大地の響き
構想が決まらない
自分がなぜこんなにも焦っているのか考えてから3日後、曇り空の午後、ため池のほとりで水位を確かめていたヒイロ(8歳)は、背後で地面がごうんと大きく揺れるのを感じた。竹の柱がきしみ、石を積んだ堤にも小さな亀裂が走る。
「大地が怒ったな!」
トオル村長の声が響く。振り返ると、村人たちは声を掛け合いながら手分けして行動を始めていた。
ヨリナリがヒイロの隣で叫んだ。
「ミヨ、ソウ! 広場へ急げ!」
母ミヨは幼い妹を抱え、兄ソウとともにヒイロを引っ張る。二人は石壁が崩れないよう支えながら、広場へ向かって駆け出した。
広場に着くと、長老の一人がすでに縄を手渡している。
長老のカナエが言った。
「まずは家屋の周囲を囲め。倒れた家財はここにまとめるのじゃ」
子どもたちが震えながら走り寄る。ヒイロは石の堤を埋めようと、近くの土を掘り返し始めた。
ヒイロ
「この土と石なら、僕が教えた方法で隙間を塞げるはずです!」
ヨリナリは、ヒイロの手をそっと握りしめた。
ヨリナリ
「ありがとう、ヒイロ。でも、今はこの縄で家を固定するんだ。先祖が何度も揺れを経験して得た知恵だよ」
トオル村長も頷く。
トオル
「焦るな。まずは人を助けることが先決だ。後で堤の修復を手伝ってくれ」
村人たちは呼吸を合わせ、倒木をかつぎ、倒れた土壁を積み直す。声を掛け合い、重い石を滑らせるように動かす手際は、いずれも身体に刻まれた動きだった。
ヒイロは周囲を見渡した。土と石と縄。手と手が重なるたび、村を支えてきた“生きる”とは何かが、言葉なく伝わってくる。
夕暮れ前、揺れは止み、村人たちは互いの無事を確かめ合った。ヒイロは泥まみれの手を見つめ、小さく目を伏せる。
彼が持つ技術知識だけでは解けないものが、この大地の上に確かにあった。




