよ。よろしければ後ほどルシウス様にお教えしますね。」
ちなみに私は都度自分で豆をひいてネルで淹れる程度にはコーヒーを愛している。時間が無い時はインスタントのドリップを使う事もあるが全然味が違う。
それはさておき、
「それで?どのようなお話でしょう。」
クラウス様は角砂糖を2つ入れてカフェ・ラテを1口飲み、満足そうにカップを置くと
「実は先日フリーンさんに聞いたお話を元に、蒼牙の森の被害を受けたシエレという村に行きまして、管理人について聞いてみたのですよ。」
「クラウス様が直接出向かれたのですか。」
「はい、私が会ってみたいと思っただけですので。ですが村人は誰も話してくれませんでした。」
「話してくれない?単に知らないだけではありませんか?」
森からあまり出ないタイプならご近所さんだからと言って知らなくても不思議ではないだろうし、外と交流していてもわざわざ管理人だとは明かさずに付き合うかもしれない。
「いえ、言葉の端々や態度からむしろ村人全員が知っているのではないかと思いましたが、それはそれで厄介でしてね。」
「ああ、確かにそれなら無理ですね。もし全員が知るような存在で、それを皇族であるクラウス様に黙っているなら、村人にとって守る価値がある人物なのでしょう。諦めるしかないですね。」
ご近所さんみんなに守ってもらえるほど人望が厚いとは。どんな方なのだろう。
「いやいや、そんなに簡単に諦めないでくださいよ。」
「でも仕方ないのではありませんか?別の方向から探ってみられては?それとも全員不敬罪でしょっぴきますか?」
「トワさんはわかりやすい方ですねぇ。」
...クラウス様が案外気安い方なのでつい言ってしまったがこれでは私がしょっぴかれてしまう。
でもだってねぇ。私、関係ないし。
私はブラックコーヒーをすする。
「トワ!私が会いに行ってきますっ。」
突然フリーンがふんす!と鼻息荒く立ち上がった。
なんでよ...
「うーん。フッラとフリーンなら他の森に口を出してもいいんだろうけど、別にわざわざ行かなくても良くない?」
自分から面倒事に関わる必要もないだろうに。
「だって職務怠慢でしょう?事と次第によっては上司に報告します!」
上司は知ってますよきっと……神なんだから。
フリーンがこんな熱い子だとは思わなかった。むしろフッラより頭も切れるし気が利くし、理性的なシゴデキさんだと思っていたが、仕事熱心が故に許せない何かがあるのだろうか。
燃え上がる感情など元々持ち合わせていない私には面倒くさいだけだ。
「それは助かりますね。トワさんはご一緒していただけないのでしょうか。」
ほらね。こういう流れになる。
「私はフリーンとは少々立場が違いますので、他所様の森に口をはさむわけにはいかないのですよ。」
「クラウス様!少々お待ちいただけますか?トワも一緒に行って良いか、上司に許可をとってまいりますので!」
そういうとフリーンは
ペコリ、と頭を下げてピューンと部屋を出ていってしまった。
シルバに許可取りに行ったの?
全員で呆気にとられているとフリーンはすぐに部屋に戻ってきた。
「トワが他の森に関わっても問題ないそうです!」
フリーンがニコニコと嬉しそうにクラウス様に報告する。
なんという小さな親切......
どうせシルバも私と同じで適当に頷いただけに違いない。まったく!インチキ神様め。




