出産の備えとヒイロに対する印象
タイトル変更しました。 出産の備えとヒイロに対するまわりの印象→出産の備えとヒイロに対する印象
――ヒイロ視点――
春の風が土の匂いを運んできた。
雪解け水が小川を満たし、新芽がほころいでいる。
集落にはウグイスの声が響き、タンポポの黄色い花が咲き乱れていた。
数日前、ははのお腹がますます大きくなるのを見て、自分は悄然と考えていた。
助産後のははの冷えや痛みを和らげるには何ができるだろう――。
現代の記憶にあったのは「温めた石を患部に当てると血行が良くなり、痛みが和らぐ」という方法だった。
夜、囲炉裏のそばで、手に抱えた小石を見せながら、自分は切り出した。
ヒイロ「はは、この小石を火で温めて、布に包んでお腹や脚に当ててもいい?」
ははは眉をひそめた。
「ただの小石じゃないの? どうしてそれがいいのかしら?」
自分は息を吸い、ぎこちなく言葉を紡いだ。
ヒイロ「火にくべると、じんわり熱くなる。やわらかい布で包めば、やけどしないで温かさだけ伝わる。血の巡りがよくなると、ははの痛みが和らぐと思うんだ」
はははしばらく考えてから、静かにうなずいた。
「わかったわ。やけどしないように、熱さを調節してね」
ちちは村長にも話に行き、すぐに許可をもらってきてくれた。
「ヒイロの案なら信頼できる。やってみよう」
出産当日。
自分はあにと交代で、小石を炉で温め、布に包んで父と母に渡した。
熱がじんわり伝わるたびに、ははの喘ぎ声が和らぎ、呼吸が落ち着いていく。
やがて、あにの拍手がぱちぱちと響いた。
「女の子だよ」
ちちの声が、ほのかに震えていた。
ははは涙をぬぐい、あにもにこにこと妹を見つめる。
自分はそっと妹の頬に手を添え、胸の奥で誓った。
「これから、この子を大切に守っていく」と。
---
はは
「ヨリヒロ、ありがとう。大変な夜だったけど、ヒイロのおかげで乗り切れたわ」
あに
「子どものアイデアなのに、村長も『若い知恵は宝だ』って褒めてくれたよ」
村長
「ヒイロのおかげで、この集落にもまた笑顔が戻った。研ぎ澄まされた知識の使い方だ」
ちち
「家族が増えた喜びを、これからもみんなで分かち合おう」
はは
「これで安心して、また暖かな日々を過ごせるわね」
春の陽射しの中、ヒイロの小さな一歩が家族と集落を優しく包み込んでいた。