12 水の精霊探し
私たちはお昼ご飯を食べて休憩したら、西の山に水の精霊を探しに行くことにした。
西の山の方はまだ行ったことがないのでフッラに乗せてもらう。景色を見ながらひろやかな野を過ぎ、勾配のはげしい山道を走る。じじさまの言う通り、管理小屋の周辺よりもこちらの方が瘴気の被害が少ないような気がする。所々木が密集している所もあり、獣や魔物の姿も見掛けるが、不思議と襲って来る様子はなかった。
「襲ってこないものなのですね?」
フッラの背中でフリーンに話しかける。
「そりゃあ私たちはシルヴァヌス様の眷属ですし…トワさんに至っては膨大な魔力のオーラを放ってらっしゃいますので…襲って来るようなバカはまず居ないでしょうね…」
「私、魔力のオーラ放ってるんですか?...」
「そりゃもう、とんでもなく...」
は、恥ずかしい案件では...?
魔力のコントロールとかいうやつか...
最大値で今すぐ使えるよう神からもぎとったチートに完全に甘えていたな。どんなアニメでも序盤で主人公は魔法の練習をするのに私はなまじ今すぐ使えるようにまでしてもらったせいで大した研究も鍛錬もせずに使ってしまっていた。今更気が付いたのも恥ずかしいが仕事の合間に少しづつ研究していこう。
そんな反省をしていると山の尾根に出た。水場を探して尾根沿いに走ってもらうと少し先に細い渓流が谷に向かっているのが見えた。水が流れている所が残っていただけで少し感動する。
「あの渓流を辿れば川に出たりしないかしら?」
「いってみましょう。」
足場の悪い渓流沿いを岩から岩へと飛び越えながらしばらく進むと滝と呼んでいいのかわからないが水が落ちて小さな滝つぼを形成している所があった。その先は谷の河川へと繋がるのだろうが川と呼べそうな水流は見当たらない。
だが、この辺りはマイナスイオンのせいか空気が澄んでおいしく感じる。
フッラから降りささやかな滝の方に近づくと、ふよふよと水が輝いて漂っているように見える。
「トワさん、聖魔法を集中させてご自分を包んでみてください。」
フリーンが難しいことを言う。
四苦八苦して言われた通りにしてみる。
ふよふよと浮いていた水玉が人の形をとり始める。
精霊だったか...
少々弱いが声も聞こえ始めた。
「あなた、だぁれ?」
「何しに来たの?」
「あなたの魔力あったかくて気持ちいいね」
かなり集中しないと聞こえないくらいか弱い。
「私はトワよ。この森の管理人になったの。あなたたちは水の精霊さん?」
「そうだよ。ウンディーネ様がね、里に帰っちゃったからお水たくさん作れないの。」
よくわからない...
「ウンディーネ様?がいないとお水作れないの?」
「そうだよ。綺麗なお水たくさん作れるよ。」
「ウンディーネ様?はどうして里に帰っちゃったの?」
「あのね。じじさまの魔力少なくなって貰いに行けなくなっちゃったの。」
「どうやって貰いに行ってたの?」
「あのね、川がざぶーんってなるからぴゅーって行けたんだけどね、川なくなっちゃった。」
なるほど、多分だいたい理解した。
ならばこの手土産はたぶんドンピシャだろう。
「お土産持ってきたんだけど、これ食べられる?」
私は小さくて綺麗な金平糖を渡してみる。
「わぁ。じじさまの蜜だ!あまーい。」
「おいしいー。」
「ウンディーネ様にもあげていい?」
「もっと食べるー。」
私手作りの金平糖にさっきじじさまの樹液を私の魔力でコーティングした、精霊の為の特製金平糖は大盛況だ。
にやり...
「たくさん持ってきたのでウンディーネ様?にもあげてくれる?次はもっとおいしいのを作って来るから!」
間接的にじじさまの魔力を食べて精霊が元気になるのかはわからないが、なってくれると信じて今日は帰るとする。
それにしてもウンディーネ様とは誰だろう?水の精霊の女王様的な方だろうか......




