【第15話】師匠②
「うおおおおおおおおおおお!!!」
初撃、いつものように勢いよく模擬剣を抜く勢いで斬りかかる。
「おっと」
持ち手の逆から斬りかかったというのに、男は斬撃に難なく模擬剣を沿わせ、上へ逸らされる。
……ゴブリンの下卑た笑みが脳裏に浮かんだ。あの時と同じ、であるならばッ!!
「ふんッ!!!」
あの時と同じように、あの時討ち取ったように、無理矢理下に斬り下ろす。
「なッ!!」
振り下ろされる模擬剣に気付き、男が驚愕の表情を露わにするも、男の模擬剣はもう既に下ろされている。防ぎようは、ない。
刹那、男の左半身がブレて見えた。
「今の、避けれんのか……」
「あっはっは、流石に驚いたけど。避けるくらい簡単だ」
当たったと思った瞬間、男は目で追えない速度で右足を軸にして、左半身を後ろに捻って避けたのだ。
断じて俺の剣速が遅かったわけじゃあない。無理矢理斬り下ろしているとは言え、全身の筋肉を全力を使っているのだ。かなりの速度な上、当たるまでの距離もほとんどなかったはずだ。
「おいおい、今のでもう終わりか」
男が少し楽し気に挑発してくる。衝撃を受ける暇は与えてくれないようだ。
「まだまだ!!」
何とかして模擬剣を男の体に当てようと斬りつける、斬りつける、斬りつける、斬りつける。
……全て、避けられる。防ぎさえ、されない。人混みで人を避けて歩くように、日常動作と大差ないとでもいうように、息一つ上がっていない。悔しい、すごく。
「……さて、今でちょうど1分だ。そろそろ、オレの番だ」
結局、俺の模擬剣は届くとこのないまま、1分経ってしまった。俺の自信を真正面から打ち砕かれた気がする。
男は、模擬剣を構えなおした。相変わらず左手に持ったままだが。
「まずは軽く、行くぞ」
どういうわけか、男はそれなりに離れたまま、模擬剣を頭上に掲げ真っ直ぐ振り下ろす。
その瞬間に感じる。嫌な予感。一刻も早く避けなければいけないと本能が告げる。気付けば体が回避行動をとっていた。
「うわああああッ!!」
右側へ飛びのく。それと同時に、俺の立っていた場所に斬撃が飛んできた。
自分でも何を言っているかわからないが、だが確かに目に見える斬撃が土埃を巻き上げ飛んできたのだ。あれに当たっていたらどうなっていただろうか、あまり考えたくはない。
「へぇ、避けれるんだ。いいね、悪くない」
男は満足そうに1人で頷きながら、改めて模擬剣をしっかりと持ち直し、構えなおした。
今の発言は見込みがあると判断してもらえたのではないだろうか。しかし、まだ男の戦意を感じる。
「なあ、アレン君。少し本気出すけどいいかな」
「お、お手柔らかに……」
確認をとってくれはしたものの、拒否権がある気がしなかった。完全にやる気になっていると感じる。
「じゃあ、少しだけ本気で行くよ。どこまでやれるか、見せてくれ」




