プロローグ
「今週はっと、えっーと…250ページね。掲載順下がってんなー」
彼の名前は星野奎。ホシノケイだ。
身長は172センチ。高くも低くもなく稀に女性に負けたりする身長だ。彼はその度にどんな劣等感を味わったのだろうか。
歳は16でありその一生を語るには16年の月日を要する。
ケイは学校ではみんなを引っ張るリーダーシップがあるというわけではなくそもそも行っていない。いじめられたとかそういうわけではないのだが「今日めんどいな…」という誰しもが思うことを思い。大多数の人がそこから嫌でも仕方なく動き出すがケイにはそれが段々と出来なくなっていっただけだ。
「めんどいな」「眠たいな」「もういいや」
これらの三段階を踏んでケイは不登校児となっていったのだ。
そんなことはさておきケイは今週一の日課であり楽しみである少年誌の立ち読みだ。
「チッ。今週ここで終わんのかよそんなことしてるから掲載順どんどん下がるんだよ。」
ケイは難癖をつけ終わるとそそくさと持っていた少年誌を棚に戻して即席麺コーナーに向かう。
「ん〜昨日はとんこつ食ったし今日は醤油かな。」
家に帰ればご飯はある。ケイが不登校といえど母親はケイのためにご飯を作って今家で待っているのだ。しかし反抗期真っ只中でありそれに加えて不登校であることの申し訳なさからケイが母親と最後に会話したのはもう何ヶ月も前だ。母親が作ったご飯は食べないし何を言っても無視する。
今日もこんなくだらない意地のせいで出来立てのご飯が食べられなくなる予定なのでケイは食料を調達している。
親と会話しないのになんでお金があるの?そう思った人もいるだろう。真相はケイが何も言わなくても電子決済アプリに毎日1000円父親が入金してくれているのでケイはこの生活が続けられているのだ。
その後も悩んだ結果ケイの500円ランチは醤油味のカップラーメンにしゃけのおにぎりだ。朝ご飯に500円使ってしまっているのでここでは500円しか使えない。昼は親がいないので家にあるものを適当に買い漁っている。
ケイがレジに商品を置くとすぐに店員が来た。
慣れた手つきでバーコードを読み取ると画面に出た数字を読む。
「450円になりまーす」
ケイは黙ってバーコードを差し出した。数ヶ月前なら「バーコードで」なんて言っていたが今はそれすらもめんどくさいという最低な理由で言わなくなっている。
ケイはレジ袋はつけない。おつりを有事の際にに貯めているからだ。塵も積もれば山となるというようにケイが数ヶ月貯め続けたおつりはもう少しで1万に化けようとしている。
ケイは商品を手で持って店を出た。
「は?」
店を出たはずだった。だがケイの視界に広がるのはよくアニメで見る中世風の街並みだった。
先程まで手に持っていた商品は消えていた。
行き交う人々は見るからな人ではない者も混ざっており犬のような頭をした者や二足歩行をしているワニまでいる。身に纏っているのはTシャツやトレーナーではなくローブや民族衣装だ。
ケイはいつも服を買う時は出来るだけ浮かないような無難なトレーナーやジャージを買っていた。今来ているの黒に謎のデザインが入ったジャージも浮かないはずだった。
しかし今ケイは大衆に奇異の目で見られている。
それもそのはず今ケイが着ているジャージはこの街のどこを探して取り扱う店はないだろう。なんならこの世界を探してもないかもしれない。
ケイは自分の頭がおかしくなったのだと思い頬をつねったり叩いたりするが景色は変わらない。
「これ…これってもしかして、異世界転移ってやつぅぅぅっ???」