【短編1】アレンとスウェロの露店探索
王都を探索し終え、酒場で晩飯をすました帰り道。
「それにしても今日は暑いな」
「そうだな。ここ数日で一番暑い気がするな」
行商人たちの露店が目についた。
「お、昼にはなかった店があるじゃん。見てみようぜ」
「ああ、行ってみよう。何かいい店があるかもな」
露店の並ぶ広場には昼以上の人々の熱気があった。恐らく仕事を終えた人々や、クエスト帰りの冒険者たちだろう。
「ほんと、王都って栄えてるよな。普通の露店なのに、故郷の祭の日みたいだ」
「俺も幼いころ色んな街に行ったことがあるが、ここまでの規模は初めてだ」
様々な露店があるが、香辛料と肉の焼ける匂いに惹かれてしまう。晩飯を食べたばかりだというのに。
「なあ……スウェロ。あの串焼き食べないか」
「いいな。ここからでもわかる、いい匂いだ」
代金を支払い、露店の店主から串焼きを受け取る。
歩きながら、肉汁と焼かれる時にかけられたソースで艶めく、串に刺さっている肉を頬張った。瞬間、焼き立ての肉の熱さ、肉の旨み、甘辛いソースが口内に広がる。ソースと肉汁の調和が堪らない。
「……うまい。うますぎる」
思わず、言葉が漏れてしまう。晩飯はしっかり食べたはずなのに、これならいくらでも食べれそうだと感じる。
スウェロの方を見ると丁寧に、それでいて黙々と食べ進めていた。
自分の串を食べることに集中する。
ひと口ごとに体温が上がっていく、複数ある焼き物の露店の熱、人の熱気、そしてこの陽気……気付けば額に汗が滲んでいた。
串焼きと自分だけの世界が終わった。どうやらスウェロは少し早く食べ終えたようで露店で何か商品を見ていた。
「スウェロ、何かいいものはあったか?」
「んー、結構興味深いものはあるな。ただ日用品なんかは大通りの店の方がよさそうだ」
「何か違うのか?」
「大通りの店と違って露店は個人でやってる。だから、小回りが利く。冒険者の一時的な需要に応えやすい。逆に大通りの店なんかは、日用品とかの安定的な需要のあるものを大量に仕入れて安く売ってる。」
「へー、やっぱ詳しいな」
「これでも商人の子だからな」
スウェロは少し得意げそうにしていた。
広場の端、テーブルや屋根のある店とは違い、床に布を広げて露店をやっている行商人の中に見慣れぬ種族がいた。好奇心で話しかけようとしたところ、こっちの目線に気付いた彼から話しかけられた――