11 古竜のおみやげ
「ドライアドが!?」
「そうじゃ!全て消えてしまったと思っておったのだがな、嬉しい限りじゃな。」
非常に喜んでらっしゃるのはわかった。わかったが...私はドライアドがなんなのかよく知らない。ドライアドとじじさまの若返りはどう関係があるのだろう?
チラッとワンニャンを見るが困った顔をされただけで説明してくれそうもない。
「あのー、不勉強で大変申し訳ございませんが、ドライアドについてお教え願えませんか?」
「おぉ、トワは異世界の神の眷属じゃったな、異世界にドライアドは居なんだか。それはすまぬ。ドライアドはこの世界ではワタシにだけ宿る木の精霊のことじゃ。他の木にも精霊は宿るがドライアドは私にしか宿ることが出来ぬ。ワタシの力が減るにつれドライアドも数を減らし全て消えてしまったと思っておったのじゃよ。」
世界樹にしか住めない精霊とか居るの素敵過ぎる。でも最強だが最弱ってことか...じじさまが元気なら木の精霊の中で一番の力を持つのだろうが、他の木に宿る事が出来ない分、じじさまが弱れば他の木の精霊より弱くなるんだろう。
でも甦ったドライアドは1匹でしかもまだかなり弱く、じじさま以外の者とは意思疎通も出来ないそうだ。いつかおしゃべりできる日を楽しみにしよう。
「で?ドライアドについてはわかりましたが、じじさまが、えっと…若返った?のはどういった経緯で?」
「おぉ、そっちか!」
たぶんみんなそっちの方が知りたい...
「そっちに作ったトワの池の水だ。その水を飲んでワタシの奥深くで弱っていたドライアドの力が戻ったのだ。」
「なるほど。」
「そしてワタシの上だけ雨を降らせることが出来るようになったと言うわけじゃな。」
え?雨降らせられるの?復活したばかりで力の弱いドライアド1匹(1人?)で?
うーん?論理的に処理しようとすると頭の中の思考動線が絡まっていくばかりだ。
こんな時に便利な言葉を私は知っている。
『異世界クオリティ』
たいていこれで片付く...
「なるほど...要するにじじさまは水に困らなくなったと。」
「そうとも言いきれぬ。ここだけ僅かな雨が降っても大地を潤すことは出来ぬ。ドライアド1匹ではワタシの魔力も補充できず、水も魔力もこの森に送り込む程の余剰分ができる訳ではない。」
要するに焼け石に水かぁ。
「だがトワの池があればドライアドの力となる。」
「概ね理解しましたが、ここの他も少し様子が変わった気がするのですがそれは...?」
「おぉ、そっちは結界の浄化作用じゃな。この森に漂う瘴気を洗っておる。東の方はまだ瘴気が濃いがそのうち薄まるじゃろう。」
東というと管理小屋の裏手の方か...
森の中でもやはり場所によるのだなぁ。
そちらもなんとかしなければならないのか...終わりが見えないなぁ。さっき浮いた気持ちがあっという間にまた沈んだ。
ひとまず、池とじじさまの周りの土壌のメンテナンスを軽く済ませ、ランチをしに管理小屋に帰ることにする。
行きと同じようにワンニャンを伴い
『管理小屋まで転移』
浮遊感の後に目を開けた瞬間
「「「ぎゃーー!!」」」
思わず3人(1人と2匹)で叫び声を上げてしまった。
管理小屋が隠れるくらいの量の、魔物と思われる物の死体が山積みになっていた。
なんか既視感がある...
昔実家に居た猫が飼い主にお土産を持って帰ってくるアレだ。あの時はカエルをお土産に貰って、ビックリして叫んだ私を横目に母が冷静にカエルを庭に捨てていた。
今も、死体の山の奥で多分古竜がご機嫌でお座りしている...
「古竜様こんにちは。先日はご協力頂きありがとうございました。お陰で森が少し快方に向かっているようでございます。」
若干イラッとしているのだがおくびにも出さずに丁寧に頭を下げる。
「それで今日はどうされましたか?この魔物?たちは全て息絶えているようですが、何があったのでしょうか。」
「何を言ってるのだ!肉を採って来たぞ!唐揚げの肉だ!わざわざ西の山まで行ってうまい肉だけ狩ってきた!トワに料理だけでなく肉の調達までさせるのはいささか気が引けてな、せっかく目覚めたついでだ狩りをしておいた。今日はトワの魔力が強く感じたので持ってきてやったと言うわけだ!早く作ってくれ!」
頭が痛い...
「......あのぅ、えっと、ありがとうございます。ですが、まだこの管理小屋では料理が出来なくてですね。それにこれって解体しないと食べられませんよね...と、いうわけで今日は無理です諦めてください。でもお約束ですので予め作って来た物がございますので足りないでしょうがそれで我慢してください。」
地球の家で揚げてきた先週の3倍の唐揚げを魔物の死体の横に出して召し上がって頂いた。
悩みが増えてしまった...
古竜にはもぅ少し働いて貰いたかったのだが今日はなんとなくお願いするのはやめておこう。一旦おかえり頂いて、魔物の山は『回収』する。
午前中だけでどっと疲れたが、朝建てた管理小屋に新しく作ったダイニングセットを設置して3人分のサンドイッチと、ワンニャンにも古竜と同じ唐揚げを出してみた。
「ふふっ…こないだ唐揚げの臭い嗅いでたでしょう?食べられそうなら食べてみてください。」
普通のワンコにはしょっぱい味付けの唐揚げは推奨されないが彼らには問題なかろう。
「よろしいのですか?いい匂いがしていたので食べてみたかったのです!」
「トワ様?私たちも何か森の案内の他にお手伝い出来ることはありませんか?あまりお役にたっている気がしないのですが。」
おぉ、そんな心配をさせていたとは気が付かなかったな。
「そんなことありません!なんの目印もないこの森で迷わずに行動出来ているのはお二人のお陰ですし、そもそもシルヴァヌス様には森の案内として貸して頂いてます。それ以外の仕事をさせるわけにはいきませんよ。」
「そういうことでしたか。でしたら問題ありません。シルヴァヌス様には、森の復興の為にトワ様のお役に立つように…と申しつかっておりますので。」
「あら。そうだったんですね?だったらお言葉に甘えてお願いしてもいいですか...
それから、私の事はトワで構いませんよ?私はお二人の上司でもありませんし、手伝って頂いてる立場ですので。」
「では、トワさん、で。」




