隠された魔法陣
この保管庫ほこりっぽいから苦手なんだよなぁ。
魔法によって厳重に閉ざされた扉を開く。
「unlock」
魔法陣を展開して発動すれば案外楽に解除できる。
ほとんどの人が魔法を使えない国となっては魔法でのロックは最強ともいえる。
どんな攻撃も通用しないから、例えばこの施設を破壊されても余裕でこの保管庫は耐えれるだろう。
「さーて、異世界転移の魔法書探してみるか」
うわー、やっぱりほこりすごい。
全部の魔法書にほこり被ってるし。
「あれ?あんな扉あったっけ」
大量の魔導書の先には一つの大きな扉があった。
ちょっと前に来たときはなかったと思うけど…。
見逃してたのかな。
「あの扉の先に異世界転移の魔導書あるかもしれないよね」
大量の魔導書を整理整頓の生活魔法で片付けながら扉に向かって進む。
それにしても魔導書多すぎだし、保管庫にしては整理されてないよなぁ。
保管庫まだまだあるし、今度片づけ藤波に手伝ってもらうか。
「よし、ついた」
10分ほどかけてたどり着いた扉には封印の魔法が何重にもかけられていた。
「これは…古代の封印魔法かな。しかもかなり高度な魔法。かなり強い力を持った魔法使いが封印した可能性が高いな」
これだけ厳重だと普通の解除魔法じゃ無理だろうな。
さて、どうしたものか。
「先輩、ここにいたんですか!探したんですよ…って何ですかこの扉⁉」
「おぉ、ちょうどいいタイミングに来たね。藤波」
藤波と一緒に解除魔法を使えばこの扉の封印が解けるかもしれない。
「この扉、かなり高度な魔法で封印されてますね」
「うん。解除するには高度な解除魔法でやるしかないんだよね」
私たちの魔法が通用するといいんだけど。
「これだけの封印魔法が使われてるんですから、きっと中身は危険なものだと思いますよ。解除はやめておきましょう」
「大丈夫だって。もし中身が危険でも、この保管庫がある限り外に被害は出ないよ」
保管庫の保護魔法は内側にももちろんかけられている。
だから、中で何が起ころうと問題はない。
「さぁ、やるよ藤波!これまでの成果を試してみようじゃない」
「はぁ、わかりましたよ…」
普通の解除魔法が使えないとしたら上級魔法を使うのが一番良いよね。
藤波もきっと同じことを考えるだろう。
この国で得られる基本魔法は大体英語であることが多い。
だから魔法を覚えるの意外に簡単なんだよね。
でも、高度な魔法はほとんど英語じゃないから異世界から入ってきたんじゃないかと思ってる。
「「アンリラベル」」
ガコンッという大きな音がして扉がゆっくりと開き始めた。
「よし!成功ね!」
「まさか本当に封印解除が成功するなんて…」
扉の先にはきちんと整頓されたたくさんの本が並んでいた。
「まさか、これ全部異世界についての古代書物と魔法書?」
「そうみたいですね。まさか、本当にあるとは思いませんでした」
どれも見たことのない本ばかり…。
こんなものがあったなんて全然知らなかった。
「先輩、あれって魔法陣じゃないですか?」
「え?あ、ほんとだ」
藤波が指さした先には巨大な魔法陣が床に描かれていた。
見たこともない魔法で形成されてるな。
ただ、転移魔法が付与されているのはわかる。まさか、異世界転移用…?
「この転移魔法かなり劣化していますね…。使うのはかなり危険かと」
確かにこの転移魔法は劣化により不十分な仕上がりだ。
でも、ある程度修復してみたら使えるかもしれない。
「もしこの転移魔法が失敗してもこの場所を覚えてたら戻ってこれるんだから、大丈夫でしょ」
「俺はやめといたほうがいいと思いますけど…」
「とりあえず、魔法陣修復だけやってみようよ。魔法の研究にもなるだろうし」
転移魔法の重要な部分は残ってるみたいだけど、転移を支える魔法が不十分だ。
このまま使えば、転移途中に知らない場所に飛ばされるなんてことが起きる可能性がある。
「わかりました、俺は研究室から転移魔法についての資料回収してきます」
「ありがとう」
さて、修復部分はわかったから一度やってみるか。
「repair」
修復魔法をかけた瞬間、魔法陣が光り出した。
「うそ、なんで⁉発動してないはずなのに」
まさか、これ転移魔法じゃない⁉転移魔法陣はダミーってことか!
……待ってこの魔法陣。
「これ、死者を転生させる魔法陣だ」
この魔法は使用を禁じられたものだ。
死者出ない人がこの魔法陣に入れば、魔法陣の修正機能で死ぬ…!
この魔法陣を壊せれば…!
「ダメだ!間に合わない…!」
一瞬にして光に包まれ、私は意識を失った。