【第18話】師匠の背を追って①
昨晩は悪夢のような激痛だった。おかげでやや寝不足の身体で昨日の訓練場に向かう。寝不足ではあるが、身体自体に疲労は残っていない。それになんだか少し筋肉が増えたような……。ここまで効果があるとは。
特訓のために手早く準備を済ませ、昨日と同じ王国軍の訓練場へと向かった。
「おはよう、アレン君」
「ラハル副団長! おはようございます!」
「朝から元気だね」
「特製ポーションのおかげですよ!」
「そうか、製作者に伝えておくよ」
ラハル副団長も随分と嬉しそうだ。近しい方が作っているのだろうか。
「そろそろ始めようか、まずは基礎トレーニングだけど、軽くでいいよ。身体を慣らす程度でね」
いつもより軽めに基礎トレーニングを行った。身体は温まってきたが、どうにも物足りない。
「アレン君、どうにも物足りないって顔だね」
「そうですね……。後、アレンでいいですよ」
「わかったよ、アレン。それと……ここから物足るようにしてあげるよ」
そう言ってラハル副団長は模擬剣を2本手に取り、片方を渡してきた。
「ラハル副団長、今日はお手柔らかにお願いします……」
「ははは、当然今日は斬撃を飛ばさないようにはするよ。それと、オレのこともラハルでいいよ。堅苦しいからさ」
「それは、流石に……。そうだ! ラハル師匠はどうですか」
「師匠か、ふむ。まあ、それならいいか」
「じゃあ、そういうことでお願いします! ラハル師匠!」
「よし、やろうか。好きに打ってきていいよ」
ラハル師匠は左手に模擬剣を持って言う。最初の手合わせの時と同じだ。
昨日、認められたといえ、所詮軽い本気の一撃を何とか防いだだけで、1発当てたわけでもないし、攻撃を防いですらもらえなかったほどだ。当然のことではあるが、どうにも悔しさがある。必ず模擬剣を右手で持たせてみせる。
「行きます!」
掛け声を合図として、間合いを詰め斬りかかる。今回もあっさり避けられてしまった。
「前も思ってたんだがアレン、キミその速い斬撃は長所だが、力任せで雑だ。それに……その一撃に全てを乗せすぎている。どこからどこへ斬るか丸わかりだ」
「うっ……」
的確で痛いところを突かれた。そう、事実として、俺の剣は勢い任せなだけだ。なまじそれが通用し続けていたから改善しようともしなかったのである。
だが、今手合わせしているのは最強の剣士、この程度の速さでは通用しない。現にこの分析と指摘は俺の攻撃を回避しつつ、行っているのだ。
「まあ、オレが模擬戦までにちゃんとした戦い方を教えるから安心しな、よっと」
遂にラハル師匠が剣で防いだ。凄まじい力だ、そのまま弾き飛ばされてしまいそう、だッッッ!!!
何が起きたのかわからなかった。後ろに吹っ飛んだ上に、腹部が痛い、蹴り飛ばされたのだ。
「なッ……け、蹴り……?」
「意外か? 王国軍だから清く、正しく、美しい、そんな礼節に則った戦いをすると? 甘い、オレはキミを王国軍として鍛えるわけではない。泥臭く、ただ相手を殺すために戦う冒険者の剣士として鍛えるのだ。頭に入れておくんだ」
「わ、わかりました!!」
ラハル師匠の雰囲気が確実に変わった。勘違いしていたのだ。今までは王国軍副団長として戦っていたのだ。それが今、純粋な剣士としての戦いに切り替わったのである。




