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【第6話】実力と戦略

 今日は第1演習場でパーティーでの戦い方を学ぶ訓練を行うようだ。

 全員が揃ったことを確認してダロス先生が話し始めた。


「よし、全員揃ったようだな。今日、お前さんには実戦を模してパーティーでの戦い方というものをとりあえず実感してもらおうと思う」

「おやおや、僕の芸術とも言える魔法の見せ時かな?」


 パーティーメンバーの魔術師、ローメルが意気揚々と指揮棒ほどの杖を頭上に振るい上げ、よくわからないポーズをとっている。


「あー、そう、だな……。うむ、詳しく説明しよう」


 ダロス先生はやや困惑しているようだ。ダロス先生の反応ももっともだ、こんなタイプは剣士クラスにいなかった。

 自己紹介の時から感じてたが……ガストンみたいに嫌なやつって感じじゃないけど、かなり変なやつだ。


「この訓練では訓練用のモンスターを模した木造の標的を使って、各自の戦闘スタイルの確認、それを踏まえてのパーティーとしての立ち回りの模索を行う。つまり今後の戦術の試行錯誤ってとこだな」


 俺は純剣士型だから間違いなくスウェロと並んで最前線だろう。他のメンバーの装備などを見る限り、かなり標準的な戦術をとることになりそうだ。


「では早速、各自の戦闘スタイルの自己紹介をしてもらおうか。もちろん実演もやってもらう。アレン、スウェロ、メティス、ローメル、レイラの順でいくぞ。アレン、やっていいぞ」


 もうこの順番が固定化されているのだろうか。毎回一番最初だ。

 少し緊張しつつ、模擬剣を片手に標的の前に立つ。俺の、剣士としての俺らしさを良くも悪くも最大限、隠さずに……伝えなくては。


「俺の剣士としてのスタイルは、純剣士。でも魔力がほとんどないから身体強化魔法は使えない。だけどッ!」


 俺の力を証明すべく標的に向かって、勢いよく模擬剣で右上から左下へ振りかぶる。模擬剣を叩きつけられた標的から木特有のやや高い音が響く。

 でも、まだ、こんなものじゃない。続けて左から右へ振り抜き、そのまま踏ん張る。勢いに腕が持っていかれそうになるのを堪えて、剣先を真っすぐ突き出す。風を切る音、接触部がへこんだ標的、剣先が潰れた模擬剣、証明できたはずだ。力を。


「これだけ、動ける」


 みんなから感嘆の声が漏れた。どうやら認めてもらえたようだ。王選を目指すみんなの剣として。

 ……視界の端の方でダロス先生が満足そうに頷いていた。



「じゃあ、次はスウェロ。お前さんは重装だからなぁ。動く標的も用意できるが……せっかくだ、ワシの攻撃を防いでみんか?」

「いいんですか。でも加減はしてくださいよ」

「もちろんだ。模擬戦とかではないからな」


 どうやらスウェロの防御の実演にダロス先生が協力するようだ。スウェロの実力を疑うわけじゃないけど、ダロス先生は相当強い。加減もするらしいけど……大丈夫なんだろうか。


「さて、加減……加減か。これでいいだろう」


 そう言ってダロス先生が手に持ったのは、俺が使った模擬剣と同じ型の模擬剣。確かに普段ダロス先生が使う、大ぶりな剣よりは幾分かマシだろう。

 更に手加減としてか、利き手じゃない左手だけで模擬剣を構えている。


「さあ、スウェロ、行くぞ」


 言い終わると同時にダロス先生が既にスウェロの目前にいた。その事実を認識する頃には模擬剣が高く振り上げられ、一撃。

 スウェロの盾とダロス先生の模擬剣が重く鈍い音を演習場に響かせた。それを皮切りに同じような音が続き、空気すらも震わせ始めた。

 数十秒続いたそれは、スウェロの模擬剣がダロス先生の首元に迫る事で鳴り止んだ。


「知ってはいたが、やりおるな。スウェロ」

「ありがとうございます。ですが……加減というのは?」

「よく言いよるわ。まだ余裕のくせして」


 安定した防御、的確な反撃、スウェロの強さに驚きと喜びがある。よく一緒に基礎トレーニングはしてたけど、重装としてのスウェロを見たのは初めてだ。流石だぜ、スウェロ。



「では次、メティス」

「はい」


 淡白に返事を済ませ、メティスは弓を持って標的の前に立った。慣れた手つきで矢をつがえ、放つ。矢は正確にモンスターを模した標的の眉間に刺さった。続けて矢筒から矢を取り出し、同じように放つこと2回。

 3本の矢によって標的の眉間に三角形が出来ていた。


「これで、いいかしら」


 誰かの返答を待つことなく、メティスは元々座っていたところに腰を下ろした。反応を待たずとも十分実力を示した、という事を自覚しているようだった。



「さーてさて。次は僕だね」


 ダロス先生の言葉を待つことなく、ローメルが標的の前に出てきた。


「さーあ、見逃すなよ! ライトニング・ファイアボール!!」


 ローメルが魔法を唱えると杖の先から、標的に対して真っすぐ、握りこぶし大ほどの火の玉が飛んでいき、同時に雷撃が火の玉を中心として渦を巻くように追従する。

 標的に直撃し、燃え上がった。


「どうだい、僕の魔法は。かっこよくて凄いだろう?」


 正直なところ、2種類以上の魔法を同時に使えるのは凄い。出来る魔術師はそう多くないと学んだくらいだ。だが……ファイアボールとライトニングには特段の相乗効果はない。一体、何の意味が……?


「ローメル、質問なんだが……ファイアボールとライトニングを組み合わせた理由聞いていいかな」

「アレン、そんなの決まっているだろう。かっこいいからだ」

「なる……ほど……」


 かっこいい、か……。理解できる部分はあるが、どこか不安にさせられる返答だ。



「では最後にレイラだが、聖職者は実演が難しいな……」


 聖職者、彼らは神から授けられた2種の魔法、聖魔法と治癒魔法が使える。どちらも授けられた、決まった形の魔法故に、初級、中級、上級である程度、威力や効果が固定されているらしい。

 それに怪我人がいなければ治癒魔法の使いようもない。どうするのだろうか。


「うーむ。おお、そうだ」


 ダロス先生が良い事を思い付いた、とでも言いたげな声を出したと思ったら、腰に下げた小型のナイフで自分の手のひらを勢いよく切りつけた。


「わっ、わっわ」

「すまんすまん。説明すればよかったな。治癒魔法で治してくれんか」

「は、はい」


 レイラが治癒魔法を使うと、ダロス先生の手の傷が光に包まれ、光が収まる頃には何事もなかったかのようになっていた。

 これが治癒魔法、初めて見たが、まるで怪我した部分だけ時を戻したかのようだ。


 その後、標的を使いつつパーティーとしての戦術を確立させた。結局のところ、最も標準的と言っても過言ではない、剣士と重装を前衛として、レンジャー、魔術師、聖職者を後衛とする戦術が採用された。


「よし、午後からはギルドへ行って冒険者仮登録と、王都内クエストでもやってもらうかな。一旦、解散としよう」

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