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【第2話】入学式②

 学園へ足を踏み入れた後、案内に沿って歩いて行くと受付が見えてきた。そこには、疲れた表情を浮かべた真面目そうなエルフ族の男が立っていた。


「君たちは新入生だね?」

「はい!お……僕はアレンで、コイツはスウェロです」

「僕はエラン、魔術クラスの教師だ。早速だが本人確認をさせてもらうよ」

「本人確認、ですか?」

「新入生になりすまして諜報活動を行おうとする者がいるんだ。当学園は我が国の最先端を行くと言っても過言ではないからね!」


 エランと名乗った教師は演説するかのように熱心に話してくる。


「……おっと、話が逸れてしまったね。本人確認の件だけど、この石に手を置いて手に魔力を集中させてくれないかい?あ、魔力は流さなくていいからね」

「わかりました」


 腰ほどの高さの柱のような石に手を乗せ、言われたようにすると石が淡く光りだした。


「よし、もう手を離していいよ」

「え、もういいんですか」

「うん、石がが今みたいに光れば問題ないよ」

「すげぇ……魔法ってこんな事も出来んだ……」


 続いてスウェロも手を乗せて、問題なく光ったようだ。


「うんうん。二人とも問題ないようだね。えーっと、君たちの制服はこれだね」

「ありがとうございます!これが、学園の制服……!」

「中に入って右手側に更衣室があるから入学式までに着替えて奥の講堂に入っておいてね。その後は中にいる先生が指示してくれるから」

「わかりました!行こうぜスウェロ!」


 更衣室で制服に袖を通すと入学の実感が改めて湧いてきて、思わず笑顔になってしまう。すぐに入学式の事を思い出し、気を引き締めてスウェロと一緒に講堂に入ると教師らしき人に話しかけられた。


「新入生はあっちの席ね。座る順の指定はないけど、前から詰めてね」

「わかりました」


 てっきり名前順で座るものだと思っていたが、スウェロと隣に座ることができた。新入生は50人ほど、つまりもうすでに半分程度来ているようだ。入学式が始まるまでまだ時間があるからか、生徒たちはざわついている。


「なあ、スウェロ。あの魔道具すごかったな。あんなちょっとした事で本人かわかるなんて」

「ああ、すごいとは思ったが変わった魔法だったな」


 受付で使われていた魔法の話なんかをしているうちに、開式の鐘の音が聞こえてきた。次第に講堂が静かになっていく。


 式が厳かに始まった。姿は見えないが、声からして司会はエラン先生のようだ。


 式典に参加するのは人生で初めてで、今までにないほど緊張していたが、生徒側は話を聞くだけで良いし、雰囲気に慣れてきたからか、気が抜けてきている感じがする。そんな時、エラン先生の力の籠った声が聞こえてきた。


「オーストン陛下から激励のお言葉です。皆さん、心して聞くように」


 白髪が多くを占める黒髪、顔には苦労によって刻まれたであろう深いシワ、一見すると威厳こそあるが、ただの年老いた王だろう。しかし、所作から感じる体幹の強さ、マントや服で気付きにくいが、がっしりとした体格とかなりの筋肉量、間違いなく剣士として強いと本能的に理解する。


「諸君。冒険は好きか?余は好きだ。知らぬものを知り、見た事のないものを見て、やった事のない事をやる。これ程に心が沸き立つ事はあるまい。そう思うからこそ冒険者には、他の憂いなく冒険に集中してほしいと思っておる。少なくとも諸君らが一人前の冒険者になるまで、全力でサポートしよう。余は心から諸君らの旅路が楽しいものである事を願っている。応援しているぞ、若き冒険者よ」


 王の言葉で生徒たちの冒険への熱がより強く燃えたことを拍手の勢いが物語っていた。

 熱をそのままに、新入生代表挨拶のアナウンスが聞こえてきた。


「新入生代表挨拶。剣士『ガストン・トキシリア』、前へ」


 見覚えのある男が講演台についた。


「おい、アレン。あいつ正門の……。剣士クラスの首席だったのか。しかも家名があるって事は貴族だな」

「首席、か。いつか追いついて……いや、追い抜いてやる」

「やる気だな。俺も、もっと強くならねば……」


 入学式は10分も経たずに終わったような気がしたが、1時間を超えていた。

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