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世界樹の森、守ります。  作者: 杉本 雨
第2章 帝都編

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19/21

19 災厄の入口

 

「初めまして。私はクラウディウス・ノルディアと申します。この2人はルシウス・アーデントとローダー・ヴェイルです。」

 後ろの2人が小さく頷く。


「お初にお目にかかります。雪ノ花店主のトワと申します。このような所で充分なおもてなしも出来ず申し訳ございません。」

「いえ、こちらこそ突然押し掛けて申し訳ない。素敵なお店ですね。」


 見た目と違って柔らかい物言いだが…

 穏やかさを装っても底が知れない不気味さがある。全てを見透かされそうで苦手なタイプだ。


 はぁっ、めんどくさい。


 おかしい。地球と異世界両方でのスローライフはどうした?こういう人間同士の駆け引きがめんどくさくなって、田舎でフリーランスをしているというのに。慎重派の私も東京に置いてきたのだろうか。まぁ自業自得というか今となっては引き返せない...トホホ。


 木の扉がノックされフリーンがカフェ・ラテとケーキを持って入ってくる。


「これはカフェ・ラテというお茶ですね?」

「おや、ご存知でしたか?」

「えぇ。ヴァルン商会で知りましてね。こちらで販売されていると聞きました。帰りに色々見させて頂きますね。」

「はい、是非ご覧になってください。」

 これはお土産を用意しておいてもらおう。

 私はフリーンに目配せするとフリーンもにこりと微笑む。



 クラウディウスがコーヒーカップを持ち上げるのを確認してトワも1口飲む。


 仕方がない。仕事するか...

 カップを置き膝にのせた両手に力を入れて覚悟を決め顔を上げた。


「それで...賠償の件でしょうか?」


「...賠償?なんの事ですか?」


 え?私はチラッとクラウディウスの後ろの2人の様子を見るが、はて?と首を傾げて主をみている。


「あ、あの...大変失礼ですが帝国の方ですよね?」

「あぁ、すみません。申し遅れましたね。私はノルディア帝国現皇帝の弟に当たります。」

「それではやはり賠償の話でここにいらしたのではないのですか?

 1年ほど前にこの森からそちらの帝国に魔物が数体出て帝都に向かってしまったと聞いております。被害状況についてはこちらでは把握しておりませんが、その件でのお話では?」


 私がこの森に赴任する前の話なので完全に私の責任ではないが被害者に対してそんな事は言ってられまい。いざと言う時は上司(シルバ)に丸投げしようとは思っているが、今の立場上謝罪は私がする必要がある。


「あぁ!あれですか。確かにこの森から帝都に魔物が向かっているという知らせを受けて急遽騎士団を派遣しましたが、ヴォルグレイという狼系のさほど強くない魔物が数体彷徨っているだけでしたので簡単に討伐しましたよ。帝都民も騎士団も怪我1つしていません。むしろ世界樹の森の魔物の貴重な素材が手に入り商人が喜んでいました。確かに災厄の始まりと、恐怖する民もいましたがそれ以降この森からの被害は皆無です。

 ですが...そうですねぇ...」


 突然クラウディウスは何かを思い付いたようで背もたれに身体を預け脚を組んだ。

 一瞬の沈黙後、意地悪な微笑みを私に向け、


「そちらが賠償してくださると言うのなら、やはり賠償はして頂きましょう...」



 ごくり...


 ちょっと話の持っていき方間違えたかな。

 また私の自業自得な気がするが私は賢くないので賢い者を相手にすると簡単に主導権を握られてしまう。


「はぃ...賠償額をとりあえずお聞きします。」

「いえ、金は要りません。先程も申しましたが、実害は何も無く、貴重な素材を当時金に変えましたので騎士団の派遣費用すらそれで賄えました。ですので、災厄の引き金と一般の帝都民が少なからず恐怖心を持ったことに対する賠償をして頂こうかと。」


 笑ってる...

 こわいんですけど...



「と、言いますと?」

「今後は民が森の恐怖に脅かされないよう、私に協力して頂きたいのです。」

「それでしたら、私がこの森に赴任した半年ほど前に対応済みですので、今後はこの森から街に魔物が出ていくということはありませんよ。」

「ほぅ、そうなのですね。ですが、この森のことではありません。この国の民のために私の相談に乗って頂きたいのです。」

「うーん、ですが見ての通り私はただの平民ですので、クラウディウス殿下のお役に立つとは思えませんね。」

「あぁ、私のことはクラウスでいいですよ、皇子も成人していますし、皇位継承権なんてあってないようなものです。

 それにあなたこそただの平民ということはないでしょう。この森には人間は絶対近付けません。そんな森から出てきて店をだし私たちと交流をはじめた…ただのお美しい女性では説明がつきませんよ?」



「な、なるほど。それはどうも...

 ...ですが本当にお役に立てる自信はありませんからね。」


 また安請け合いをしてしまった感はあるが、迷惑を掛けたことは事実だしちょっと話を聞くくらいで許してくれると言うなら安いものだろう...と、思うことにする。





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