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集落の祭り

主人公は実践ができない年と思って書いているのでまだまだ活かせていないため長いと思われます。

訂正   香りを保つには、火の温度を調整するか、別の植物を混ぜる必要がある。自分は思った。

母に聞いてみた。

「このかわ……ながく、つかえる?」ミヨは少し考えてから答えた。

「すぐに湿気るから、何度も干さないとね。火にくべると早いけど、すぐ燃えちゃうの。」なるほど――やっぱり、改善の余地はある。

アケビの皮を干して虫除けにもなる――母はそう言った。

でも、煙がすぐに消える。香りも長くは続かない。

それなら、もっと持続する方法を探したい。自分は、


削除します。

     ――ヒイロ(3歳)視点――

        

 


 隣の集落との交易から、もう五ヶ月が経った。

 季節は巡り、夏が過ぎ、葉の色が少しずつ秋に染まり始めている。

 今日は、集落で収穫祭が行われるらしい。

 父と母の会話から、それを知った。


 


ヨリヒロ「今年はよく採れたな。みんなで祭りをするってさ。」


ミヨ「ヒイロも、初めてだね。きっと楽しいよ。」


 


 “祭り”という言葉に、自分は胸が高鳴った。

 この世界に来てから、初めての祭り。

 どんなものなのか、まだ想像もつかない。

 でも、楽しみにしている自分がいた。


 


 祭りが始まるまでの間、自分は少し前の夏を思い出していた。

 集落の人たちと一緒に、山へ、川へ、畑へ――収穫に出かけた日々。


 


 母と兄と一緒に、森の奥で木の実を拾った。

 アケビ、クルミ、ヤマブドウ。

 兄ソウが、木の枝を指さして言った。


ソウ「これ、アケビだよ。中が甘いんだ」


そして母ミヨがそれを採り、見せながら言った。

ミヨ「皮は苦いけど、干して使うこともあるのよ。編んで、袋にしたり、火にくべて香りを出したりね。虫よけにもなるのよ。」


アケビのさやは干して袋に編み、火にかざして煙を立て、虫除けに使うのがここでも定番だった。


ミヨ「けれど、煙がすぐ消えちゃうのよ」


確かに、香りはある。乾燥させれば煙も出る。

でも、自分の記憶の中には、もっと強い植物があった。

馬酔木。アセビ。

山地に生える常緑の低木で、葉に毒性がある。

煮出した液は、虫を遠ざけるだけでなく、腐敗も防ぐ。

自分は、集落の周辺に似た葉を見かけたことがある。

もしかしたら、あれがそうかもしれない。アケビだけでも虫除けにはなる。



この世界の人たちは、経験で知っている。

自分は、知識で知っている。

その二つが合わされば、もっと良い方法が生まれる。それは、ただ便利にするためじゃない。

長く使えること。安全であること。

そして、誰かの手間を減らすこと。自分にできることは、まだ小さい。

でも、こういう小さな改善が、いつか誰かの役に立つ。



 そして別の日には、川辺で魚を獲った。

 集落の釣り専門の家族と一緒に、網を使って小魚をすくった。

 その網は、植物の繊維で編まれていて、目が粗かった。


ヒイロ「これ……こわれない?」


釣りの父「たまに切れるけど、編み直せばいいさ。水草の方が丈夫なこともある。」


 自分は、網の編み方をじっと見ていた。

 もっと細かく編めば、小魚も逃げない。

 繊維の交差角度を変えれば、強度も上がる。

 頭の中で、改良案が浮かんでいた。



 そんなふうに、夏の間、自分はたくさんの“使えるもの”を見て、聞いて、考えていた。

 この世界の道具は、素朴だけど、理にかなっている。

 そして、改善の余地がある。

 それが、自分にできることだと思った。


 


 そして今日。

 夏が終わり、秋が始まるこの日。

 集落の中央に人が集まり始めた。

 火が焚かれ、食べ物が並べられ、笑い声が広がる。


 


 石が、地面に規則的に並んでいた。

 円を描くように、大小の石が配置されている。

 自分は、それを不思議に思って、父に聞いた。


 


ヒイロ「これ……なんで、ならべてるの?」


ヨリヒロ「これは、太陽の道を示してるんだ。

 この石の向きは、夏至と冬至の太陽の沈む方向に合わせてある。

 昔から、ここで祈るんだよ。」


 


ミヨ「この石の輪の中で、みんなで感謝するの。

 今年も、無事に過ごせたこと。食べ物が採れたこと。

 それを、空に向かって伝えるの。」


 


 自分は、石の並びを見つめた。

 太陽の道。祈りの場。

 それは、ただの石じゃなかった。

 この世界の人たちが、自然と向き合い、敬意を持って生きている証だった。


 


 祈りが始まった。

 誰かが、土偶を手にして空を仰いだ。

 火の揺らぎに合わせて、太鼓のような音が響く。

 言葉ではない“祈り”が、空に昇っていく。


 


 自分は、静かに手を合わせた。

 この世界に来て、初めての祭り。

 それは、ただの行事じゃなかった。

 生きることへの感謝。

 自然との約束。

 そして、集落の絆を確かめる時間だった。


 


 自分は思った。

 この世界で、自分ができることは、まだ小さい。

 でも、見て、聞いて、考えて、少しずつ形にしていけば――

 この祭りのように、誰かの力になれるかもしれない。

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