2 異世界への扉
異世界の神様に依頼されて森の管理人を引き受けたはいいが、何をしたらいいのだろう?
本来、慎重派なので出来る限り事前調査をした上で新しいことに臨みたい。
「ところで神様?前の管理人さんはなぜ辞めてしまったのですか?」
「ギクッ...」
あぁ、これダメなやつだ。
地球の職場でも離職率が高い職場にはハッキリとした理由がある。
主に人間関係と労働賃金が原因だ。
何が原因かわからないがろくな理由じゃないだろう。
「(異)世界一の森ならかなり広くて複雑なのではないかと思うのですが、私にはなんの知識もありませんよ?一人でどうにか出来るものではないと思うのですが?」
「うっ...」
「そもそも、はじめだけでも仕事を教えてくれる方はいるのでしょうか?」
「......」
地球ではもぅ少なくなってしまったが、人の手が入っていない原生林はあまり管理が必要ないと聞いたことがある。
そういう森なら私でもなんとかなるものなのだろうか?
私が管理することになる森はそのまま【世界樹の森】と呼ばれているらしい。
どうやら世界樹の森というのはあちらの世界(異世界)が出来た時の中心地らしく神の支配領域として人間は立ち入ることを許されず、人間の統治下になったことはないそうだ。だが年月が経ち管理が必要になったが神が直接地上の事象に手を出すことは許されないという掟はこの森にも準用され、苦肉の策で、シルヴァヌスが選んだ人間に、森の管理に必要な最低限の魔法を付与して管理させていた、と。
ん?神の眷属じゃなきゃダメって言わなかったっけ?人間でいいなら私じゃなくてもいいのでは?というか森の専門家でも連れていった方がよほど建設的ではないだろうか?
モジモジと私の様子を伺う神様を無視して思考を巡らせる...
でもまぁもぅ引き受けちゃったしなー。
わからない事が多過ぎるが、ま、仕事なんて始めはそんなもんか!と割り切ることにした!こちらでのスローライフの合間にちょっと引き受けたバイトにそこまで深入りする必要はないな。よし、考えてもわからないことを考えるのはやめよう。
「神様、私も魔法って使えますか?」
「もちろん!使えるよ!魔法が使えないと仕事にならないからね、最低限森の管理に必要な魔法は管理人に就任した時点で与えられる。」
なぜ神様の方が嬉しそうなんだろう。
「なるほど。最低限の魔法がデフォルトなら報酬の能力はオプションということで、何が必要か、森を見てから決めても良いですか?」
「うーん、まぁ仕方ないか。あの森を何とかしてくれるなら希望は叶えるよ!」
何とかする...?不穏な言葉な気がする。
でも魔法が使えると思うとワクワクしてにやけてしまう。
「それで、その森にはどうやって行くのでしょう?」
「ん?この建物の裏にある廟の横に木の扉があるのわかる?その扉を開けると向こうの森の管理小屋の前に出るよ?」
「え。」
その木の扉ならよく知っている。
寺の裏手に、昔この寺を建てた高僧の廟があるので私はいつも軽く掃除をしたり御供え物を置いてきたりするのだが、
古い廟の横に新しくはなさそうだがよく手入れされた小綺麗な木の扉があり、いつも違和感を感じていた。
蔵でもあるのか?くらいにしか思っていなかったが…
まさか異世界に繋がっていたとは。
「あんな所に堂々と扉があったら他の人も入って行っちゃうんじゃないですか?」
寺の関係者ならともかく、めったに来ないが観光客が全く来ないわけでもない。知らずに開けたらどうするのだろう。
「あの扉は神の眷属しか出入り出来ないから大丈夫だよ。普通の人間には見えてもいないね。」
......あぁ、そういう…アレね。
もぅ受け入れよう。順応性は高い方だ。
「分かりました!ではとりあえず今から見学に行かせて頂いてよろしいでしょうか?夕方までには帰ってきます!」
「向こうで案内が必要だろうから、ボクの眷属の子たちを案内に貸してあげるね。
いってらっしゃーい!」
不安はあるが善は急げだ、いざ!異世界の世界樹の森へ!
(駐車場が閉まる前に戻って来なきゃな)




