四季をかける稲作の挑戦
――ヒイロ(7歳)視点――
潮声村から帰ってきた2日後、父ヨリナリと兄と、ひと段落した集落の青年のアサトさんが苗の手伝いに来てくれた。そして、僕達は家の裏手にある水を敷いたものを見ていた。
• 種もみの選別
・形のよい粒を水に一晩浸し、沈んだものを良品とする
• 種もみの発芽処理
・温かい水に浸し、芽が1~2mm出るまで催芽
• 苗床の整備
・裏手の平地に、細かく耕した土と堆肥を混ぜて平らに築く
・浅い水を引いて湿らせ、均一な水位を保つ
• 種まき
・発芽した種もみを均等に撒き、薄く土をかぶせる
・毎日手で軽く押さえ、水かけ管理を行う
種を蒔いた一部を見て、「「「おお?!」」」と驚きの声を上げたそこには、薄緑の芽が土を割って顔を出していたからだ。緑影村で誰も見たことのない景色に胸が躍った。
ヨリナリ父「こりゃ楽しみだなー」
と嬉しさを感じる声だったのを横に聞いてこれからのことに笑みを浮かべる。
初夏(5月–6月):除草と土寄せ
それから1ヶ月以上が過ぎ、黒い土の上に稲の苗の青い列が伸びはじめる。兄とアサトさんは朝もやの中、手で雑草を丁寧に引き抜き、僕は株元に土を寄せて茎を支える。
「土寄せは倒れを防ぐだけじゃない。根の張りを助けるんだ」
僕は知っている知識から彼らに声をかけた。そして、僕は一列ずつ進んでいく。葉の間を風が抜けると、初夏の匂いが胸にひろがった。
盛夏(7月中旬):潮声村での貝殻集めと追肥
苗の茎が伸びて分げつが進む頃、僕は肥料を求めて潮声村へ立ち寄った。浜辺に打ち寄せられた白い貝殻を、トオルさんに許しを得て抱えきれないほど拾い集める、担いで帰ると、苗は緑の海を揺らしていた。
兄とアサトさんが株間に貝殻粉を薄くまき、土ごと軽く混ぜ込む。貝殻のカルシウムで茎葉が青々と艶を帯び、僕は胸を張った。
晩夏(8月下旬):穂立ちと中干し
穂先が見えはじめると、僕たちは一度畝の水を切った。根に空気を送り、茎を強く育てる中干しだ。乾いた土に足跡を残しながら、再び畝を軽くならし、水気を与えない日々を数日間続けた。再度小雨が降った朝、は顔を上げ、穂が黄金を帯びはじめた。
秋(9月上旬):刈り取りと乾燥
石刃を研いだ鎌で、一束ずつ茎を刈り取る。畝脇の竿掛けに並べ、三日間、日の光と風に晒す。時折振る風が、穂をさらさらに揺らした。
秋(9月中旬):脱穀ともみすり
乾いた束を木棒で叩き、穂籾を落とす。籾を石臼に入れ、すり棒で軽く回して殻を取るする。
秋(9月下旬):湯とり法での炊飯
1. 土鍋にを入れ、たっぷりの水でかき混ぜる
2. 濁った水をすばやく捨て、再び水を注ぐ
3. 火にかけ、煮立ったら弱火で五分煮る
4. 火を止め、蓋をして十分蒸らす
煮上がった米は、ぷちぷちとした食感がある。香りは控えめだが、咀嚼するほどに米の素朴な旨みと満足感が広がる。
• 兄「噛み応えがすごい。これ一杯で腹がもつな」
• アサト「味付けなしでもいける。保存食にも向くね」
• ミヨ(母)「甘みは弱いけど、滋養がありそう」
• 村長「これなら食糧の安定につながる。来年は面積を増やそう」
冬(11月–翌年2月):道具の手入れと種もみ保存
土鍋や石鎌、木棒、石臼を清掃・修繕し、種もみを選別して通気の良い袋で保管する。
緑影村に新たな食糧作物として根づく稲――四季を追いかけるたび、村に少しずつ、確かな豊かさが積み重なっていく。




