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未来のささやき

――ヒイロ(7歳)視点――


――回想――

リノに案内されて浜辺を歩いていたとき、僕は網を手繰る漁師のカズオさんに声をかけた。

「こんにちは。夜はどうやって方角を確かめるんですか?」

カズオさんは微笑みながら、見上げた空を指さした。

「北には大きく青白く輝く星があってな、俺たちは‘夜の灯台’と呼んでいる。南東には小さく瞬く星の集まりがある。あれを目印にするんだ。あの灯台が見えなくなると、遠く出るのは危険だ」

潮風に髪が揺れる中、僕は思った。

(この時代の人たちは、五感と先人の知恵で生きているんだな。僕も漁や航海の役に立てる知恵を考えたい)


――現在――

潮声村の広場では、緑影村から打製石器や鹿肉の燻製、骨編みの袋、毛皮のマントが並ぶ。潮声村からは貝飾りや黒曜小刃、海藻で編んだ袋、干しワカメが交換品として手渡され、人々は笑顔で手に取っている。


交易が一段落したころ、ヤマトがひょうひょうと口を開いた。

「リノをヒイロに嫁がせたいくらいだ」


場が一瞬静まり返り、僕は頬を赤らめながら視線をそらす。


父ヨリナリはくすりと笑い、僕の肩をぽんとたたく。

「まだ七歳だからな? でも、大人になったら考えてやるよ」


緑影村の村長も豪快に笑い、冗談を重ねる。

「若い知恵を結ぶのも悪くない。リノにも聞いてみろ」


リノは俯いたまま口元を緩め、髪をそっといじる。

(本当に…? ぼく、自信を持って答えられるかな)


西の空が茜色から紺へと移りゆき、別れの時間が告げられる。

「また緑影村で会おう」


僕たちは手を振り合いながら潮声村の出口へ歩き出す。


丘の影からひとりの若い漁師が、その後ろ姿をじっと見つめていた。

「すごいな…子どもがこんなにたくさんの知恵を持っている。今度困ったときは、あのヒイロに頼んでみよう」


波音が砂に刻む足跡のように、二つの村の未来を静かにつないでいた。

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